【法務・会計】
ルール整備・改正は更に続きながらも、その運用状況にはいまだ難あり、という一筋縄ではいかない法律環境だ。条文や判例を机上で講釈する専門家よりも、いかに実践的に顧客の法律・会計実務や諸問題と向き合い、解決に向けて共に動いてくれるか。資格や肩書きよりも、リアルな実務経験と協業スタイルがパートナー選びにあたっての重要なポイントとなるようだ。
税務調査や租税債務の管理強化、追徴課税等の担当者へのインセンティブ支払制度等の施策を通して各年度財政法にて設定された予算に基づき、政府は徴税体制を強化している。更に主たる施策として、税務登録義務があるにも関わらず登録を怠っている事業者への登録促進、新システム・全納税者の再登録手続の運用強化・電子登録申請制度などのICT化の推進などを進めている。
カンボジアでは、税務登録を推進するべく、2017年2月に、2018年末までに経済財政省に税務登録した中小企業に対しては2年間の法人税免除が行われるという閣僚会議令が発令された。
カンボジア税務の特徴として、税制度の大枠の整備はされているものの、細則の整備が遅れており、税解釈が多岐にわたることが多いことから納税に対する予見が困難であることが挙げられる。契約書や請求書等の関連証憑の整備や当局への論理的な説明を怠ると思わぬところで追徴税等の税コストがかかる可能性がある。
カンボジア進出検討段階から設立後までの会計・税務業務などをワンストップでサービスする東京コンサルティングファームの西山翔太郎氏は、「カンボジアへの進出において、カンボジアのリアルタイムな状況の変化を知っている必要があります。近年では、縫製業、被服業及び製靴業に従事する労働者における最低賃金が年々増加してきております。また、中国系企業の進出が盛んとなっており、今後、より経済面において制度が取り締められていくことが予想されます。そこで、日本で収集できる情報は時として過去の情報になってしまい、進出の際にトラブルが起きかねません。なので、現地のニュースサイトや専門機関の発信する情報をよく精査する必要があります」と語る。
また、日本人会計士が常駐しリーズナブルな価格でサービスを提供しているSCSグローバルコンサルティング(以下、SCS)の宮田智広氏は、「カンボジアでは税務登録をしていない事業者も多く、そのような事業者へ商品・サービスを提供するにあたり付加価値税分を価格に転嫁できないといったケースや、関税を納付していない事業者との不当な価格競争に晒されるなど、コンプライアンス意識の高い日本企業にとって悩ましい問題が存在するのも事実です。そのため、カンボジアへの投資を検討するにあたり、自社の商品・サービスのターゲット層をとりまく外部環境について有用性のある事前調査を行いプランニングすることが肝要です」と語る。
カンボジアの税務申告業務は近隣他国に比べて煩雑であるのが特徴だ。毎月、月次ベースでの税務申告書類の作成・提出が義務化されており、また年間の法人税額が確定する前段階で毎月納付すべき税金もある。ルールや手続が極めて煩雑である一方、制度自体が未整備なまま急な制度変更が実施される事も多々あり、進出企業を常時悩ますリスク要因の一つにもなっている。
カンボジア初の日系会計事務所であるアイグローカルのマック・ブラタナ氏も、「カンボジアでは過去に遡って課税を受けるというケースがしばしば見受けられるため、今から適切に法令のアップデート並びに適切な納税を行うことが将来のために重要であり、当社はこういった将来のリスクを軽減するため、現在から適切な納税支援を行っていきたいと思います」と話し、カンボジアならではの税務調査に備える必要性を訴えた。
また、東京コンサルティングファームの西山氏は、「毎月作成する財務諸表に関しても、本来は毎月の結果から未来の計画へ繋げる重要な意思決定ツールであるはずが、いつの間にか政府や監査人が納得する形で作成するというネガティブな視点になる傾向があります」と語る。
いずれにせよ、カンボジアの税務の問題点については対応が難しい部分があり、正しい知識を持った専門家に意見を聞くことが大事になるだろう。