2017年7月13日
――カンボジアにおいて、金融業界はどのような成長を遂げていますか
パン・イン・トン(以下、パン) カンボジア政府の報告によると、カンボジアは2016年、平均7%の経済成長率を維持しました。世界的および地域的な経済の不確実性や課題はあるものの、2017年も同じく維持されると予測されています。
カンボジアの経済成長を支える重要な役割を果たしている金融業界には、変化に柔軟に対応することが期待されています。銀行業界は、健全な資産成長率20.9%と、銀行システムに対する国民の信頼を受けて預金成長率21.82%を引き続き記録しました。更には、過去数年間における外国商業銀行の開設の増化が、カンボジアへの外国直接投資の信頼を示したと考えています。
――近年、リエルの使用が促進されていますが、当行としてはどうお考えですか。また、カンボジア政府と国際銀行の取り組みにおいて、銀行の役割は何だと思いますか
パン 近年におけるリエル使用を促進する動きは新しい取り組みではなく、すでに実施されていたことです。当行は、この問題における政府と国際銀行の取り組みを非常に支持しています。
当行は、税務総局により課されたすべての種類の税金を徴収するため、特にリエルでの固定預金口座を促進することにより、他の銀行との取り組みに着手しました。加えて、当行は特に中小企業に資金を提供するため、魅力的な金利や利益率の高さとともに、ハードタイトル及びソフトタイトルで確保されたリエルでの融資の促進にも着手しています。
2016年にカンボジア国立銀行が、リエルでの銀行間取引(銀行および預金認可マイクロファインナンス機関間の取引)の即時決済を可能とする、FAST(Fast And Secure Transfer)システムを開始しました。参加銀行である当行では、顧客が別の参加銀行またはマイクロファイナンス機関を通し、数分以内にリエルで資金を別の受益者に譲渡することもできるようになりました。今後は、水道料金の回収など、リエルを使用した多くの金融サービスを導入する予定です。
――強豪プレイヤーも数多くいる中で、どんな戦略をお持ちですか
パン 当行は、他のサービスを提供する銀行やマイクロファイナンス機関とは異なる市場と顧客に対応しています。当行のターゲットは主に、プノンペンの小売顧客や各州の主要都市です。当行の戦略は、多様な顧客と強力な顧客サービス文化に合わせた銀行商品の幅広さを通して、お客様にワン・ストップの金融解決を提供することです。
激しい競争ではありますが、銀行は顧客志向のビジネスモデルであり、当行は引き続き、貸出及び顧客預金における重要な市場シェアを持つ大手外国銀行として、有利な立場を反映する好ましい選択であり続けます。
また、当行はより深い顧客契約と忠誠心を育むため、24時間現金自動入出金機やe-walletサービス、ポイントカードと組み合わせた包括的なバンカシュランス商品など、競争力のある商品とサービスを引き続き紹介していきます。
――カンボジアにおける金融サービスは多様になってきていますが、最近の状況についてどう思われますか
パン カンボジアの金融状況は、顧客が技術とサービスの変化を見極めるようになり、過去十年間で急速に進化してきました。インターネットバンキングとモバイルバンキングは、もはや多くの新しい金融サービスとしての「もの」ではなくなっています。他のソーシャルメディアや電子財布サービスを通じて行われるオンライン決済や資金移動は、今後市場に導入される予定です。
それでもなお、当行は手数料からの収入を増やし、貸付および預金事業からの利幅圧縮に直面する中で収益成長を促進するため、更に革新的な製品とサービスを市場に導入していくと考えられます。
――金融業界への展望を教えてください
パン カンボジア国立銀行の総裁であるチェア・チャント総裁の素晴らしいリーダーシップの下で、中央銀行は金融の安定性を維持し、銀行や他の金融機関の健全性を強めています。中央銀行のリスクベースの取り組みや、最低払込資本要件のなかでも銀行やマイクロファイナンスによる新しい規定の導入、流動性のある損失負担能力と厳格な監視・監督は、確実に金融部門をさらに強化するでしょう。
――日本人投資家に提供出来るサービスを教えてください
パン 当行は日本人投資家や顧客を非常に支持しています。カンボジアの経済成長において日本政府が担う役割の重要性や日本人投資家による投資の増加を認識し、当行は2014年にりそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行と業務提携を行い、事業の合同と協力の強化を目指しています。基本合意書に署名したことは、日本の銀行がカンボジアに足を踏み入れずに、銀行に口座を開設することを容易にしたため、重要だと考えています。また、当行は日本人デスクを設置しています。
当行の強みは、カンボジアの大手外国銀行であり、マレーシアで3番目に大きい国内銀行グループであるパブリック銀行グループの完全子会社であるということです。当行は、完全子会社であるCampu Securities Plcを通じた証券引受、取引、および仲買業務の提供を含むワンストップサービスとして実績があります。また、カンプロンパック保険を通じて一般保険サービスの提供も行っています。
2015年に銀行がJCBの加盟銀行店になったことは、日本からの投資家や旅行者の増加に対応するという当行の強みをさらに証明したと考えています。(取材日:2017年4月)