【建築・内装】
カンボジアは建設ラッシュの真っただ中だ。プノンペンポスト紙によれば、昨年7月の選挙後の不透明な政治情勢にもかかわらず、2013年の建設投資は前年比36%増加したと国土管理・都市計画・建設省建設部のラオスチップ・セイハー氏は語っている。同省のデータによれば、2013年は1,641件のプロジェクトが承認され、総面積750万㎡、総額28億ドル。 2012年は1,694件のプロジェクトが承認され、総面積650万㎡、総額21億ドルだった。
66社もの建設会社、サプライヤー、不動産会社等が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コントラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は「家賃などを含めた不動産価格はいまだに周辺国と比較して安価なままです。タイやベトナムなどと比べると、政治の安定性、低賃金、チャイナプラスワンなど、ビジネス的な優位性はカンボジアへの投資の引き金となっています」と語る。
プノンペン市内のいたる所で大小さまざまな建設中の建物や、完成予想図の広告看板を見ることができる。C&Pのミース氏は建設業界の将来について、「もし政治の安定性が保証されれば、約7%の年間経済成長率も保たれ、建設業界も健全なスピードで発展していくことと思います。どのプロジェクトも需要を基礎として進んでいくでしょう」と続けた。
カンボジアではレンガを積み上げた建物をよく見ることができる。耐久力の強いレンガだが、建設費の上昇、労働力不足、技術の進歩を背景に、耐久性が高く未熟練労働者でも施工可能なプレキャストパネルが注目されつつある。レンガの壁は1㎡あたり1時間を要するが、プレキャストパネルは同じ時間で6㎡を設置できるからだ。しかし一方で、生産工場からの輸送コストや悪路による破損リスクが課題である。
大型案件を数多く手がけるカナディア財閥系の建設会社、オーバーシーズ・カンボジア・インベストメント(OCIC)のトゥーチ・サムナン氏は「地価が高騰しているので、将来的には高層のコンドミニアムの需要が増えると考えています。このような需要に応えるため、いかにして早く建てられるかというのが課題となってきています。私たちは他国の先進的な施工法を学びながら将来に備えています」と語る。
また、これまでは地価よりも地階を作るコストの方が高かったため、地階はあまり作られてこなかった。しかし、現在では地価が高騰しているため、プノンペン中心部では地階を持つ建物も多くなってきている。
BDリンクの報告書によれば、2007年から2011年の5年間の建設労働者の賃金動向では、名目賃金が非熟練労働者で78%上昇している。そのほか、セメントや鉄などの資材など、あらゆる価格の上昇によるコスト面の変化、地価の高騰により戸建てが持ちにくくなったことから需要の変化が起きている。OCICのトゥーチ氏は「価格の話をするならば、10年前と比較してまず労働者の賃金が違います。当時は日給にして1.5ドルほどだったものが現在では5ドル程度になっています。セメントや鉄などの資材の価格も上がっています。また、需要にも変化が見られます。10年前はアパートメントの需要は多くありませんでしたが、現在ではかなり多くなっています。土地の価格が高騰して、個別の住宅を持てなくなってきていることも理由の一つでしょう。世代間でも需要の差はあります。若い世代はアパートメントに抵抗が無いようですが、年配の世代には戸建ての方が良いという方々が多いようです。現在は90%が戸建て、10%がアパートメントですが、近い将来は需要が逆転すると思います」と語る。