2015年6月10日
(前編からの続き)
――業界を取り巻く環境はどうでしょうか。特に人材の質についてのご見解をお聞かせください。
スザンナ・コーグラン(以下、コーグラン) カンボジア全体で言えることですが、成長が急激なので顧客意識の変化のスピードも速いです。彼らの変化していく要求に応える必要があるので私たちにとってもチャレンジです。最近は情報のインプットも増えていますので、企業も私たち以外の情報源から様々なプログラムを見つけてくることも容易になりました。多くの場合、私どもではマネージャークラスとのやり取りが多いのですが、彼らの要求する質も高まっていますね。とても良いことだと思います。我が社にとっても成長するきっかけですから。
人材の質は変わりつつあります。もちろん教育の変化が無いと中々変わりにくいものですが、近年は政府の考え方も変わってきましたし、それらが現場まで行き渡るにはもう少し時間がかかると思いますが、若い世代の人々は意識が高まっています。きちんとスキルを身に着けて、将来のキャリアに活かそうという目標を持っています。ただし、個人的に一番ポテンシャルを感じるのは女性ですね。近年の女性の活躍は目まぐるしく、長続きするのも女性が多いですし、新しいチャレンジに前向きなのも女性が多いと思います。
――これまでで最も苦労したこととは、何でしょうか。
コーグラン 大小考えるとたくさんありましたよ。早く成長したいという願いがありながらも様々な障害もありました。ただ、我が社のチームはとても誠実で5年以上勤務している社員がほとんどです。会社としても社員の人材育成に時間と費用を投資してきました。カンボジアで初めての業種という事もあり、それにふさわしい人材が中々見つからないという事もあって、人材育成には時間を掛けましたから。このようなスキルは一朝一夕で身に着くものでもありませんから、とても苦労しました。
――他社との違い、人材業界の今後の戦略や展望をお聞かせください。
コーグラン 私どもは顧客企業の戦略的パートナーとしての役割があると思います。人材スキルのギャップだけではなく、顧客のビジネス全体としてですね。ただの外注先ではなく、顧客からしてみれば全体像の相談ができるパートナーになりつつあるという事が私たちの強みです。今集中しているフューチャーリーダープログラムも従来のスキルギャップの穴埋めではなく、将来のリーダー育成に重きを置いています。それも私どもにとっても顧客企業にとっても新しいチャレンジだと言えます。顧客からも人材育成以外の相談も日常的にあるんですよ。
――進出するうえで、留意すべき点とは、なんだと思いますか?
コーグラン そうですね、数点あると思います。まずは自国の考え方を一切捨て払うことです。それにこだわっていたらイライラもたまりますし、失敗して撤退を余儀なくされるでしょう。次に、フィクサーを信用しないことですね。必ず、何でもできるというコンサルが寄ってきますが、カンボジアは情報も比較的開かれていて難しいことはありませんので、できる限り自分でやったほうが良いです。更には事前調査をしっかりすることです。私個人がその分野出身だからというわけではなく、いかに小さなマーケットでもきちんと調査をして進出することをお勧めします。
――日本人や日系企業へのメッセージをお願いします。
コーグラン 最近日系企業からのアプローチがありましたが、その担当はクメール語と英語も堪能で感心しました。私が特に進出企業に進言したいのは人材に時間とお金をかけることでしょうか。たいていの方が会社を作り上げるのに急いでいることが多いです。目標達成にはそれも必要かもしれませんが、必要な人材を育て上げるには時間もかかります。技術職でない場合は、経験やスキルよりも仕事に対する態度ややる気が重要だと思います。カスタマーサービスや営業職の場合は、その仕事のコンセプトを理解してもらうのに時間をかけるべきです。なぜなら、カンボジアでは今までそのような業種が無かったのですから。(取材日/2015年3月)