【教育・学習支援】
国営教育課程は国と州それぞれの教育省によって統制されており、半日(午前または午後のみ)のクメール語による一般教育で構成されている。この教育課程は、近年新しく導入された就学前教育と、小中学校に採用されていて、高等教育と非公式教育も教育省の管轄となっている。小中学校では月曜日から土曜日までの授業を行い、月単位で時間割が変更する。時間割の変更により、今月の午前中に勉強する学生が翌月に午後から勉強するなどだ。しかし、1教科あたりの授業時間はほとんどの科目で国際基準を下回っており、特にSTEM(科学/技術/工学/数学)教育、外国語、美術が不足している。これは内戦後の教室や教師不足が主な原因であり、特に教員の地位や給料水準が低く、課題となっている。不足する授業を補うために塾に通う中学生も多く(中学校からがある為)、教師が空いた時間にアルバイトで補講をすることもある。
教育省は、国営学校の教育の質を引き続き向上させるために、多くの国際機関や専門家と協力して、改善が必要な国家計画を特定し、課題解決に取り組んでいる。課題の1つとして、特に中等教育学校での汚職と不正行為が挙げられ、国家試験のプロセスから不正行為を防止するための対策が迅速に実施された。
また、プノンペンの一部の学校に幼稚園を導入し、教師の育成と認定プログラムの開発を支援するための企業提携を発表した。また、小中学校に金融リテラシー教育、そして高校では就職、起業に必要なスキルを学ぶビジネスプログラムの導入をし、次世代のカンボジア経済を担う人材育成に取り組み始めた。
公立学校のこのような取り組みが、カンボジア全体の教育の底上げにつながっていることは間違いなく、後述するインターナショナルスクールとも競合になりつつある。
例えば、2015年4月にカンボジアで初めて開校したプノンペン日本人学校では、日本同様の教育を受けることができ、日本の学校への転校もスムーズである。日本の有資格教員を雇用し、文部科学省の「学習指導要領」に準じた教育課程の編成のもと、日本の文化・スポーツ・科学技術に関する様々な課外活動を行っている。
今年4月に着任したプノンペン日本人学校の三好輝明氏は、「前任の校長が、とにかく学校という形を作ることに3年間取り組んでくれたのだと思います。次は、しっかりとした土台を作ろうと思います。教育の中身が大事なのはもちろんですが、施設面も改善できることはどんどんしていきたいです。私立学校も企業と一緒で、児童生徒、保護者、そして地域の方やカンボジア人も含めて、この学校に関わる全ての人にいかに満足してもらえるかを考えて経営していきたいと考えています」と抱負を語った。
カンボジア全域、特にプノンペンのなど人口の多い都市では、インターナショナルスクールの選択肢は数多くある。特定のカリキュラム、教育の質、価格は異なる一方で、ほとんどの学校で幅広い学問分野や課外活動を行っている。英語/日本語/フランス語/中国語/その他の言語を終日学ぶ専用カリキュラムから、午前中は英語、午後はクメール語での大学院教育といった複合言語カリキュラムまでさまざまである。
また、ローカルスクールからインターナショナルスクール、そして人材教育会社まで運営するウエストラインエデュケーショングループ会長兼CEOのペッチ・ボレン氏は、「外国人が子供の学校を探す場合、昔に比べて本物のインターナショナルスクールが増えました。また、自国に帰国したときにスムーズに移行ができる相互カリキュラムの導入も増えてきました。これらの学校はその特徴として学費も高額でカリキュラムや教育環境もしっかりしています」と多様化する選択肢について語った。