【医療・医薬】
カンボジアは、人口動態の変化はもちろんのこと、疫学的かつ社会的、経済的、環境的な要素によって受ける健康への影響について急速な移行を経験している。また、経済成長によって、都市化や大気汚染、座りがちなライフスタイル、食生活の変化がもたらされ、病気の質も変わってきている。途上国特有の感染症としてマラリアやデング熱という病気は、都市部では改善されている一方で、アレルギー性疾患や慢性的な病気が増えているといった状態だ。
世界保健機関(WHO)によると、現在、非感染性疾患は全死亡の64%を占めると推定されており、心血管疾患は早死の主な原因の1つだ。2050年までに人口の21%を占めると推定される高齢化人口の増加により、これらの数は増加すると予測されている。将来的に想定される、特に人々が生涯にわたって直面する健康ニーズの大部分に対処できるプライマリケアの部分で、医療従事者の拡大と変革に大きな投資が必要になってきている。
こうした中、外国人にとっては、より安心して生活できる医療環境が整いつつあり、プノンペンを中心に外国人医師・歯科医師が診療にあたる医療機関が複数存在し、様々な専門科の医師が診療を行っている。
病院を選ぶ際は、外国人専門医師や、海外で訓練を受けたか、外国の医師免許を持っているカンボジア人医師を有し、国際標準医療を導入している医療機関を選ぶことが望ましい。
また、救急医療については、国内で救急治療を受けられる病院もあるが、質にはばらつきがあり、2次又は3次救急では、国外の医療適格地へ搬送される場合もある。また、高額な治療費がかかり、輸血用血液は不足しているなど懸念が多い。
日本人医師、看護師が在籍するサンインターナショナルクリニック(以下、SIC)の荒木良守医師は、「我々のクリニックでは、内科、外科、整形皮膚科、形成外科、耳鼻科、精神科など結構いろんな先生がカンボジアに来てくれているので、幅広い対応ができます。また、日本にも我々の医療機関があるので、日本へLINEや電話などの通信手段を利用して遠隔の診療も可能ですから、かなり的確な診断ができるクリニックだと思います」と語る。日本と同じ医療サービスを受けられるクリニックの存在は、在住日本人にとって貴重だ。
保健省は、H1N1型とB型インフルエンザを雨季に流行する季節性インフルエンザと指定している。また、熱帯モンスーン気候に属し、年間を通して高温多湿のため、デング熱・マラリアといった感染症に注意が必要だ。
保健省によると、2019年1月から6月にかけてデング熱が1万3000件近く発生し、前年に比べて4倍増加した。5月から10月までの雨季にデング熱の症例数は増加する傾向がある。
SICの野々村秀明医師によると、「デング熱の症状は、突然の高熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・倦怠感などで、解熱時には全身に発疹が現れることもあります。一般的な風邪症状と似ているものの、喉の痛みや咳といった呼吸器症状はあまりないです。時には症状がほとんど出ず、かかったことに気づかないケースもある」と、外国人にも充分な警戒が求められるという。ワクチン接種は実施されておらず、デング熱対策としては、蚊に刺されない対策が重要だ。
しかし、プノンペンの在住外国人の多くはビジネスパーソンであり、忙しさゆえに不摂生に陥ることも多いだろう。日々の自己管理のほか、体調に異変を感じた場合は早急に医療機関で受診することが大切だ。病気だけでなく、バイク乗車中に発生する事故によるケガも多い。また、ひったくりに遭って引きずられるといったケースもあり、十分注意したい。