【金融・保険】
(073 カンボジアの金融&保険①から続き)
カンボジア人の着実な核家族化の進行を背景とした住宅需要の増加に伴い住宅ローンの利用者が増加しているが、銀行間の競争により住宅ローンの金利は以前より低下している。住宅ローンを利用するには、土地権利証(ハードタイトル)や定期預金などの担保が必要だが、一部の銀行は不動産開発業者との提携や、ソフトタイトルを担保として認証するなど、銀行間のサービス競争が利用者にとって良い環境をもたらしている。
ANZロイヤル銀行の山口紗世氏は、同行が多くの日系企業に選ばれている理由として三つのポイントを挙げた 。「一つ目は、国際的信用がある金融機関であること。二つ目は、親会社や統括オフィスなど国外に幅広いネットワークを持ち、カンボジア国内でも現地のマーケットに関して深い知識をもつローカルパートナーを持っていると。そして三つ目は、法人用インターネットバンキングの利用が可能なことです」。同行のオンラインプラットフォーム(法人用インターネットバンキング)はセキュリティレベルが高く機能も多様なため、法人の顧客から支持されていると語る。
また、カンボジア・パブリック銀行のパン氏は、「当行では上質な顧客サービスの提供に重点を置いています。特に支店窓口での迅速なサービス提供は折り紙付きで、原則5分以内の待ち時間にてご案内するよう心がけており、本店担当部署からも細かくチェックしています。2014年実績は85%のお客様を5分以内にご案内することができました。更に一部支店に苦情対応も行うサービスアンバセダーを設置し、経験のあるサービスクラークがお客様の細かなニーズをくみ取り、ご案内しています。顧客サービスだけではなく銀行業務にも満足していただけるよう、銀行業務のマネジメントリスク計画も制定し、社内で定期的に見直し、各部署で共有して毎日の銀行業務に活かしています」と語った。
カンボジアに進出する企業が銀行を選ぶポイントは、その企業の事業内容や経営方針により異なるが、国際標準の金融基準を適用しているか、現地でのビジネスに精通しているか、十分な資金を持っているかなどを踏まえ、安心して気持よく利用できる金融機関を選ぶべきだろう。
日本では当たり前となっているインターネットバンキングサービスも、カンボジアでは一部の銀行にしか導入されていないため、送金や入出金明細の確認などの日常的な作業について不便に感じることだろう。
カンボジア・パブリック銀行のパン氏は、「当行では定期的なバンキングシステム更新のほか2014年にクレジットカードの電子取引明細書を導入しました。普通預金、貯蓄預金、定期預金の管理では3Dセキュア(本人認証サービス)・ワンタイムパスワード(OTP)を導入しています。また、インターネットバンキングの利用時には携帯電話へワンタイムパスワードを送信することでセキュリティの向上に努めています。海外送金、新規の定期預金契約、小切手発行時等は更なるセキュリティ対策を講じています。2015年6月末現在、インターネットバンキングの利用者が対前年同期比で23%増加しています」と答えた。
ANZロイヤル銀行の山口氏は、「カンボジアで唯一、国際基準のセキュリティを備えた法人オンラインのプラットフォームが使えます。日系のお客様の場合、設立段階であったり、複数の国を担当されていたり、カンボジア以外の国や本社に本格的な財務を置いていたりと、あらゆる状況でカンボジアへ進出されています。そういったお客様のあらゆる状況に応じ、本社や地域統括、出張先からの送金指示ができるという利便性があります。また、オンラインを使うと取引履歴を詳細に辿ることができ、監査にも非常に有効です。当行では、入金の確認なども、オンタイムで確認でき、入金があったときに自動的にメールを送ることもできます。お客様のご要望に出来るだけ応えるように、ミスや時間のギャップを減らすためプロセスを自動化しています」と語る。
英語が不得手であったり、日本語対応を望む場合には、ジャパンデスクを設置している銀行を選択すると良い。ただし、カンボジアにおける直接投資額が下位であり、在留法人数も少ないなかで、日本語対応が可能な銀行の存在は貴重である。
なお、総資産額上位4行は日本語によるリレーションシップが可能な体制を整えている。
ANZロイヤル銀行の山口氏は、「実際にお客様とお会いする時は、口座開設や日々のお取引の手続きだけでなく、これからどういう事業をするのか、どのようなご苦労があるのかなどを必ず聞いて、当行が持つネットワークや情報を共有させて頂けるように努めています“。リレーションシップバンク“を目指している当行は、お客様それぞれのビジネスを理解することを大切にしており、常にお客様にとってパートナーでありたいと思っております。」と話した。
(075 カンボジアの金融・保険③へ続く)