2017年9月27日
――自己紹介をお願いします
トゥース・サプーン(以下、サプーン) ウェスタン大学で建設設計・都市計画分野の教授を約25年間しています。政府関係のプロジェクトの多くに関与し、問題解決のアドバイスをしています。
また、高層ビルの建設計画にもプロジェクトマネージャーとして携わっています。
――カンボジア、プノンペンの都市計画について
サプーン 近年カンボジアは、更なる発展とインフラ整備の促進のため、建設や都市計画分野からの貢献をより一層必要としています。カンボジアはクメール・ルージュ後の長い期間を眠り続けていた国ですが、政府はもう目を覚まして、発展のための努力をしています。排水設備強化などインフラ整備を進めて国を発展させるため、より多くの人的資源が必要です。現在カンボジアでは建設業界が活況ですし、特に都市部で顕著です。この発展はプノンペン郊外へも拡大しつつあるため、都市計画のマスタープランが必要になっています。発展するための適切なプランです。
ですが、その土地の自然な部分と都市としての機能を融合させる必要があるため、都市計画というのは難しいのです。理想的な都市は、機能が独立して都市の中に存在しています。例えば、このあたりは工業地区、このあたりは居住区域、このあたりは商業区域、といったような感じです。工業地区には大型トラックが通行できるような特に広い道路が必要ですし、多くの電力が供給される必要があります。
しかし現在のプノンペンはそのような都市構造になっておらず、このまま拡大する可能性があります。これらすべての都市機能が雑然とごちゃ混ぜになっていますが、これは問題です。現在すでに都市化した部分については良いとしても、今後拡大していくであろう潜在的な都市部(つまり現在の都市郊外)については、上下水道インフラや電力供給網などをよく計画しておく必要があります。でないと、例えば工場からの排煙や排水が居住区に流れて行ってしまい、人間の健康にもよくありません。うまく設計されていない都市で、排水はどこへ行くのでしょう。どうしてフラットなどが、これほど乱立しているのでしょう。
昔のカンボジアは、環境の面から言って非常によくできた都市でした。工場が郊外に位置しているなど、都市機能も独立していました。「真珠の都(Parl City)」と呼ばれていましたしね。
現在は、例えば下水道インフラの面でJICAから支援を受けています。政府には十分な資金力がありませんが、JICAは資金を提供してくれますね。
――業界における人材の状況と、建設技術について
サプーン カンボジアでは、年に約200人の建築デザイナーと、約500人の土木技師が誕生しています。ですが、現在、カンボジアには200社以上の建設会社と、120社以上の建築・デザイン事務所があってどこもたくさんの仕事を受注していますし、プノンペン以外の州でも多くの建設計画が進行中のため、これでも足りないくらいです。
また、テクノロジーの面でも私達は学ぶべきものがまだまだあります。例えばガラスやタイルなど、建築資材は世界で日々ハイテクノロジーな新しいものが登場していますし、カンボジアでは手に入らないものも多いです。また、新技術も積極的に導入していかなければなりません。日本からは土壌調査の素晴らしい技術などがその例です。日本は地震が多いので、そういった土壌や地下調査においては卓越した技術を持っています。カンボジアはとにかく、日本をはじめとする海外から学ぶべき技術がたくさんあります。
――今年一年間のカンボジアの建設業界の変化について
サプーン だいぶ変わりました。建設プロジェクトへの投資額は、昨年と比較しては25%ほど増加し、非常に成長しています。ただ、投資の面で問題があるとすれば、やはり地方におけるインフラ不足だと思います。プノンペンはだいぶ整備されていて、電気や水へのアクセスが容易ですから、地方よりは安価です。投資がプノンペンに集中してしまうのはそのせいです。
――現在のカンボジアの建設業界の状況について
サプーン 現時点では、カンボジアの建設技術はシンガポールや中国と比較できるようなものではありません。彼らには、高層ビルを建設する技術と経験があるからです。ただ、カンボジアには現在、海外からの投資によって高層ビル建設プロジェクトが多く立ち上がっており、また海外から建設技術もそれと同時に持ち込まれています。カンボジアは、勉強している最中なのです。ですから、ベトナム・ラオス・ミャンマーと比較すれば、建設技術的にはより優れていると思います。
また、2016年9月には、ベトナムでASEAN建築士委員会(ASEAN Archtect Coucil = AAC)が開かれるなど、ASEAN地域のなかで技術を共有する試みもあります。こうした場を活用して、カンボジアは建設・建築技術を多くの国から学ぶ必要があると思います。
将来的にも、この業界は良い方向に向かっていると思います。断層調査の結果、カンボジアではやはり地震の心配がないという事でしたし、海外からの影響で、技術を学ぶ機会がたくさんあります。もちろんこちらからも、地域諸国に共有することがありますよ。例えばマレーシアから私のところへ依頼があるのですが、そこでお互いに知識や技術を共有します。
――日本人投資家へのコメント
サプーン カンボジア人は、日本に対して非常に良い印象を持っています。日本の製品を信頼していますし、インフラ面でもたくさん支援を受けているからです。カンボジアは、日本からの投資を歓迎します。