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業界別インタビュー

2017年1月27日

国際基準に則った教育が、大学・企業ともに必要[人材] ケイシー・バーネット (1/2)

人材・コンサル

カムエド・ビジネススクール CamEd Business school
学長 President: ケイシー・バーネット Casey Bernett
カンボジアはもちろん、インドシナ地域で初めて英国公認会計士(ACCA)プログラムを提供するカムエド・ビジネススクール。国内で屈指の会計士の専門学校である同社の創立者であり、自身もACCA資格を持ち、世界銀行のコンサルタントなどを務め上げたケイシー・バーネット氏に、カンボジアでの会計士の採用と育成について、将来の展望を交えて語って貰った。(取材日/2016年8月)
小さな学校から、国内屈指の会計専門学校へ

――自己紹介をお願い致します

ケイシー・バーネット(以下、バーネット) ケイシー・バーネット、アメリカ人です。英国公認会計士(ACCA)と公認財務アナリスト(CFA)の資格を保持しており、NYにあるコロンビアビジネススクールでMBAを取得し、その後カンボジアに来ました。

 なぜカンボジアに来たかですか?ただ、興味があったからです。初めは途上国の開発分野で2-3年いようと思ったのですが、学校を始めたとき、私の知識や経験がカンボジアの人々の役に立つと気付いたんです。教えることが彼らを助けてあげられると。それで、ここに留まることを決めました。同時に数年は、世界銀行の財務部門コンサルタントや経済財務省の国家会計評議会でアドバイザーとして働いていました。

 また自由時間は、競争連盟の副会長を務めています。8月のリオ五輪でも選手が参加するため、私のそのサポートに携わります。リオに行くんですよ。

――いつ学校を設立されたのですか

バーネット 2000年頃です。先生は私一人で今の様な規模ではなく、小さな学校でした。会社にも教えに行っていたんですよ。オフィスも何もなかったので、教えに行った先がオフィスですね。しかし、年々学生が増え、私が教えに行くことをやめ、社員を雇ったのです。その後ビジネスは成長し続けています。

英国公認会計士(ACCA=Chartered Certified Accountant)の資格

――教育面でのカンボジアの課題はなんだと思いますか

バーネット カンボジアの課題は、大学による品質の均一化が出来ていないことです。例えば、ある大学には会計学の先生がいて、ある大学にはいない。同じ会計学でも、大学によってレベルが異なることが大いにあります。100人いて100人卒業したとしても、共に資格を与えられる。例え資格を持っていても、自信を持って全員が会計業務のプロフェッショナルなるとは言えません。

――カンボジアの会計資格について教えて頂けますか

バーネット カンボジアの企業会計は、法律上、国際会計基準に則る必要があるのですが、アメリカの会計システムを使用している企業もあります。学校で教えられていないためです。教育カリキュラムにおいてもカンボジアのほとんどの大学では、他の国で求められるような会計コースがありません。

 例えば、我々の学校では英国公認会計士(ACCA)の国際プログラムを提供しています。これは、日本の公認会計士(CPA)や米国公認会計士(USCPA)と同等の資格です。ですので、ACCAに則り、国際標準で求められているスキルを習得することが出来ます。授業は英語で行われ、コースのテストは英国のACCAが用意したものを使っていますし、カンボジアでテストを受けると、英国で採点するんですよ。これにより、試験の透明性や信頼性はより高く、高品質が保たれます。また学生にとっても、自信をもって有資格者だと名乗ることができ、国際的にも通用します。

――だからカムエド・ビジネススクールは、カンボジアでも有名な銀行や金融業に人材を輩出しているんですね

バーネット そうですね、ハイレベルな教育が品質を保ち、信頼されているのだと思います。我々の学校は会計資格のみに焦点を絞っており、マーケティングや人材、マネージメントのコースは提供していません。会計資格のみ。なぜかというと、会計資格に絞ることで、ベストな教育を提供出来るからです。多様な資格も取り扱うと、高品質の維持が出来ません。ですので、我々は長い間会計のみに焦点を絞り、高いレベルの教育を提供してきました。

唯一の国際会計資格機関として、高い教育を提供する役割

――他のビジネススクールとの違いをもっと教えて下さい

バーネット カンボジアでは、ビジネスを教える大学は多いですが、例えば銀行の勉強のみをするといった、完全にビジネスに特化した学校はあまりありませんね。例えばノートン大学やザマン大学などには、もちろんビジネス科目もありますが、英語や建築など他の科目も教えています。

 我々の大学では、英語や会計や面接等など入学時にテストを行います。他の大学では、お金を払って授業に出れば入学したことになるんですよ。なので、入学をするのは簡単です。また4年間お金を払えば資格を得ることができる。カンボジアの学生たちは同時に複数の大学に通っていますが、それは学位を取得するのが簡単だからです。3つの大学に喜んでお金を払えば、3つの学位を取得できる。その点で、我々の大学は入学でも、学生の資質や本気度を測っています。

――最近の会計業界への就職の需要について教えて下さい

バーネット 数字でいうと、会計士が多すぎるという人がいる一方で、良い会計人材を探すのが難しいという人もいます。なので、どの視点に立つかで答えが違ってきますね。

 昨年私は300社の企業から、会計人材について問合せを受けました。しかし、レベルの高いアカウンタントは少人数で、異なった業種では異なった経験が求められ、各会社に適したアカウンタントを見つけるのは非常に難しいと思います。

――カンボジアではどのくらいの人が会計資格を得ているんですか

バーネット 会計士と同様のACCA資格者は、国内でもたった140人。ACCAより低いレベルの資格(CAT)でも、300人近くです。もちろん資格保持者数は毎年増えていますが、ACCAを取得するのは毎年22人程度。非常に少ないです。CATは52~83人程増えています。

 我々の学校には現在2000人の学生がおり、学士の資格取得コースもあります。このコースが出来たのは4年前で、つい数か月前に初めての卒業生が85名出ました。翌年は200名、さらに続いて400名の卒業生を送る予定で、益々増えていく予定です。(取材日/2016年8月)
次回へ続く


カムエド・ビジネススクール CamEd Business school
事業内容:ビジネススクール
URL: www.cam-ed.com
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