2018年1月15日
――貴社には2015年にもインタビューをさせていただいています。過去2年間に人材業界に変化はありましたか?
ソー・キナール(以下、ソー) 人材業界の主な変化は、サービスの質が何よりも求められるようになったことだと思います。サービスの質がなしでは、他の企業と競争することができません。それには、資格のあるスタッフが必要です。3〜5年前、各会社のサービスに違いはあまりありませんでしたが、現在は、顧客からの信頼を得るためにサービスの質で争わなければなりません。
また近年、新たな地元の新興企業や海外からのカンボジア進出が見られます。その中には、日系企業も含まれます。新たに市場に参入した企業のほとんどは、高い質のサービスを提供し従業員にそのスキルを教育しています。そのため、既存の企業や新興企業は資格のある人材を確保し、より良いサービスや製品を提供するための適切な人材育成が必要となります。市場において人材が流動化していて、特に有資格者は今や多方面での需要があります。したがって、企業には自社の強みの追求とその維持が求められています。
加えて、人材の能力の位置づけの変化が挙げられます。第4次産業革命により、業務体制の自動化が従来の労働市場から進んできています。業務を自動化するシステムを使用するために、システムを理解している人が必要なため、企業におけるITやICTスキルに熟練した人材の予算が増加しています。
給与水準も変化していて、政府が2018年にむけて最低賃金を170米ドルに引き上げ、衣服産業の労働者の最低賃金も増加しています。人材派遣会社も劇的に変化しており、現在カンボジアには100社以上の企業があります。企業数が増えるにつれて、求職者の登録も増えています。
――アウトソーシング事業では、どのようなサービスを提供していますか?
ソー 私たちは、銀行の顧客サービス、製造会社とロジスティクス企業、運転手、料理人、会計スタッフなど、多くの分野でアウトソーシングサービスを提供しています。2008年に開始したこの事業は現在約1000人の従業員を抱え、毎年拡大しています。
――金融や教育分野に関心のあるカンボジアの求職者が増えていると伺いました。現在のカンボジア求職者の関心や特徴について教えてください。
ソー 以前は、ほとんどの人が他人の意見に流され、自分の目標を持っておらず、興味のある業種がはっきりしていませんでした。私の世代でも、職業適正についてのキャリアガイダンスはあまりありませんでした。そのため学生だけでなく、両親も自分の子供にとって最良の道が何なのかを考えることができませんでした。最近では、経理や財務の能力があると就職が容易になるのでカンボジア人に人気があります。
これまで、ほとんどの大学では、会計、マーケティング、財務などのビジネス専攻科目のみが扱われていました。しかし、投資金額が高いことと需要が低いためエンジニアや建築などの科目はあまり扱われてきませんでした。その結果、多くのカンボジア人がこのような学問を勉強したいとは思っていません。
教育機関も、このような学問への投資に積極的ではありません。機械や設備を購入する必要があり、膨大な資金が必要です。しかし雇用市場では、エンジニアまたは建築分野の業務が不足しています。テレビや新聞でさえ、この分野の人々を取り上げず、主にビジネス分野に集中しています。だからこそ、多くの人がエンジニア、設計、または建築における雇用の利点を理解していません。これらの理由から、ビジネス、経済、または金融における雇用への認知度が高まっており、多くの人々は会計、ビジネスおよび財務の分野を勉強したいと考えています。しかし、移り行く社会の中でそのような考えは、就職先の仕事で重要視されされない可能性があります。会計に特化している人の場合、雇用主は会計分野のスキルを期待しています。 人材を専門とする人は、人材分野のスキルが必要です。より良いサービスと製品を創り出すために、多くの企業は特定の専門的なスキルが重要であると考えています。資格がなければ、仕事を得ることが困難になります。これは、国際企業、地元企業にかかわらず、求職者にとっての課題になっています。
カンボジアでは家族経営が主流ですが、その多くは家族経営から標準経営への転換を図っています。市場で競争するためには、会社の構造を変えなければいけません。それをサポートする有資格者の需要も高まっています。
――プノンペンと地方都市との違いは以前としてあるのでしょうか?
ソー はい、チャンスを求めてプノンペンには多くの求職者が来ています。しかし、ほとんどの人が都市に来て新たな生活と家族の設計をするため、プノンペンでの人材数は減少しています。
――カンボジアの求職者の間で、どの業界が人気でしょうか?
ソー カンボジアでは、銀行とマイクロファイナンスが急速に成長しています。ですので、金融業界では多くの人材が必要とされています。以前、管理職は外国人でしたが、現在はカンボジア人が銀行の管理職クラスを任されています。これは、求職者の間で金融業界の人気がある理由の1つです。しかし急速な成長のため、今後、成長のスピードは遅くなると考えています。
現在、ASM(カンボジアの空輸会社)は第4次産業革命に積極的に注力していて、将来的には技術分野でより多くの労働力が必要となり、この業界の求職者は増加します。2015年に発足したIDP2025を支援するために、現在カンボジア政府がこの業界の専門家の育成に取り組んでいます。しかしこれはカンボジア人がこれまで関心を示していない分野であり、人々に認知されるまでには3年以上かかると考えています。
また現在、政府は税金の規制について協議しており、新たな税法や法律を取り入れている企業は、財務報告の必要があります。この分野を理解している人は市場にとって重要なため、税理と会計は今後成長していく分野だと考えています。
TVETセンター、教育機関、人事専門家または専門にこれら産業の成長を取り上げて、サポートしてもらいたいと期待しています。
(次回に続く)