【建築・内装】
カンボジアの建設業界は年を追うごとに急速に変化している。国土整備・都市化・建設省が最近発表した報告書によれば、2000年から2016年8月までの間、15カ国から、投資総額は約43億ドル、284件の建設・不動産プロジェクトへ費やされた。国別では中国からの投資額が最も多く、第2位は韓国、第3位は日本だという。なお、2016年8月現在、プノンペン都内で新たに61棟が建設中だ。
また、経済財政省の統計によると、カンボジアの建設ブームによるプノンペンでの過剰供給と需要下落が原因で、新規の建設は今後5年間減速が続くとしている。同省は、建設部門における成長率が2015年19%の伸びに比べ、2016年は15%の成長を見込んでおり、また2017年は12.4%、2018年10.3%、2019年には10.0%と減速を予測した。
建設会社、サプライヤー、不動産会社など60社以上が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コントラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は、「多くの投資家が既にこれまでの数年で仕掛けた各案件に着工しているおり、同セクターは健全な成長を示しています。案件のほとんどは2018年までの完成を計画しているものです」と話す。
多くの国際的な建設関連会社が、駐在員事務所の設立や正規代理店を通じてカンボジアへ進出しており、建設関連の製品は低価格から高価格帯のものまで幅広く手に入るようになった。一方、市場の競争はより厳しくなっており、部材の価格競争も激しさを増している。
C&Pのミース氏は、「既にいくつかの先進的なサプライヤーの中には、先進技術を活用する等して、クライアントが競争優位性を保つ上で役立つサービスをパッケージ化して提供しています。価格的な競争力だけでなく、新たな価値の提案が求められています。また、多くのサプライヤーがより高品質の製品を供給できるように動き始めています。コンドミニアム、アパートメント、ホテル、集合住宅建設のような大規模な建設案件に加え、今では戸建て住宅の建設案件でも品質の高い製品を求め始めていることが理由です」と語る。
2016年8月、既に進行中だった複合施設、「ザ・ベイ」の建設計画(総事業費5億ドル・6棟・2000戸以上)が、過剰供給リスクの高まりから建設中止となった。CBREのレポートによると、コンドミニアムの供給は2015年にかけて22.4%増加したが、2018年には実に794%増の19,018戸が追加されることから、2018年末までに合計すると21,414戸となる見込みだ。また、センチュリー21カンボジアの調査でも、2020年までにプノンペンで、110件のプロジェクト(合計148棟、約3万6000戸)が竣工の見込みであり、供給過剰が見られる。センチュリー21カンボジアのクィ・ヴァットCEOは、「供給過剰について明確な情報はないが、ただ今後3年間、投資家を誘致するのは非常に困難だと言える」と述べている。
また、経済財政省のアウン・ポーン・モニロット大臣は、「供給過剰は経済リスクの要因となり得ることから、建設部門の減速し調整に入ることはカンボジア経済にとって良いことだ」とクメールタイムズ紙に話している。
センチュリー21・メコン、CEOのチレク・ソクニム氏は、「カンボジアで困難なのは、開発業者がただプロジェクトを発表した時点で、多くの人々がデポジットを払って売買契約を結んでいる点です。だから開発業者は自分たちの資金ではなくバイヤーたちの資金を使うのです。現在と2018年ごろの人々は違っていると思います。開発業者は生き残りたければ70%はプロジェクトに投資するべきです。そうすれば開発業者はバイヤーへ多種の販売スキームを提案できるでしょう」と購入者の意識の変化に対応できなければ生き残れないと予想している。
しかし一方で、プノンペンの中間所得層の収入増加により、ボレイと呼ばれる戸建住宅街の開発が急成長している。国土整備・都市化・建設省の報告によれば、2016年1~7月の間に、1億6900万ドル・38万平方メートルに相当する234のボレイ建設計画があるという。
プノンペン都南部に50ヘクタールものボレイ計画を進め、2017年に第1段350戸を売り出す予定のソナトラグループの永田哲司氏は、「コンドミアムに比べると、ボレイ自体はまだ売れています。コンドミアムはローカルの人は買いませんから、頼みの綱は外国人投資家です。しかし、ボレイは未だにローカルの人がすごく好きなマーケットです」と語る。
世界銀行の統計(2013年)によればカンボジアの都市人口割合は20.3%とASEAN諸国中最低のため、中長期的にプノンペンの都市化率が更に上昇することが予測される。
居住者の保健性、快適性、利便性、安全性などを確保するため、または工場の場合は生産性の確保のため、空調設備や給排水設備はもちろんのこと、電気設備や防災設備など、建築設備は多岐に渡る。
自身もエンジニア出身で高度な技術を得意とする建築設備会社、ロータスグリーン・チームのホン・リー・イー氏は、「ターゲットであるアッパー層の高い要求こそ私たちが上昇を続ける理由にも繋がっています。初めに請け負った仕事はシェムリアップの電気設備で5千ドル程度でした。しかし技術には自信があったので、小さな仕事を完璧に仕上げ、その仕事ぶりを実際に見てもらい、小さなところから技術力を示すことで信頼を築きました。そのうちに、他の箇所も依頼されるようになり、今ではプノンペン空港の大きいプロジェクトを任されるまでになっています」と語る。建築設備においても品質の高い提案や供給が求められている。