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2017年1月4日
カンボジア進出ガイド

【法務・会計】

143 カンボジアの法律・税務・会計②(2016年11月発刊 ISSUE05より)

租税緩和化の動き  Tax Incentive for Companies

 2016年8月、カンボジア経済財政省は教育事業に適用する税務上のインセンティブにかかる省令を公布し、教育事業にかかる事業者は2018年度末までミニマム税、前払法人税の免税、また教育サービスの提供に直接関わり発生する源泉税等が免除さることとなった。



 また、現在、税務総局は収益に対して1%課税されるミニマム税の制度を一定の条件で撤廃することを検討している。辻・本郷税理士法人の坂本氏は、「ミニマム税があるために、当期利益が出ていない赤字企業も収益が発生していれば納税義務があり、企業にとって負担になっていましたが、撤廃されればキャッシュフローや収益に対して大きな影響を与えることになり、撤廃が期待されます」と話す。アイ・グローカルの本庄谷氏は、「従業員に対する給与以外の諸手当を対象に一律20%課税する付加給付税について、新たに経済財政省令が発行されました。これは、事前届出を行った企業を対象に、省令で定められた諸手当に対して給与税も付加給付税も課税しないというものです」と話す。

 カンボジアの税制の煩雑さや、企業にとって理不尽にも映る追加課税リスクは、しだいに進出企業に認知されるようになってきており、カンボジア政府は外資企業の進出インセンティブを過度に阻害することがないよう、対策を取り始めているようだ。

規制が強化されている労働許可 Working Permit

 法律運用面では、従前は現地商慣行のように言われたアンダーテーブルによるやりとり等は減少傾向にあるようだ。辻・本郷税理士法人の坂本氏によると、「カンボジアだからといってお金等で解決できるということは無くなってきています。まだグレーの部分もありますが、黒白はっきりとしている部分も多くあります」と語る。

 従来はあまり厳しく規制されていなかった対象も昨今では厳しくチェックされるようになってきている。マー&アソシエイツの村上氏は、「会社設立にあたっては商業省と経済財務省への登録申請が必須ですが、労働省での手続を行っていない会社が多く見受けられます。労働省の方もその事実を把握しているため、今年、罰金負荷制度を強化する労働省令を出し、それに伴って労働省単体もしくは移民局との共同での監査を頻繁に行っています。監査時点で会社が行うべき手続を終えていなかったり、ワークパーミットを取得していなかったりする場合は罰金の対象となります。企業としては、コンプライアンス意識を高め、今のうちにしっかり手続きを済ませておくことをお勧めします」と付け加えた。

新労働組合法 The role of legal advisory firms

 以前は、労働組合の登録義務があっても条文が充実しておらず、労働省からのガバナンスが利かない状態だった。新労働組合法では、全ての労働組合に労働省への登録義務を定めており、投資家を念頭に置いた法律と言える。

 マー&アソシエイツの村上氏は、「一般に労働組合法の目的は、労働組合を組織することで労働者側に交渉力を持たせ、労使間の立場を対等にすることにあります。今回のカンボジアにおける労働組合法の目的は、上記目的に加え、投資の促進をも目的にしている点に特徴があろうかと思います。投資家としては、労働組合による違法な労働紛争が多発しているとなれば、投資に対して消極的になってしまうので、そのような事態を招かないよう、労働組合の違法な活動を規制することが期待されます」と語る。

 2015年、某日系企業の工場で、既に社内で労使合意したにもかかわらず、外部ユニオンが大音響の演説と音楽による扇動騒動を繰り返し、業務妨害を受る事件がおきた。しかし、州や市は妨害行為を排除せず、外部ユニオンとの新労務合意を勧告した。外部ユニオンが門扉の外で放火を起こしたため、当該企業は中央政府と日本大使館に通報。現在、外部ユニオンへの損害賠償請求は一審判決で勝訴となっている。部外者が参入する違法ストライキの存在は大きな脅威だ。


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