2018年3月7日
(前回の続き)
――生活科や総合的な学習について教えてください。
三浦 信宏(以下、三浦) 生活科や総合的な学習は、目標は決まっていますが、内容は自分達で創りあげていく学習です。子ども達の力が十分に発揮できる楽しい学習です。昨年度は各学年で次のようなことを実践しました。
小学部1・2年生は、ジオパーク探検で自然を観察、見付けてきたものをもとに、自分達の楽しい森をつくり、音楽やゲームなどで表現しました。子ども祭りでも発表しました。また、コンビ幼稚園との交流では、ゲームや、日本の昔遊びを教えたりしました。
3・4年生は、カンボジア理解を深めるために、遊びや食、伝統工芸経験など、様々な活動をしました。3年生は、ココナッツオイル作りをし、その報告をフリーペーパー風にまとめました。作成する際、実際にフリーペーパーの編集をしていらっしゃる方に指導していただきました。本づくりごっこではなく、本物体験ができました。4年生は、焼き物を焼いたり、カンボジアのおやつを作ったりしました。綿を育て、採れたものを糸にし、タオルを作る活動もしました。
5年生は、「プロジェクトJSPP流カンボジア丼をつくろう」と題して、野菜作りを通して食についての学習をしました。校内に畑を作るところから始まり、野菜を育て、収穫した野菜を天丼にし、最後はトマトの校内販売まで行いました。オーナーや校長に畑を作る許可を得たり、全校児童生徒に畑を作る許可を得るためにアンケートをお願いしたり、実際にコンクリートとタイルをはがし畑作りをしたりと、様々な活動を通して、自分達の力でプロジェクトFを成功させることができました。この間、他の学年も畑作りの手伝いをしてくれたり、外部の方の野菜作り指導を受けたりと、野菜だけでなく、多くの収穫を得ることができました。子どもの感想に「総合の学習を通して、学年の絆が深まりました」といううれしい感想もありました。
6年生は、「カンボジア友好大使になろう」ということで、修学旅行の計画を立てたり、自分達でガイドできるように調べしたりしました。また、社会科の歴史の学習と関連して、カンボジアの歴史を調べました。この学習をきっかけに、卒業という節目に「自分史」をまとめる学習をし、自分の成長を再確認する学習を行いました。
中学部は、カンボジアのごみ問題について考えました。いろいろと調べる中で、カンボジア人のゴミに対する意識を知りたいと願い、交流校のフンセンムロイ中学校にお願いし、500人近くのデータをいただくことができました。自分達にできることとして、技術科の学習と関連させてゴミ箱を製作し、校内に配置しました。また、ゴミ箱製作の関連として、去年の盆踊り大会に生徒たちがゴミの分別を呼びかけるとともにゴミの収集を行いました。他に学校のよさを紹介するビデオ製作を行い、全校に発表しました。
有り難いことに、本校はカンボジア唯一の日本人学校です。そのため、カンボジアでお仕事をされている日本人の方や日本から訪問された方々など、多くの方が子ども達のためにご尽力くださいました。日本の学校ではなかなかできない事がたくさんでき、子ども達は、生活科や総合の学習を通して大きく成長することできました。
――前回インタビューさせていただいた際に、お昼に給食を取り入れたいとおっしゃっていましたが、現在は実施されていますか。
三浦 様々な課題があり、まだ実施できていません。現在は毎週金曜日に、日本人が経営されているパン屋さんから、希望者がパンのお弁当を利用しています。余談ですが、このパン屋さんでは、小学校1年生が生活科の学習においてパン作りを体験させていただきました。保護者の方も任意で参加していただきました。給食はまだ実施できていませんが、日本の学校のように、温かいもの、同じものを全校でということで、PTAの皆さんが、年に2回「カレーランチ」を実施してくれています。当日、子ども達は、白いご飯だけ持ってきて、お昼にはPTAの方が家庭科室で作ってくれたカレーを皆でいただきます。1回目は日本のカレー、2回目はクメールのカレーをつくってくれ、子ども達には大好評で、できたカレーは毎回完食です。
――インターナショナルスクールと日本語学校のどちらに行かせるか考える方も多いと思いますが、決め手となるのはどのような点でしょうか。
三浦 インターナショナルスクールか、日本人学校かは、将来の進路を考えて決めるべきだと思います。将来日本に戻り、日本の中学・高校に通うのであれば、入試は当然日本語です。日本語で問題を考えて問題を解くという思考能力を身に付けるには、日本人学校の教育が効果的です。将来、カンボジアであるいは海外でということであれば、インターに行った方が英語力は身に付きます。せっかく海外で過ごす貴重な経験だからインターに通わせたい気持ちは分かりますが、将来のことを考えて選択してほしいと思います。
日本語を母語として確立するには、日本人学校が向いていることに間違いありません。
また、日本人学校では、文部科学省の学習指導要領に則ってカリキュラムを構成しています。挨拶や掃除、道徳や集団行動など日本と同等の学習、海外ということで、ある意味それ以上の学習ができます。これも余談ですが、将来同窓生・同級生が日本全国、あるいは海外に拡がります。私が前に勤めた中国深セン日本人学校の卒業生も、全国規模で同窓会を行っています。保護者の同窓会や職員の同窓会もあります。このように広いコミュニティーが形成できるのも日本人学校のよさの一つです。
――三浦校長先生自身が大事にしていることは何ですか。
三浦 明日もまた来たい楽しく充実した学校、そして一人一人が成長できる学校にしていきたいと願っています。今、職員研修で子ども達の主体性を育てる実践研究をしています。教えることだけが教育ではなく、子ども達が自分達の力で学びとって成長していく。子どもに主体性を育てるには、教師は「しゃべらない・教えない・まとめない」ということも大切だと思います。子ども達が自ら考え、悩み、考えをぶつけ合い、共に成長し合うことが必要だと思います。そういうことができれば、目指す教育方針は、「ワクワクドキドキするプノンペン知的遊園地」が創れると考えています。