カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

業界別インタビュー

2016年9月16日

大切なことは、お客様にマイナスな情報もきちんと伝えて判断してもらうこと(後編)[不動産]青山英明 (2/2)

不動産

ライフ・デザイン・パートナーズ Life Design Partner Co.,ltd
CEO: 青山英明 aoyama hideaki
不動産マーケットの活況は、新興国経済盛り上がりの初期段階における定石といえる。カンボジアは今も建設ラッシュが続き、首都プノンペンは建設中のビルばかりだ。単なる住処だけでなく、投機的商品としての不動産をどう見極めるべきか。情報力に定評のある不動産サイト「Angkor Home」を運営するライフ・デザイン・パートナーズの青山氏に、カンボジア不動産市場の特徴や、ポイントなどを詳しく伺った。(取材日/2016年4月)
既に発展した場所で価格が安い方が、高い利回りを期待できる

前回の続き
―――不動産の購入について現在のカンボジアの状況や留意すべき点などございましたら、教えて下さい

青山英明(以下、青山) 今需要があるのは手頃な価格のワンベッドルームです。売れ筋は、購買層にもよりますが平米単価$1000~1500程度。平米$1500以下の物件はBKK3など人気エリアにもあります。現在プノンペンの至る所で開発が進んでいますが、物件によっては発展するか未定にも関わらず、既に価格に織り込まれており、平米単価$2500以上の物件もあります。それほど高く家賃がとれるかどうかは分かりませんが、そんな未知数の場所よりも既に栄えている場所で価格が安い方が高い利回りを期待できます。

 我々は、建築価格から逆算して売価を計算するので業者がどの程度利益を乗せているのか分かります。内装を豪華にしただけでそれほど金額が変わるとは思えません。

 以前あるインタビュー記事でカンボジアでは比較的大手の不動産開発業者さんが利益率5割を越えましたと言っているのを見ちゃましたからね (笑) 大勢の顧客が高値掴みをしている訳ですからよくよく注意してみないといけません。

賃料の一時下落は、カンボジアにとってマイナスでない

―――今後の展望を教えて下さい

青山 不動産市場は活性化するでしょう。例えば、今後面白くなるだろうと予想しているボントンボンエリアでは、1棟目の基礎工事の開始時点で既に完売している物件があります。そこは平米単価$1000からでハードタイトルが出せます。
 しかし一方で一部の不動産はバブルが崩壊し、完成しないところがあると予想しています。大切なことは、マイナスな情報でもきちんと伝えた上で、最終的にはお客様が判断することです。

 ただ最近は、不動産業者によってお勧めする物件は異なり、自社の利益を優先して過剰なセールストークをする業者が残念ですが出てきています。私自身は日本でも大家なので、自ら買いたい物件をお勧めする様にしています。

 賃料に関しては、供給が増えているので下落傾向ですが、一時的に下がるのはカンボジアにとってはマイナスではありません。これだけ英語が通じる国で、家賃価格が下がれば外国人の流入が増え、需要も高まります。どんどん国際的になっていくでしょうね。

細かい点にもよく注意を

―――なるほど。では、不動産を購入した後の管理についてお伺いしたいのですが、日本の場合は管理会社というのがありますが、カンボジアではいかがでしょうか

青山 カンボジアにも管理会社はあります。日系のところもありますし、カンボジア人経営のローカル企業など色々とあります。

 管理費については、弊社で購入されたオーナー様には賃料の3%を管理費として頂いていますが、他社では5%、7%、10%と色々あると聞いています。日系企業の中には管理費は5%ですと案内していながら、契約書をよく見ると最低金額100ドルというところがあり、賃料が1000ドルの場合は最低の100ドルが徴収される訳ですから実質10%になります。そういった細かい点をよく注意していかないといけません。

 他社さんがどういう形でオーナー様にレポートを提出しているのかは分かりませんが、弊社では欧米人、中国人、韓国人とオーナー様の国籍は多岐に渡るので社内の誰もが確認と修正が出来る英語でレポートをお送りしています。

 日本語を話すカンボジア人のレベルも年々上がっていますが、日本人オーナーを相手に専門用語を含めて一人で対応が出来るレベルではない人がほとんどですので英語を使った方が正確なレポートを迅速に提出できます。今はGoogle翻訳等の翻訳ツールが沢山ありますし、便利な世の中になりましたね(笑)

自分自身で判断できる目を養うべき

―――不動産、および不動産会社を選ぶうえで、大事なことはなんでしょうか

青山 これはカンボジアだからではなく日本でもそうですが、不動産業者の言う事を鵜呑みにするのではなく自分自身でも判断できる目を養う事です。特に売買は失敗した時の損失が大きいので特に気を付ける必要があります。その上で付き合う業者を選ぶ方が正解に近いでしょう。

 カンボジアでは、まだ業者を通さない直接取引が可能ですが、賃貸でも売買でも自分が業者だから言う訳ではなく不動産業者を通した方が良いと思います。この4年間でトラブルに巻き込まれる方をたくさん見てきましたが、トラブルになってからは基本的に当事者しか入れません。そしてその上で業者の言葉を鵜呑みにしないで下さい。自社物件をプッシュして、自社の利益のみ考えている可能性があります。まだカンボジアは千三つ《千のうち本当のことは三つしか言わない意》と言われたかつての日本の不動産業界と同じと考えて、業者は使った方が良いけれども100%信用しない事をお勧めします。(取材日/2016年4月)


ライフ・デザイン・パートナーズ Life Design Partner Co.,ltd
事業内容:不動産仲介業
URL: https://www.angkor-home.com/
関連記事
経済
プノンペン住宅市場、都市化の進展で国内需要が急増[経済]
(22日)
経済
第3四半期に小規模ビジネスローン増加も、不動産市場は冷え込み[経済]
(01日)
政治
シアヌークビルの未完成建物問題、政府の支援策に期待も解決は未だ[政治]
(10月30日)
社会
プノンペンのボレイ・ピプープ・トメイ購入者、家の差し押さえは不当と主張、首相に解決を要求[社会]
(23日)
経済
カンボジアの金融セクター、2023年には貸出成長が鈍化、ただし2024年に回復見込み[経済]
(08月29日)
経済
住宅販売は減少する一方、ローンは増加の傾向に カンボジア[経済]
(08月10日)
あわせて読みたい
特集
まちづくりひとづくり スペシャル対談 vol.3
特集
活況カンボジア不動産投資 リスクとリターンを見極めた先に映るその正体は? 2/2
特集
活況カンボジア不動産投資 リスクとリターンを見極めた先に映るその正体は? 1/2
業界
これ以上無いほど徹底して利便性を追求[不動産]ジュリアン・ホー チェニー・チャン
業界
プノンペンの不動産は依然として健全[建設・内装] ミース・プロックサー

その他の「不動産」の業界インタビュー