――今後の外資規制の動きについてお聞かせ下さい
村上 暢昭(以下、村上) 外資規制の動きについては、ASEAN経済共同体によって解放されたときに、どのように政府が利権を守るかという側面が大きいと思います。カンボジアはASEANの中で鎖国状態になるかもしれません。物も人も行き来が激しくなる中で、自国産業を守らなければなりません。非関税の中でどうやって稼ぐかというような状態です。外国からの投資は率先はするが、外資を少しいじめるというか、規制を強化する流れになるのではないでしょうか。
現に、税金の話であれば居住要件が課されることになりました。実際は非居住者であるにも関わらず、税務署への申請がすぐに通るからと言って、居住証明を無理やり出して、税務署登録するのは止めた方が良いです。取扱いに対する税務署の見解も正式に出ていないのですが、そのような登録をしてしまうと、もしかすると将来は、全世帯所得で課税させられる、つまり日本側で稼いだお金も全て対象にしますと、そうなる恐れもあります。実は大きなリスクがあると思います。
税務に関しては会計事務所さんに相談してもよいですし、税法ということで我々のような法律事務所にも相談いただいても結構です。しかし、我々法律家としては、先ほど申しましたようなリスクを冒すのは止めた方が良いというアドバイスになります。
――JBリーガルからMAR&JBLに変わりましたが何故か教えて頂けますか?
村上 MAR&JBLは、去年の11月にカンボジアの弁護士事務として登録し、12月からサービスの提供を始めています。今までとは特に変わらないのですが、法律が絡む業務をしていますので、これまでのようなコンサルティング会社というスタンスですと、どのようなリスクがあるかわからないからです。51%はカンボジア人に持っていかれますが、我々を取り巻く環境から判断した結果です。
コンサルティング会社としての法律業務とは何か、という話にもなるのですが、長期的にビジネスをする上では、どこの国の実態を見ても同じように、形だけは整えておいた方が良いという判断です。カンボジアの弁護士協会はコンサルティング会社に対して、かなり厳しい態度で臨んでいますから、恐らく、今後のこの業界の規制は厳しくなっていくことは間違いないでしょう。
MARという弁護士は4年前からパートナーとして弊社に入ってやってきた弁護士なので、やっていることは前とあまり変わらない状況です。
現在は、スタッフ全員で13人です。カンボジアに関しては弁護士の村上が中心となっていて、私は管理業務を行うとともに、ラオスとタイの事務所に注力しています。タイは既に法律事務所で、ラオスはコンサルティング会社というスタンスです。今年4月にシンガポールにホールディング会社を設立する計画です。
法律事務所ということになると、広告を掲載することはできません。コンサルティング会社としてであれば問題はありませんが、弁護士事務所もあるので、それと同一だろうと見なされる可能性が出ています。広告か広告でないかという境界線は曖昧なので、私もわかりません。というのは、法律事務所が広告を掲載できないという規則はどこにも明文化されたものはありません。弁護士協会規則にも、そこまで踏み込んだ記載はされていません。
ですが、弁護士協会は外国人弁護士に出ていってほしいというスタンスなのです。外国人弁護士を使って法律業界を高めていこうというビジョンはなく、取りあえず稼げるうちに邪魔な奴を除外していこう、下からでも上からでももらっておこう、というスタンスなので、そういう意味ではカンボジアの将来もなかなか厳しいのかなという印象です。カンボジア人弁護士が権力を使い、先にどう儲けるかと考える点は、タイやラオスの弁護士たちとは全然違います。
――アンチコラプション(汚職防止)ユニットについてお聞かせ下さい
村上 我々のような外国人が汚職を減らすということを調子にのってやっていると殺されます。然るべき人に動いてもらうことです。なぜなら、汚職は彼らにとっては飯の種ですから。下働きは我々がしますが。結局、日系企業の製造業が生き残ってもらうためには、電気代を下げるか、賄賂を下げるか、通関費を下げるかしかないです。固定費を下げるしかありません。製造業が育たないとカンボジアの先が無いです。そこにはチャレンジしていきたいと思います。アンチコラプションユニットから、汚職に関する情報提供の協力などについてMOUの締結を要請する動きがあります。MOUを締結するメリットは、汚職に関して通報することができます。しかし通報をしても、何かをしてくれるかどうかはわかりません。日本企業が生き残ってカンボジアが発展するためには、汚職を減らすしかないです。この国は儲からないので、カンボジアを一生懸命変えていくしかないのかなと思います。製造業は少しずつ増えていますが、止まるでしょうね。(取材日2015年3月)