カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

業界別インタビュー

2017年1月11日

世界でも有数の不動産会社として、不動産の全部門にプロフェッショナルがいる[不動産] ジェームズ・パデン

不動産

CBRE カンボジア CBRE Cambodia
サーベイヤー : ジェームズ・パデン James Padden
ここ数年で、最も目まぐるしい変化を遂げ、投資家からも注目を集めるカンボジアの不動産業界。業界の変化や、今度発展が見込まれる場所、物件購入における重要な点をCBREカンボジアのジェームズ・パデン氏に伺った。(取材日/2016年9月)
強みは、アジア太平洋のネットワーク

――自己紹介をお願いします。サーベイヤーとして何をされていますか?

ジェームズ・パデン(以下、パデン) サーベイヤーとして、評価額の算出やリサーチ、開発のコンサルティング、代理店など、商業用不動産に関する幅広い領域に携わっています。

 私がCBREに入社してからは業績も好調で、現在私はオフィスサービスのチームを見ており、企業や組織に対して新しいオフィスの立ち上げや、移転などをアドバイスしています。これは企業にとって大きな決断ですよね。我々は契約に向けた交渉をしながら、企業にとって最良の判断をして頂くため、洞察力を駆使して分析を行っています。


――CBREについて教えて下さい

パデン CBREは、世界でも有数の、不動産に関するプロフェッショナルなサービスを提供している会社です。カンボジアでは2008年からサービスを提供していますが、それ以上に多くのお客様にアドバイスを行っています。

 CBREの強みの核としては、アジア太平洋のネットワークでしょうね。そのため弊社が都度出している調査報告書では、そのネットワークを通じて、マクロからミクロの視点で不動産分析を可能にしています。

 カンボジアでは、住宅のアドバイス、リサーチ、コンサルティング、不動産評価額の算出、投資、不動産管理、オフィスサービスや小売サービスなど、不動産に関わる全部門において、それぞれのプロフェッショナルがいます。

次の波は、地元中間層による内需

――カンボジアの不動産業界の現状についてどのように思われますか

パデン 不動産業界は、農業、縫製、観光業と並んでカンボジアの主要産業の1つです。プノンペンを訪れる誰もが、カンボジアが、未開の地から、近代的でアジア経済のハブに、大きな変化を遂げているのを見ることができますよね。

 2009年以前は、高層の商業ビルなどはなく、企業や組織のほとんどは一般住宅にオフィスを構えていました。これも都市の発展につれ、現在変化しています。同様に、住宅施設は質・量共に進歩しており、サービスアパートやコンドミニアムから、最近ではモダンな住宅やボウレイの開発が盛んです。

 カンボジアにはその他にも、海岸沿いや離島のリゾート不動産市場や、プノンペンでの小売モール市場など、急成長を遂げている市場があります。我々が扱っている不動産環境は進歩し続けており、カンボジアは益々エキサイティングになるでしょう。

――レンタルオフィスや住宅市場など、現在の市場の状況を教えて下さい

パデン オフィス市場は、賃料も毎年増加しており供給のパイプラインも問題なく、非常に健康と言えますね。オフィス市場の面白い点は、土地や一般住宅に比べて、投資家が直接持てる物件がほとんどだという事です。これは、投資家にとっても非常に興味深いでしょう。品質面では、国際標準クラスの高いグレードの物件が人気です。今後、品質の高いオフィス物件は希少価値がつき、空き物件は限られるでしょうね。

 住宅は、ここ数年最も開発が活発な市場で、プノンペン市内では、2016年末までに6000戸のコンドミニアムができ、さらに2018年末までには2万5250戸にと大幅に増加する予定です。サービスアパートは、2015年の4400戸から5300戸になっています。しかし元々の数が少ないため、2万5000戸という数は、300万人の人口からすればまだ控えめですね。

 これまで需要のほとんどは海外の投資家からでしたが、次の波は成長する中間層による内需です。 ディベロッパーが、中間層向けに部屋の大きさを決め直すなど、傾向は既にありますよ。

不動産の質と国の透明性が求められる

――カンボジアの不動産市場の魅力的な点は何ですか。またその魅力は続くのでしょうか

パデン カンボジアは、共同所有権があるのが外国人投資家にとって魅力的です。不動産価格は上昇していますが、シンガポールや香港に比べるとまだ低いですし、利回りも魅力的です。しかし、絶対安心だという保証は低いので、投資家は最高のチャンスを見極めるためにも、市場を学ぶのに時間を費やすべきですね。


