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  • 社会
  • 2025年5月28日
  • カンボジアニュース

ASEAN、中国とメディア交流開始 フェイクニュース対策と人材育成が柱[社会]

中国とASEANは、地域のメディア能力の向上と越境的な文化交流、そしてAIを含む先端技術の責任ある活用を目的とした「ASEAN–中国新メディア交流プログラム」を共同で開始した。

本プログラムは、短編動画制作、マルチリンガル・ストーリーテリング、地域文化に根ざしたIP(知的財産)開発などを柱とし、ドキュメンタリーやドラマ、アニメ、ゲームの共同制作および国際展開戦略も含まれる。特にAIによるコンテンツ生成、バーチャルリアリティ、デジタルヒューマンの活用に関する研修を通じ、国境を越えた制作連携の強化を図る。

SNSプラットフォーム活用(Facebook、TikTok、LINEなど)に関する専門知識の共有や、アルゴリズム活用による拡散戦略、視聴者プロファイリングなどのスキル習得も目指す。さらに、倫理問題、情報セキュリティ、フェイクニュース対策といったAI時代の課題にも対応する内容が盛り込まれている。

本プログラムは、ASEAN中国センター(ACC)および中国国際出版集団傘下の国際伝播発展センター(CCICD)によって統括され、中国の大学や技術企業が教育資源を提供する。また、主流メディアによる配信協力、コンテンツ流通支援も行われる。

一環として、両地域のメディア、通信センター、テック企業、大学などを結ぶリソースマッチング拠点と「New Media+インキュベーター」が設置され、文化観光や無形文化財のデジタル保存を促進する国際共同プロジェクトの創出を支援する。

さらに、参加者の進捗は能力評価制度によりモニタリングされ、年次フィードバックを基に継続的な最適化が図られる予定である。また、オンラインプラットフォーム「ASEAN–China New-Media Resource Platform」も開設され、研修資源や技術ツールへのアクセス、国際的な連携機会が提供される。

2025年、河南省洛陽市にて開催された「ASEAN–中国メディア協力フォーラム」では、「AIの力を活用した地域コミュニケーション協力の強化」がテーマとされ、両地域の高官やメディア関係者約150名が参加した。

開会挨拶で、ASEAN中国センターの史忠俊事務総長は、「メディアは地域連帯を育む鍵である」とし、「AIはメディアの風景を根底から変えつつあり、フェイクニュースの急増という新たな課題も浮上している」と述べた。さらに、「AIをグローバルな公共財とみなし、倫理・社会的責任をもって活用すべきである」と強調した。

ASEAN副事務総長のサン・ルイン氏は、「ASEAN AI安全ネットワーク(AI Safe)の創設に向けた宣言を年内に採択する予定である」と述べ、「これは世界初の地域承認型AI安全ネットワークとなるだろう」と明言した。

また、「フェイクニュース・誤情報対策」および「AI時代の責任あるメディア」の2つのテーマに関し、参加者間で実践や意見が交換され、倫理・リテラシー・協働の重要性が再確認された。

カンボジア情報省のリム・チェイトアット次官補は、「省として情報セキュリティ確保に向けた政策と原則の整備を進めている」と述べ、「先端技術の悪用によるリスクや政治的動機に基づく誤情報の防止に努める」と語った。

若者の育成と交流も強調され、次世代メディア人材が中国・ASEAN間の友好促進において重要な役割を担うとされた。

なお、本プログラムは単なる「メディア技術交流」や「人材育成支援」にとどまるものではなく、中国が戦略的にASEANを取り込み、地域における価値観、技術、ルール形成の主導権を握ろうとする意図が垣間見える。

表向きは「対等な協力」や「共同開発」を強調しているが、実態としてはメディア運営モデルやAI活用、情報管理の分野における『規範の中国化』が進行する懸念もある。

とりわけ、AIの公共財的活用やフェイクニュース対策といったテーマは、国際社会における主導権争いの文脈に位置づけられつつある。今後、この枠組みが中国主導の「デジタル・シルクロード」政策とも連動し、情報領域における影響圏拡大のツールとなる可能性も注視する必要がある。

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