2014年12月21日
2009年に会社を設立。メインは「Chuga-pon ちゅがぽん」というカンボジア人向けフリーペーパーを2ヶ月に1回発刊しています。日本人が作るカンボジア人向けフリーペーパーとしては初で、発行部数も2万部と断トツです。カンボジア人は、海外のファッションや芸能など最先端の話題に敏感。日本の雑誌「Q to JAPON」と提携し、日本での生活やファッション、サブカルチャーなど日本のコンテンツをカンボジア人向けに発信しております。
中国や韓国は直接投資額が大きいので、日本のカンボジアに対するポテンシャルは下がっていますが、ODAを含めカンボジアに貢献しているので、日本に対する興味はあります。しかし、日本や日本人に対するイメージがしにくいため、カンボジア人の若い方を中心に情報発信していくことが大切です。「Chuga-pon ちゅがぽん」を読んだ方が、日本に興味を持っていただき、その後日本に行ってみたい、日本食を食べてみたいという流れを作る一助になればと思っています。
「Chuga-pon ちゅがぽん」のターゲットは幅広いのですが、学生が中心の若い世代がメインで、コンテンツもそれに合わせたものになっています。日系だとカンボジア人に物やサービスを訴求したい、カンボジア人マーケットにリサーチしたいという企業がメインクライアントになっています。効果測定は難しい媒体ですが、出し続けることでブランドを認知させ、長いスパンで考え、物語を作るような提案を基本的にしています。カンボジアでは間違った情報も氾濫しているので、ビジネスは簡単ではありません。広告というカテゴリーを通じて、正しく伝えるようにしております。
次に力を入れているのは、コンサルティング業務になります。私はカンボジア在住が8年と長いので、FS調査としてアテンドを最初にさせていただき、法人設立までの間は顧問契約をし、カンボジアの最新情報などを提供しています。カンボジアだけじゃなく、ASEAN全体をみて、カンボジアも1つの選択肢としてみている方が多いのですが、独資で法人を設立できる点や参入障壁が低いこともあり、結果的にカンボジアに決める方が多いように思います。カンボジアは仏教国であり親日国ですから、人が優しいのも決め手のひとつではないでしょうか。
進出企業希望からは「何をやったら儲かりますか?」という質問が多いです。「それが分かっていたら自分がやります」と冗談半分で回答しています(笑)。日本でも同様でしょうが簡単なビジネスなど無いですし、すぐに儲かるビジネスなど無いと言いたいのが本音です。カンボジア人が何を欲しているかをきちんと理解しないとダメ。日本のスタンダード、成功事例をやれば儲かると思っている方が多いのですが、カンボジア人のルールやアイデンティティ、趣向が理解できていないのに、日本の価値観や常識を当てはめようとしても絶対に成功はできません。ましてや社長が日本にいて、カンボジアへは(内心)行きたくない社員を派遣するようなことをしていたら絶対成功なんてしないでしょう。だからいつも「社長自らカンボジアに在住してビジネスをする気がありますか?」と聞いています。
かなり極論的な言い方ですが、そういう確固たる覚悟のようなものがあれば、何をやっても成功すると思います。もちろん人によって成功の定義は違いますが、これから成長していく可能性を多分に秘めたマーケットが、カンボジアにはあることは明白なわけですから。要は日本の良いもの、流行っているものと、カンボジア人の趣向をミックスして、新しい価値をカンボジア人と一緒に見つけないとダメ。カンボジア人と同じ目線でやらないと、誰もついてきません。ベトナムやタイなどでビジネスを成功されている飲食店は、カンボジアでも日本人のルールや習慣を押し付けるようなことはしません。それがひとつの成功事例にもなっています。まずは、こちらのルールを理解することが大切なのです。
私は日本語学校の立ち上げメンバーだったのですが、当時は日系企業が少なく、300人くらいの日本語を学んだ生徒のうち、就職できたのは20~30名くらいでした。その時、学ぶ場所を提供できても、学んだ語学を活かせる環境を提供できないと意味がないと思ったんです。そして働く場所を提供したいという思いから、会社を設立。300人のうちの20人の学生と共に起業しました。何をしようか考えて、伊藤忠商事時代の営業経験を活かして、ホットペッパーをベンチマークしたんです。
ホットペッペーの営業は非常に徹底していて、ひとりの営業マンがひとつのお店を全て一貫して担当します。営業してクライアントになったお店を取材して、撮影して、記事を寄稿編集して、販売戦略の立案をして、さらには配布まで行なう。企業人としてのやるべきことが全て詰まっていると思ったのです。就業経験のないカンボジア人を短時間で効率よく企業人に育てるには持ってこいの職種だと思ったわけです。
私はカンボジアの課題は大きくは2つあると思っていて、ひとつは教育、もうひとつは産業がないということです。ですから私は学ぶ機会と働く機会をカンボジアで提供したい!それを信念にしています。教育に関しては、先に申し上げた学校で優秀な日本語人材を今も育てています。そして育てた学生達が今度は自らが自転し、仕事をしてお金を稼ぎ、自己実現していくというプラスのサイクルを作り上げたいのです。カンボジア人は真面目で素直で優秀な民族だと私は思います。今までは単に良い船頭さんがいなかっただけです。そうした彼らにきっかけを提供して、彼らからも我々が学び、新しい価値を創造し、事業を通してカンボジア経済に一石を投じたい!そんな風に思っております。(後編へ続く)(取材日/2015年7月)