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2017年6月29日
カンボジア進出ガイド

【金融・保険】

177 カンボジアの金融・保険②(2017年05月発刊 ISSUE6より)

カンボジアの銀行 Banks in Cambodia

 NBCのチア・チャント総裁のリーダーシップにより、近年のカンボジア銀行業界は急速に発展している。NBCの統計によれば、2016年末時点において商業銀行のライセンスを所有している銀行は36社で、特別銀行のライセンスを所有しているのは15社。総資産額は、前年度比約20%増の238億ドルで、また預金総額は前年度比21.4%増の約137億ドルだった。




 NBCの発表によると、商業銀行36行のうち総資産額上位3行(アクレダ銀行、カナディア銀行、カンボジア・パブリック銀行)で市場シェアの4割を占めており、カンボジア・パブリック銀行のパン氏は、「カンボジアの経済成長を支える重要な役割を果たしている金融業界には、変化に柔軟に対応することが期待されています。銀行業界は、健全な資産成長率と、銀行システムに対する国民の信頼を受け、高い預金成長率を引き続き記録しました。更には、過去数年間における外国商業銀行の開設の増化が、カンボジアへの外国直接投資の信頼を示したと考えています」と述べる。

 またその中で、カンボジア・パブリック銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行の業務提携や、カナディアン銀行と三菱東京UFJ銀行の業務提携、三井住友銀行によるカンボジア最大手行のアクレダ銀行の大株主化など、日系銀行間との関係も深まっている。また、日本語で対応できる日本人デスクを設置している銀行も多く、加えて2017年4月には、日系銀行大手のみずほ銀行がカンボジアに出張所を開設した。

今後の銀行業界 The future of the banking sector



 今後の見通しについて、ANZロイヤル銀行のレスブリッジ氏は、「カンボジアの金融業界は、持続可能で包括的な経済成長に寄与しており、今後も成長は続くでしょう。良好な経済活動により、銀行システムは流動性が高く、健全さを維持しています。一方で、不良債権は非常に少ないですね」と語り、その他銀行もポジティブな見方をしている。NBCのレポートによると、銀行・マイクロファイナンス機関(MFI)はともに非常に高い流動性を維持しており、不良債権はそれぞれ3.5%、1%と極めて低く、継続的・包括的に経済活動の成長に貢献するだろうと報告している。

 預金者保護制度は、銀行が倒産した際に預金者に預金の一部を払い戻す制度で、金融システムが整っていないミャンマーを除いて、カンボジアはASEANで唯一、預金保護が無い国だった。今後はNBCにより、銀行預金者の保護制 度を構築する動きもある。預金者に対しては資産の一部が保護される。国家財政の安定性の観点からも深刻な経済的な影響を防止することができる。

 カンボジア・パブリック銀行のパン氏は、「NBCは金融の安定性を維持し、銀行や他の金融機関の健全性を強めています。NBCのリスクを鑑みた取り組みや、銀行やMFIにおける新しい規定の導入、流動性のある損失負担能力と厳格な監督は、確実に金融部門をさらに強化するでしょう」と語った。

マイクロファイナンス Microfinance


 カンボジアのマイクロファイナンスは2016年、貸付金額と預金額において前年度比45%を超え、爆発的な成長をしている。NBCの統計によれば、2016年末時点においてライセンスを所有しているMFIは69社で、うち預金が可能なMFIは7社。融資業務を行っているNGOを含めると、債権者数は200万人、貸付残高は31億ドルに達し、預金者総数は約160万人、預金総額14億ドルとなった。人気増大の要因について、資金使途が住宅ローンから車両、携帯電話の購入、開業資金まで幅広く、融資金額の幅も広いことが特徴だ。

 しかし、急速な発展にはリスクも伴う。ANZロイヤル銀行のレスブリッジ氏は、「貸出の急成長は、業界の持続可能性に悪影響を与える可能性があり、NBCは流動性と資本金の要件を含むコンプライアンス枠組みを強化し、貸出の伸びを抑制するため活発な役割を果たしています。結果として、市場は、銀行や金融機関の統廃合が促進されてきました」と述べた。




 その通り、2017年3月には香港最大の中華系銀行である東亜銀行(BEA)と、スリランカのスリランカオリックスリースは、カンボジアの最大のMFI、プラサックの資産の大部分を共同で取得したと発表し、2016年1月ハッタカクセカー(当時業界4位)は、三菱東京UFJ銀行の連結子会社、タイの大手銀行アユタヤ銀行の買収に応じている。また2016年4月には日系のマルハンジャパン銀行とサタパナ(当時業界2位)が統合し、サタパナ銀行として営業を開始した。この統合によりサタパナ銀行は、160拠点を有する商業銀行となった。マイクロファイナンスも他の金融機関に続き、合併統合の流れを受けていると言えるだろう。


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