【建築・内装】
(118 カンボジアの不動産②から続き)
カンボジアの建設業界は年を追うごとに急速に変化している。2015年の建設投資額は約33億ドルで、対前年比32%増と堅調に伸びた。建設会社、サプライヤー、不動産会社など60社以上が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コントラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は、「多くの投資家が既にこれまでの数年で仕掛けた各案件に着工しているおり、同セクターは健全な成長を示しています。案件のほとんどは2018年までの完成を計画しているものです」と話す。 多くの国際的な建設関連会社が、駐在員事務所の設立や正規代理店を通じてカンボジアへ進出しており、建設関連の製品は低価格から高価格帯のものまで幅広く手に入るようになった。一方、市場の競争はより厳しくなっており、部材の価格競争も激しさを増している。
C&Pのミース氏は、「既にいくつかの先進的なサプライヤーの中には、先進技術を活用する等して、クライアントが競争優位性を保つ上で役立つサービスをパッケージ化して提供しています。価格的な競争力だけでなく、新たな価値の提案が求められています。また、多くのサプライヤーがより高品質の製品を供給できるように動き始めています。コンドミニアム、アパートメント、ホテル、集合住宅建設のような大規模な建設案件に加え、今では戸建て住宅の建設案件でも品質の高い製品を求め始めていることが理由です」と語る。
CBREのレポートによると、コンドミニアムの供給は2015年にかけて22.4%増加したが、2018年には実に794%増の19,018戸が追加されることから、2018年末までに合計すると21,414戸となる見込みだ。コンドミニアム計画の大半は中級及び高級タイプで、2018年までにはそれぞれ全体の44%と42%を占めるという。
クメールタイムズ紙によると、CBREカンボジアのマネージャー、クリス・ホブデン氏は、2015年にプノンペン市内に建設されるコンドミニアム計画の多数が前売りを始めたが、今のところは適正価格で需供の面でもバランスがとれていたが、向こう先5年は供給過多になると話している。
センチュリー21・メコン、CEOのチレク・ソクニム氏は、「カンボジアで困難なのは、開発業者がただプロジェクトを発表した時点で、多くの人々がデポジットを払って売買契約を結んでいる点です。だから開発業者は自分たちの資金ではなくバイヤーたちの資金を使うのです。現在と2018年ごろの人々は違っていると思います。開発業者は生き残りたければ70%はプロジェクトに投資するべきです。そうすれば開発業者はバイヤーへ多種の販売スキームを提案できるでしょう」と購入者の意識の変化に対応できなければ生き残れないと予想している。
一方で中長期的な視点で捉えると、日系発のコンドミニアムプロジェクト「ボダイジュ・レジデンス」を発表した不動産会社クリードの約仕知宏氏は、「現在プノンペンでは、コンドミニアムはオーバーサプライといわれていますが、我々としては、プノンペンにおけるコンドミニアムマーケットはまだまだ始まったばかりだと思っています。一見供給が多いように見えますが中期的に見て十分に需要は追いつくでしょう。エリアに関係なく全体的にまだまだ伸びしろがあると思います」と語る。世界銀行の統計(2013年)によればカンボジアの都市人口割合は20.3%とASEAN諸国中最低のため、中長期的にプノンペンの都市化率が更に上昇することが予測される。
居住者の保健性、快適性、利便性、安全性などを確保するため、または工場の場合は生産性の確保のため、空調設備や給排水設備はもちろんのこと、電気設備や防災設備など、建築設備は多岐に渡る。
自身もエンジニア出身で高度な技術を得意とする建築設備会社、ロータスグリーン・チームのホン・リー・イー氏は、「ターゲットであるアッパー層の高い要求こそ私たちが上昇を続ける理由にも繋がっています。初めに請け負った仕事はシェムリアップの電気設備で5千ドル程度でした。しかし技術には自信があったので、小さな仕事を完璧に仕上げ、その仕事ぶりを実際に見てもらい、小さなところから技術力を示すことで信頼を築きました。そのうちに、他の箇所も依頼されるようになり、今ではプノンペン空港の大きいプロジェクトを任されるまでになっています」と語る。建築設備においても品質の高い提案や供給が求められている。
(120 カンボジアの建築・内装②へ続く)