【医療・医薬】
(096 カンボジアの医療・医薬③から続き)
医薬品のほとんどを輸入に頼っているカンボジアでは、西洋諸国で流通している薬剤を使うことが多いため、処方を間違えば日本人の体には効果が強すぎることもある。サンインターナショナルクリニックの久保医師は、「当院では日本製の医薬品をなるべく取り揃えており、やむなく海外の薬を処方するときには、日本での内服量に準拠した処方を考えています」と語っている。 症状や体調により、適切な処方をしてくれる信頼できる医療機関選びをしたい。
カンボジアの労働法では、労働者の安全確保・健康維持や職場環境の整備に関して雇用者が順守すべき内容が定められている。例えば、機器・設備・道具を安全な状態で設置・維持すること、衛生的な飲料・食事を用意すること、業務中・通勤中に発生した事故・病気について必要な医療を提供すること等がある。また、50名以上を雇用する雇用者は、20㎡以上の診療室を設置する義務があり、労働者の人数に応じて必要な医療者数・ベッド数も定められている。労働監督官による監査も行われるが、その基準は業種ごとに異なっている。日系医療機関の進出支援を行なうメディエル代表の佐藤創氏は、「実際にはこれらの条件をすべて満たしている企業は少ないのが現状ですが、近年労働省の監査が強化され、指導が入ることが増えています。日系企業、特に工場において徐々に労働環境を整える動きが出始めているように感じます」と語っている。事前対応で労働環境を整備することが求められている。
カンボジアでは日系の医療機関(クリニック・歯科クリニック)が10以上開設されているが、その多くはプノンペンに集中している。サンインターナショナルクリニックの久保医師は、「日本の医学研究や医療技術は世界最高水準であり、最先端でかつ費用対効果の点で海外でも通用する分野は内視鏡、再生医療、核医学、介護などです。患者に負担が少ない患者にとってやさしい治療が多く、高コストではありますが世界各国から導入を求められています。日本の医療の特徴である手厚い患者マインドに立った医療で、かつ費用対効果の面でも海外で通用する医療を確立するために日本の医師免許で医療が行えるカンボジアに進出しました」と進出理由を述べている。
一方で、メディエル代表の佐藤氏は、「今後も日系の医療機関の進出が複数予定されています。また、カンボジア現地系の病院でも、最新設備を導入して建物を拡張する病院や分院を出す病院が増えてきています。カンボジアの医療環境はさらに早いスピードで変化していくでしょう」と語った。2016年には大型の日系救急救命病院「SunriseJapan Hospital Phnom Penh」の開設も予定されており、より安心して治療を受けることができる環境が整ってきている。
(098 カンボジアの公的機関へ続く)