【人材・コンサル】
(123 カンボジアのHR・コンサル①の続き)
CDLの鳴海氏は、「職種別・職階別の平均月給(最終月給)を比較すると、接客の職務に携わる者はどの段階でも比較的低給であり、またセールス職では一般スタッフは比較的高給ではあるものの、総務的部署に異動する等により職務が変わらなければ、昇格してもマネージャークラスで給与は伸び悩む傾向があります」と語る。
また、「業界別の平均月給を比較すると、物流業はほかの業種と比べて高給ですが、マネージャークラスになると比較的低給になります。これらの統計は日系企業に限らず、全ての国籍の企業の平均の調査であり、一般スタッフなら業種によってかなりのバラつきがあるものの、大体200ドル前後です」と同氏は続けた。
一方で日系企業だけの場合、2014年のJETROの調査では非製造業の一般職で332ドルという結果が出ており、100ドル以上の差がある。調査主体が相違するため一概には言えないが、可能性として大きい原因の一つは、日系企業には日本語人材が雇用されているからだと言えよう。
日本語人材の相場給与は、30歳以下、プノンペン在住者の希望月給で、日常会話レベルで370.7ドル、ビジネス会話レベルで745.5ドルだ(CDL公表数値)。日常会話レベルは希望月給で対前年度6.5%上昇しているものの、最終月給で3.6%の上昇に留まっている。ビジネス会話レベルは一昨年に引き続き20%以上伸びており、比較的高給である日本語人材の中でも二極化が進行している。
この数値は日本語と英語以外の言語が話せる客体は除外しているため、中国語やタイ語などの第三言語の能力を有する人材であれば、さらに高額になることが予想される。
CDLの分析によれば、日本語人材の英語能力が日常会話レベルの場合とビジネス会話レベルの場合とでは、月給額に大差はなかったとしている。つまり、日本語人材の月給額を決定している主な要素は、あくまで日本語能力であると言える。日本語人材は就業未経験でも250ドル以下で採用することは極めて難しい。
ローカルの日本語人材は、供給不足から英語人材と比較して賃金に倍の開きがあるといわれており、例えば、英語人材なら日常会話レベルで180ドル~、ビジネス会話レベルで300ドル~だ。日本語人材の給与の高止まり等を背景に日本語の学習熱は高まっているが、労働市場に供給されるには当分先となる。さらに言語習得スピードが遅く、就学時間の割には伸び悩む傾向があることから、歪な需給バランスは続くだろう。
また、日本語能力検定は一級、二級といった段階制で合否を決定するが、三級合格者が二級合格者より言語能力が上というケースも散見されるのは、筆記試験のため会話能力の測定が困難だからだ。また、言語能力以上の給料を高望みする日本語人材が存在するのは、給与相場に無知というより自身の言語能力を客観的に判断できていないことに起因し、このことは言語能力の向上を阻害する要因ともなり得る。
カンボジアの日本語教育の祖とも言うべき存在のサクラ・ヒューマン・トレーニングの大石安慧氏が実施しているビジネス日本語検定について、「試験のやり方としては、聴解や読解など全て踏まえていますが、初級・中級・上級というように試験内容を分けていません。同じ試験問題を全員が受験することで、能力の判定が公平に行えると考えています。ビジネスの現場も初級や中級などと別れているわけではありませんからね。ビジネス活動が本当にできるかどうかが大事。やはり、高得点をとった分、自信が湧きますから本人たちの自覚も違ってきます」と語り、カンボジア人の仕事と語学習得のモチベーション向上に繋がればと抱負を語った。
求人方法にはラジオ、新聞、フェイスブックや求人サイトの利用、知人やスタッフからの紹介などの方法がある。カンボジアで最大の閲覧数を誇る求人サイト「カムHR(CAMHR)」では、求人情報の掲載だけでなく、データベースにアクセスして求職者データを閲覧することができ、求職者は直接応募することも可能だ。
カムHRの温小勇氏は、「私たちのサイトの閲覧数は毎月300万にもなります。そして求職登録者数は4万人以上います。カンボジアで最も大きく、人気のウェブサイトです。そして我々はこの分野にだけ焦点を置いています。現在は他にもたくさんの競争相手がいますが、同業のボントムを除いて、それらの閲覧数はカムHRより非常に低いです。私たちはオンラインサービスで85%以上の市場シェアを持っている、つまり求職者の85%がカムHRに登録しているということです」と語る。
スタッフの募集に際し、時間的な余裕がある場合には、市内で開催される就職説明会に有料で参加することもできる。やや郊外に位置するCJCCでは、定期的に日本企業向けの就職説明会を開催している。就職説明会に参加を希望する場合には事前にCJCCへ所定の申込手続と参加費の支払いをする必要がある。
また、募集や面接の作業には多大な労力と時間的コストを費やすため、人材紹介会社にアウトソースすることも有効だ。報酬は採用した人材の月給の2か月分。採用が決定して初めて課金される成果報酬制が主流で、紹介した人材が早期退職した場合は、手数料の返還や代替候補者の紹介などの保障がある。「人材紹介会社を利用するメリットとして、突発的な採用業務による平常業務の停滞防止や、不適合者の登用がもたらす人的リスクの排除などが挙げられます」とCDLの鳴海氏は語っている。
(125 カンボジアのHR・コンサル③へ続く)