【法務・会計】
税務調査や租税債務の管理強化、追徴課税字等の担当者へのインセンティブ支払制度等の施策を通して各年度財政法にて設定された予算に基づき、政府は徴税体制を強化している。更に主たる施策として、税務登録義務があるにも関わらず登録を怠っている事業者への登録促進、新システム・全納税者の再登録手続の運用強化・電子登録申請制度などのICT化の推進などを進めている。
まずカンボジアでは、税務登録せず、税金を支払わないまま経営を続ける企業が非常に多いことが挙げられる。中小企業に関して言えば、カンボジア中小企業協会連合会のデータによると、カンボジアには50万社もの中小企業があるものの、工業部門においては全体の80%、農業、産業、貿易、サービスにおいては各部門とも全体の約60%の企業しか税務登録していないという。そこで、一向に進まない税務登録を推進するべく、2017年2月に、2018年末までに経済財政省に税務登録した中小企業に対しては2年間の法人税免除が行われるという閣僚会議令が発令された。
この課税免除により中小企業の税務登録が推進され、納税環境を透明かつ公正にすると期待される。辻・本郷税理士法人の菊島氏によると、免税期間中は法人税に加え前払法人税も免税対象となるということだ。
更に、「今、カンボジアの税金は税務署で払うものではなくて、銀行で振り込むものに変わっています。そういう意味では、非常にクリアなお金の動きになりつつありますね」とカンボディアン・インプレス・サービスの安藤氏が話すように、今年2月には国際的金融機関であるANZロイヤル銀行も、全ての支店及びオンラインで現地通貨と米ドルでの納税サービスを開始させた。カンボジアの納税環境の整備に向けて、政府と各銀行が覚書(MOU)を締結し、現在では全6行の銀行が納税サービスを導入している。
こうした政府による徴税体制の整備が影響してか、租税総局の年次報告書によると、2016年の税収は、前年比14.94%増の約14億9000万ドルで、その総額は、2016年に設定した目標の約105.32%となった。更には前年から利益税が18.4%、所得税が20.0%、VATが15.4%、特別税等が23.4%増加している。
カンボジアの税務申告業務は近隣他国に比べて煩雑であるのが特徴だ。毎月、月次ベースでの税務申告書類の作成・提出が義務化されており、また年間の法人税額が確定する前段階で毎月納付すべき税金もある。ルールや手続が極めて煩雑である一方、制度自体が未整備なまま急な制度変更が実施される事も多々あり、進出企業を常時悩ますリスク要因の一つにもなっている。
辻・本郷税理士法人の菊島氏は、「税務に関する最近の変更点として、税務期限の変更、給与税の規定変更が挙げられます。まず、月次税務申告納税期限が変わりました。従前においては、月次納税期限は毎月翌15日でしたが、2017年1月より翌20日に変更されました。申告書の提出期限についても、従前は実務上月末までに申告書を税務局に提出することで特に問題はありませんでしたが、申告書提出も翌20日に変更となりました。納税が5日延長になったにも関わらず、申告書作成・提出も同時期に終わらせなければならなくなり、税務手続き全体としてスケジュールがタイトになったと言えるでしょう」と語った。
他の制度変更として、去年から税務のサポートを行うTAX Agent License、税理士資格ができた。カンボディアン・インプレス・サービスの安藤氏は、「今年に入って、税金関係の業務を扱う会社は、TAX Agent Licenseの取得が義務付けられています。これはかなり罰則が厳しく、資格のない税務コンサルに頼んだ場合、頼んだ側も受けた側も罰則が適応されるという内容です。今後、税務はますます厳しくなるでしょう。例えば2年前まで存在していたみなし税、推定課税方式も去年から廃止されています。(会計帳簿資料について)この国は10年間の保存義務があり、10年前に遡って税務調査が入ります。なるべく早い段階で、後で調査を受けても良いような状態にすることをおすすめしますね」と説明する。
アイグローカルのブラタナ氏も、「カンボジアでは過去に遡って課税を受けるというケースがしばしば見受けられるため、今から適切に法令のアップデート及び適切な納税を行うことが将来のために重要であり、当社はこういった将来のリスクを軽減するため、現在から適切な納税支援を行っていきたいと思います」と話し、カンボジアならではの税務調査に備える必要性を訴えた。
カンボジアの税務の問題点については対応が難しい部分があり、正しい知識を持った専門家に意見を聞くことが大事になるだろう。