カンボジア政府は、プノンペンを含む15の州で52か所のオンライン詐欺拠点に対する一斉摘発を実施し、2,767人を拘束した。うち中国人が843人、ベトナム人429人(女性115人)、インドネシア人271人(女性45人)、そのほかバングラデシュ人70人、韓国人57人、パキスタン人42人が含まれる。摘発はフン・マネット首相の指示のもと行われた国家規模の作戦であり、各地の警察や入国管理局が連携して展開した。
押収品には、コンピューターやスマートフォンのほか、麻薬、覚醒剤、中国警察の制服、銃器、弾薬などが含まれており、違法活動の深刻さが浮き彫りとなった。さらに、過去2日間で100人近くの外国人が詐欺目的で入国していたことも判明している。
しかし、こうした成果にもかかわらず、裁判に送致された首謀者はわずか11人で、しかもその多くは現場責任者に過ぎないと見られ、「真の首謀者は誰一人として捕まっていない」との批判が出ている。
内務省の報道官は、詐欺組織が外観的には合法ビジネスを装って活動しているため、摘発の判断が難しく、十分な証拠がなければ立ち入りができないという捜査上の課題を説明した。
国際的な犯罪組織との連携が疑われる中、報道官は「カンボジアだけが非難されるべきではない。問題はより複雑で国際的だ」と述べ、各国に対し連携と協力の強化を呼びかけた。
このような中、2025年7月20日には、テクノロジー関連詐欺対策委員会(CCTS)のシナリット委員長が、中国公安部刑事捜査局副局長と会談。同局長はカンボジア政府の取り組みを高く評価し、引き続き摘発支援や犯罪者の送還、捜査情報の共有などで全面的に協力する姿勢を示した。
政府は引き続き、地方当局と連携して高リスク地域の監視と封鎖を実施。逮捕された外国人の本国送還も入国管理局が進めている。
一方で、市民社会や国際社会は、「こうした取り締まりが“現場”だけで終わらず、資金源や組織運営者といった根幹に迫れるのか」が試金石であるとの見方を示している。フン・マネット首相は、国家委員会の設置とともにカンボジアの「サイバー犯罪拠点」という汚名返上を誓っており、今後の本格的な法執行の行方が注目される。