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業界別インタビュー

2017年9月15日

カンボジアは現在、制度化やその徹底に向けての努力が加速しているという状況です [法務・税務・会計] 村上暢昭

法務・税務・会計

JBLメコン JBL Mekong
日本法弁護士: 村上暢昭 Murakami Nobuaki
カンボジア弁護士協会から正規認可を受けた法律事務所であり、日本人が常駐する日系法務コンサルティング事務所のJBLメコン。今回は代表である村上暢昭代表に海外投資家や経営者には欠かせないカンボジアの制度変更について伺った。(取材日:2016年9月)
新システム導入するも、管理体制に問題がある

――最近、海外投資家にとって重要なトピックは何でしょうか

村上暢昭(以下、村上) ここ1~2年の省庁の電子登録化の動きです。2016年、商業省と労働職業訓練省(以下、労働省)が電子登録システムを導入しました。しかし、特に商業省のシステムが複雑かつ未成熟という印象があります。一部の企業には、かなり支障が出ているようです。

 電子登録化には、直接省庁職員と顔を合わせないで済むことによる賄賂廃絶の効果や、各手続きの進行がスムーズになったりなど、本来はいくつかのメリットが考えられます。しかし、システムの利用が開始されたばかりであるため、担当職員がシステムを十分に理解できているとはいい難い状態です。そのような状況下で、商業省には、カンボジア中の会社からの新システムへの移行手続申請が集まってきているというのが現状です。また、システムの管理は極少人数に限られていると聞いています。ですので、システムの内容にエラーがある場合であっても、これを修正したい場合はその管理者を経なければならないことから、手続きが進行しないという事態が懸念されます。

 本システムに関する手続きは、輸入関税手続きなど様々な行政手続に関連しうるものですので、手続きが成熟し安定するまでは、投資家のビジネスにも影響が少なからずあるものと思われます。もっとも、このようなシステムも、省庁内でのトライ&エラーを繰り返すことで少しずつ安定していくものと思われます。

 上述のように2016年9月からは、労働省でも労働許可(ワークパーミット)とクウォータの登録申請手続きが電子化されました。商業省職員の場合と同様に、こちらの電子登録システムも労働省職員にあまり理解されていません。システムエラーに対応できないなど、様々な問題が発生してくるものと思われます。

会社設立への手続きは、今後、罰金負荷制度で強化される

――労働省の最近の動きについて、私たちが注目すべきことについて教えてください

村上 会社設立にあたっては商業省と経済財務相への登録申請に加え、労働省での手続きも必要です。ですが、こちらについては十分な手続きが行われていない会社を多く見受けます。労働省の方もその事実を把握しているため、2016年、罰金負荷制度を強化する労働省令を出し、それに伴って労働省単体もしくは移民局との共同での監査を頻繁に行っています。監査時点で会社が行うべき手続きを終えていなかったり、ワークパーミットを取得していなかったりする場合は罰金の対象となります。企業としては、コンプライアンス意識を高め、今のうちにしっかり手続きを済ませておくことをお勧めします。

 また、2017年、税務署の登録システムと今年商業省がローンチした電子登録システムが、今後リンクする可能性があると聞いています。そうなった場合、税金の支払いに影響する可能性があります。税金関連の省庁への申告についても、正しくできているかどうか今のうちから確認しておくことをお勧めいたします。


――最近施行された新労働組合法について教えてください

村上 以前から労働組合の登録義務はありましたが、労働法の条文が充実していなかったために、労働省による適切な運用がなされていませんでした。今回の新労働組合法は、全ての労働組合に労働省への登録義務を定めたものです。登録制にすることで、労働組合がそれぞれの財務状況を労働省に報告する義務が発生し、労働組合をより適切にガバナンスできるようになります。

 一般に労働組合法の目的は、労働組合を組織することで労働者側に交渉力を持たせ、労使間の立場を対等にすることにあります。今回のカンボジアにおける労働組合法はそれに加え、投資の促進をも目的にしている点に特徴があろうかと思います。投資家としては、労働組合による違法な労働紛争が多発しているとなれば投資に対して消極的になってしまうので、そのような事態を招かないよう、労働組合の違法な活動を規制することが期待されます。

カンボジアの諸制度は元々の基盤が整っていた

――大メコン圏諸国と比較して、カンボジアの諸制度はどの程度発達していると考えられるのでしょうか

村上 もちろんラオスやミャンマーにも様々な制度や法律がありますが、制度の観点から言いますと、カンボジアは比較的それらの整備が進んでいると思います。近年の最低賃金の上昇によって、カンボジアの労働集約産業は縮小傾向にありますが、縫製業や観光業が主要産業である以上、政府は海外直接投資を呼び込む政策を取る必要があると理解しているため、元々の基盤が整っていました。
 
 現在は、制度化やその徹底に向けての努力が加速しているという状況です。(取材日:2016年9月)


JBLメコン JBL Mekong
事業内容:法律事務所
URL: http://www.jblcambodia.com/
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