【医療・医薬】
(058 カンボジアの医療&医薬②からの続き)
当地では日本とは違う環境であることを踏まえた健康管理が必要になる。蚊などに媒介されるウイルスや感染症、細菌・寄生虫による急性胃腸炎や生水にも注意が必要である。ケン・クリニックの奥澤医師は、「受診される方でよくある病気や外傷は、かぜや急性胃腸炎、デング熱、チクングニア熱が多いです。また、インフルエンザや、ひったくりや交通事故による傷・骨折・捻挫なども多いです。デング熱は蚊に刺されないようにするしか予防法はありません。プノンペンにはマラリアを媒介する蚊がほとんどいませんが、逆にデング熱は都会に多い蚊です。蚊だけではなく、虫刺されで来院する方もいます。ダニ・シラミ・アリなど、朝起きたら刺されていたということがあります。さらに、こちらでは結核を患う方も多く、日本では入院し、隔離が必要な病気を患った患者でも外を歩いていたりします」と語っている。また、サンインターナショナルの荒木医師も「カンボジアではまだ風土病も多く、市内で赤痢、コレラ、食中毒、デング熱なども身近に見かけます」と注意を呼びかけている。
インターナショナルSOSのウェビン医師は「衛生環境に配慮し、手をしっかり洗い、食べ物の調理をしっかりすることです。ローカルの飲食店や市場では適切な衛生処理が行われていない場合が多いので、調理済みの料理を放置したり、料理人が十分に手洗いをしない、調理用具を十分に洗わないような飲食店の利用は避けましょう」と注意を呼びかけている。また、野菜は煮沸するかよく洗い、寄生虫の卵などを口にしないよう注意も必要。さらに熱中症などにも注意が必要で、強い日差しに当たりすぎないことも大切だ。サンインターナショナルの荒木医師は「特に男性にですが、中性脂肪や尿酸の異常に高い人が多く見られます。血管が硬くなったりつまりやすくなったり、痛風や糖尿病に繋がるため、毎日の食事の総カロリーや栄養素について、時々見直しをすることが大事です」と食事管理の必要性を述べている。また、少なくとも年に1回の健康診断によって健康状態を把握することも重要である。
カンボジアの労働法では、労働者の安全確保・健康維持や職場環境の整備に関して雇用者が順守すべき内容が定められている。例えば、機器・設備・道具を安全な状態で設置・維持すること、衛生的な飲料・食事を用意すること、業務中・通勤中に発生した事故・病気について必要な医療を提供すること等がある。また、50名以上を雇用する雇用者は、20㎡以上の診療室を設置する義務があり、労働者の人数に応じて必要な医療者数・ベッド数も定められている。労働監督官による監査も行われるが、その基準は業種ごとに異なっている。産業医・看護師などの医療人材紹介サービスを提供するメディエル代表の佐藤 創氏は「実際にはこれらの条件をすべて満たしている企業は少ないのが現状ですが、近年労働省の監査が強化され、指導が入ることが増えています。日系企業、特に工場において徐々に労働環境を整える動きが出始めているように感じます。」と語っている。事前対応で労働環境を整備することが求められている。
(060 カンボジアの医療&医薬④へ続く)