(前編からの続き)
――不動産選びで留意すべきことでは、どんなことがありますか。
小林 良銑(以下、小林) 日系企業がオフィスを選ぶうえで注意すべきことは、セキュリティが一番かもしれませんが、カンボジアにおいてセキュリティと言っても限度があるので、何をもって良しするかは、業種・業態次第だと思います。また、賃貸物件の場合、更新料の機会に賃料が上がることが多いので、契約年数について留意すべきでしょう。
――進出を検討されているお客様の反応はいかがでしょうか。
小林 カンボジア=安いという先入観を持たれている方が多いので、例えば1ベットルームで1000ドル以上という今の状況を聞くと大概の方は驚かれます。しかし、カンボジアは人気のある居住エリアという点でベトナムやタイのそれと比較すれば高い方ですから、そう思われても仕方ないでしょう。
ですので、私たちは、賃貸物件をご紹介する前に、そのような先入観を変えて頂くことが必要になりますし、来ていただいたお客様に実態相場を理解して頂いたとしても、役職や赴任地域によって上限家賃が設定されているなど、会社によっては海外規定を設けているところも少なからずありますので、その規定の策定時期が古ければ見直しのご提案もします。
――人気のある住宅エリアはどのあたりでしょうか。
小林 そうですね。最近人気のあるエリアはロシアンマーケットの辺りです。新しい物件も散見しますが、見た目は古くても内装をリノベーションしている安価な物件もあります。比較的安いことから欧米人を中心に外国人からの注目が集まっているエリアです。日本人の方も住んでらっしゃる方は増えています。このような居住エリアは生活のしやすさという点が重要ですから、家賃の安さもさることながら、美味しいレストランやショップがあるなどの存在は大きいです。
――カンボジアでの不動産ビジネスについて教えてください。
小林 不動産の賃貸物件を仲介した際に、オーナーから頂く仲介手数料は、オーナーによってまちまちです。なかには、賃貸期間が数か月など極端に短い場合は仲介手数料を支払ってくれないオーナーもいます。私たちは手数料を頂くことを生業にしていますので、オーナーとのやり取りの中でスタッフには交渉力が身に付いてきたと思います。
――仲介手数料を支払ってくれないオーナーもいるんですね。。そんな時はどうされるのでしょうか。
小林 このような交渉をオーナーとお客様にはオープンで行いますので、私たちの1回分の仲介収入が低いことに驚かれるお客様もいます。私たちは基本的にお客様から仲介手数料を頂くことはしませんが、交渉してもオーナーが十分な仲介手数料を私たちに支払ってくれない場合に限り、お客様にその分をご負担いただいています。
――カンボジアでビジネスをされる際に大事にされていることはなんでしょうか。
小林 今後は、自社のサービスアパートメントができますが、成功の鍵はやはりオペレーション、つまり人だと思っています。オープンに向けて、仲介事業をやりながらカンボジアスタッフも教育しています。これはとても時間がかかりますから。大切なのは、報告・連絡・相談、そして結果と検証です。また、今年の目標は、昨年と同様のものである、お客様のために動くこと、に加えて、数字で会話すること、としています。今まで物件調査が終わった後に、何件調査して、そのうち何件のオーナーと会えたのか、など数字を使う癖を付させたいと思っています。
スタッフは名刺に顔写真を載せています。お客様から見られているという意識を持ってもらうためです。いつどこでお客様が見ているかわからないと意識するようになれば、普段から言動に気を付けるようになるでしょう。一方で、日本語が話せるスタッフの場合、高い給料に釣られて他社に引き抜かれるリスクがありますが、もしそのようなことがあれば、私たちの魅力が欠けていたと腹をくくっています。私はスタッフに対して、能力に見合わない給料を支払う気は毛頭ありません。成果に対して評価する仕組みでスタッフには応えていきたいと思っています。
――最後に将来の不動産事情について、どのようなご見解でしょうか。
小林 現在はバスが3路線ほど動いていますが、確実に車は増え、渋滞はひどくなるでしょうから、駐車場の必要性は高まっていくと思います。これは、住居でもオフィスでも同じく言えることです。今のところ、駐車場の有る無しが、物件の競争力に大きな影響を与えるほどではありませんが、今後はインフラの整備をしなければならないでしょう。そのような中で、現在、コンドミニアムの建設ラッシュになっていて、15000戸くらい供給される見込みですから、確実に住居は供給過多ですから、賃料は下がるでしょうし、物件価格にも影響を与えると予想しています。(取材日/2015年3月)