2018年1月15日
(前回の続き)
―― 政府は、いくつかの産業において人材資源を改善するための目標を発表しました。カンボジアの人材育成の現状に必要なことを教えてください。
ソー・キナール(以下、ソー) 政府はすでにこれまでに多くの取り組みを行っています。例えば、高等学校での試験の改革です。以前、学生は友達からレポートを写すことができましたが、今では規制されています。これにより、生徒は授業の予習を始め、難しい試験に合格するようになりました。
また教育省は、高等教育の質の向上のため、学校の一部のカリキュラムを国家計画として改革し始めています。 ACC(カンボジア認定委員会)も標準的な運営を行っているため、新しい大学を設立する際には、認定書の提示が必要になりました。認定書がない場合は、新しい学校を設定することはできません。政府は、TVETセンターと技術学校をにおいて工学やITの科目設置を推奨しています。政府は市場のニーズを満たすために教育の質を向上させようと努力しており、他のASEAN諸国や組織にも協力を求めています。ただ、カンボジアだけでなく、多くのASEAN諸国も技術不足の問題に直面しています。
――カンボジアの多くの日本企業は、労働者を雇うために人材会社を利用しています。求人の際には何に注意すべきでしょうか?
ソー カンボジアの求職者と日本の雇用主はお互いの理解を深めていて、状況は良くなってきていると思います。カンボジア人は日本の企業に、厳しくて勤勉、会社への忠誠心、長期雇用というようなイメージを持っています。
しかし、日本人とカンボジア人では長期雇用の考え方は違います。年に2回仕事を変える人もいるし、毎年仕事を変える人もいれば、労働者が流動的で離職率が高い業種もあります。また、現在の仕事よりも良い職場を見つけたら、彼らは簡単に別の会社に移ります。信頼の考え方が異なるためですが、雇用者と従業員の間でのキャリア計画についてのコミュニケーション不足も理由の一つです。
現在、日本企業のマネージャーは、カンボジア人が家族主義の文化に基づいていて、常に家族を第一に考えているという理解を深めようと努力しています。仕事が終わるまで夜9時、10時まで働くことは、日本でのみ可能なことです。文化の違いや安全保障上、ここカンボジアでは同じようにはいきません。また、女性労働者に対するコンプライアンスも問題の一つです。このような側面が労働者の不安材料になる可能性があります。
また、日本企業のルールや規制についてですが、カンボジア人にとっては、規則に厳密に従うのは一般的ではありません。交通機関でも、適切な交通ルール無視しているカンボジア人はよく見られます。セキュリティや安全のために、ルールを作成し、それに従ってもらうには、手順を段階的に説明する必要があります。このことは、雇用主がカンボジア人を理解する上で重要なことです。
共同で仕事をする際、カンボジア人は怠け者だと思うかもしれませんが、実はそうではなく、彼らの多くは積極的でやる気があります。カンボジア人の穏やかなライフスタイルや祝祭日数、様々な問題を取り巻く労働環境が原因で、やる気のある人が実際に行動することが難しくなっています。これは、彼らが怠け者だからではなく、カンボジアで変わりつつある労働環境が要因となっているのです。
一方で、ポジティブな側面もあります。カンボジアは若い才能であふれていて、彼らには先入観がありません。研修の機会を提供できれば、彼らは進んで挑戦するでしょう。彼らとの理解を深めて可能性を引き出し、活発な人材を開発することが重要になります。また、カンボジアの若者が、地元企業や国際企業のトップマネジメントに従事することがますます増えています。若い起業家も多く、新たな企業を設立しています。
――今後の事業展開について教えてください。
ソー 私たちはカンボジア最大の人材派遣会社として、今後はアウトソーシング事業に注力していきたいと考えています。人材アウトソーシングサービスがHR部門の当社のコアサービスとして認知され、カンボジアの企業をサポートするHRの専門家やプロフェッショナルの大きな拠点としてもありたいと考えています。
カンボジアには数多くの人材派遣会社がありますが、私たちは優秀なチームによって良質なサービスを提供し、弊社のビジョンである「すべての人の持続可能な成功」に応えて、この業界でのトップを目指しています。それに向けて、従業員、顧客、そしてステークホルダーの皆様を念頭において、今後ASEAN市場に向けて事業を拡大する努力をしています。
――日本のビジネスのメッセージをお願いします。
ソー 日本政府はカンボジア人に奨学金支援に取り組んでいます。この奨学金のおかげで、より多くの有資格者が日本から帰国します。私が日本を訪れた際、彼らがどのように企業を経営し、国を発展させたかを知り、日本の企業や人々に感銘を受けました。カンボジア人が良いイメージ持っている日本企業は人材育成にも長けていると考えているので、私たちは日本企業とのパートナシップを歓迎しています。(取材日:2017年9月)