――カンボジアの不動産業の問題は何だと思いますか?またそれに対する解決策を教えて下さい

パデン カンボジアの不動産業界は、国のフロンティア経済と共に、急速に発展しており、その発展に品質が追いつく必要があります。 例えば、現在建設中のショッピングモール・ホンコンランドにて地元品が不足しているため、香港から持ってきた耐火コードを使用しているなど、 火災での安全性が懸念されています。これは、明らかに命に関わる領域ですよね。

 また、投資家を誘致し国への投資を後押しする、国としての透明性が求められています。カンボジアには強いインバウンド投資が見られますが、その腐敗度により、様々なグローバル指標で不利な点数を出され、投資は挑戦的だと判断されています。これが改善できれば、投資を後押しする素晴らしいチャンスですね。

 その他にも、近年自家用車の利用が拡大しており、毎年約3%の都市化が進むと、道路事情を圧迫し将来は輸送の問題も出てくるでしょう。 コンドミニアムの供給過多の恐れも増しますが、しかし長い目で見れば、都市は成長し地元の人々の所得も上昇し、中長期的に需要が生じると思います。

需要の高い場所を選ぶことが非常に重要

――プノンペンのどのエリアが将来開発されていくのでしょうか

パデン 今のところ、プノンペン中心部で最も開発が進んでいるのは、モニボン通りとノロドム通りの間、ワットプノン近くのCBD、ボンケンコン1、ダイヤモンドアイランドですね。しかし、トゥールコークやチョロイチョンバーなど二次的に開発が進んでいる場所もあります。

 また、プノンペン南側に開発予定のING市衛星都市計画や、チョロイチョンバーにも大規模計画があります。これらの大規模プロジェクトはインフラ計画の恩恵を受け、今後数年間に渡り、アクセス環境がかなり良くなる可能性があります。


――カンボジアで今後、目立つプロジェクトについて教えてもらえますか

パデン CBREは、2016年第4四半期に完了予定のオフィスと小売用スペースが混ざったグレードA物件、ホンコンランドの唯一の代理店です。 また、プノンペンタワーやメイバンクタワー、マリンサービスアパートメントなど、有名な不動産プロジェクトのプロパティマネジメント会社ですよ。


――カンボジアの不動産を購入する際の注意点を教えて下さい

パデン 不動産購入時に気を付けるポイントは、個人で使用するのか投資用なのか、まず最終目標を明確にすることですね。 もし投資用であれば、賃貸収入とキャピタルゲイン、共に十分に検討し回収への分析が必要です。

 また、同様に重要なのは資産の品質です。施工品質や安全仕様、そして将来の運用管理や保守など。 経験豊富な不動産管理チームは、占有率を上げ、賃料収入を維持するのに役立ちます。

 不動産投資を分析する際、決まり文句の1つが「場所」ですね。需要の高い場所を選ぶことが非常に重要です。もちろん二次的に開発が進んでいる場所も考えられますが、通勤はどのくらいか、洪水の危険性はあるかなど、アクセスの容易さと周囲の環境を分析する必要があります。

 いざ購入に踏み切る場合は、開発者の他の実績や工事の進捗状況も見て下さいね。
(取材日/2016年9月)


CBRE カンボジア CBRE Cambodia
事業内容:不動産仲介
URL: www.cbre.com.kh
関連記事
経済
プノンペン住宅市場、都市化の進展で国内需要が急増[経済]
(22日)
経済
第3四半期に小規模ビジネスローン増加も、不動産市場は冷え込み[経済]
(01日)
政治
シアヌークビルの未完成建物問題、政府の支援策に期待も解決は未だ[政治]
(10月30日)
社会
プノンペンのボレイ・ピプープ・トメイ購入者、家の差し押さえは不当と主張、首相に解決を要求[社会]
(23日)
経済
カンボジアの金融セクター、2023年には貸出成長が鈍化、ただし2024年に回復見込み[経済]
(08月29日)
経済
住宅販売は減少する一方、ローンは増加の傾向に カンボジア[経済]
(08月10日)
あわせて読みたい
特集
まちづくりひとづくり スペシャル対談 vol.3
特集
活況カンボジア不動産投資 リスクとリターンを見極めた先に映るその正体は? 2/2
特集
活況カンボジア不動産投資 リスクとリターンを見極めた先に映るその正体は? 1/2
業界
これ以上無いほど徹底して利便性を追求[不動産]ジュリアン・ホー チェニー・チャン
業界
プノンペンの不動産は依然として健全[建設・内装] ミース・プロックサー

その他の「不動産」の業界インタビュー