国際金融公社(IFC)の最新報告によれば、カンボジアの金融セクターは融資成長の鈍化と不良債権(NPL)の増加により、大きな課題に直面しており、全体的な収益性に悪影響を及ぼしているとされる。これに対し、業界関係者は、金融セクターが依然として経済の安定を支える重要な柱であるとの見解を示している。
IFCのデータによれば、2018年から2022年までの平均融資成長率は年20.9%であったが、2023年には6.9%、2024年には4.4%へと一桁台にまで低下した。一方で、預金の伸びは堅調で、2024年には18.1%に達し、コロナ以前の2019年(17.3%)を上回っている。
しかしながら、不良債権の増加は深刻である。2019年の5億5100万ドルから2024年には47億ドルに急増し、2024年の推定資本水準の約30%を占める。NPLカバレッジ比率は2024年12月時点で55.1%であるが、不良債権は2023年に倍増、2024年にはさらに51%増加しており、問題の深刻化が懸念されている。
延滞30日超のリスク資産(PAR 30+、ポートフォリオ・アット・リスク)や再構築ローンを含む問題債権は、2025年1月時点で105億ドルに達し、カンボジア信用情報機関(CBC)によると全融資残高の17.8%に相当する。仮にこれら全てが不良債権に転化すれば、潜在的なNPL総額は91億ドルとなり、全融資の15.5%、セクター資本の60%を占める恐れがある。現状のNPLカバレッジでは、このリスクの29%しかカバーできないことになる。
CBCのモニタリングダッシュボードによれば、融資の問い合わせ、再構築ローン、新規ローン契約の増加が確認されており、警戒感が高まっている。2025年1月時点での再構築ローン残高は56億1000万ドルに達している。
カンボジア銀行協会(ABC)の金融包摂・広報部長は、現地紙に対し、「2024年末時点でカンボジア国立銀行(NBC)に認可された銀行および金融機関の融資残高は約600億ドルであった」と述べた。
同氏によれば、2023年の成長率5%に対し、2024年は3%に減速したとし、「需要側では建設、不動産、観光、小売などの回復の遅れ、供給側では世界・地域経済の不確実性を受けた金融機関の慎重姿勢が影響している」と説明した。
一方で、預金は依然として堅調であり、「2024年末時点での銀行システムの預金は570億ドル、年成長率は16.3%であり、資本と流動性の強さがシステムの健全性を示している」と付け加えた。
さらに、同氏は「債務は資産と比較して評価すべきであり、たとえば5万ドルの住宅ローンを受けて6万ドルの家を取得すれば、純資産は1万ドルになる。これは債務が増えても資産価値の上昇が上回っていれば健全であることを示している」と述べた。
融資の増加が良い兆候か否かを判断するには、その資金の使途と分配先に注目すべきであるとし、「この2〜3年、製造業、中小企業、農業、運輸、小売、個人住宅ローンなどの生産的部門への融資が拡大している」と説明した。NPL率は約6%とわずかに上昇しているが、依然として管理可能な水準であるという。
2024年2月、NBC総裁のチア・セレイ氏も「建設や観光、小売などの部門の回復の遅れにより融資需要が低下し、また供給側でも金融機関が慎重になっている」と語った。
一方で、「預金の成長率は16.3%と堅調であり、資本と流動性の健全性が強い信頼感を支えている」とも述べた。
NBCの2024年年次報告書および2025年業務計画によれば、NPL率は銀行セクターで7.9%、マイクロファイナンスで9%に達している。だが、金融機関は55.1%の引当金を計上しており、引当後のネットNPL率は3.5%と管理可能な水準にとどまっている。
同報告書は、厳格な規制方針と国民の信頼が金融セクターの強靭性を支えており、経済回復への貢献を継続していると結論づけた。融資の伸びは減速しているものの、堅調な預金成長と高い流動性、継続的な改革により、金融セクターは今後も外的ショックに対応し、安定を維持できるとされる。