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2014年10月31日
カンボジア進出ガイド

【法務・会計】

001 カンボジアの法務・税務・会計①(2014年9月発刊 ISSUE01より)

法律の整備と運用

 後発開発途上国カンボジアというイメージやメディア情報が外国人に与える印象に比べ、各種法律の整備はそれなりに進んでいるという。
 カンボジアで20年以上の歴史を持つ、シャーロニ&アソシエイツのブレットン・G・シャーロニ氏によると「塩漬けにされた古い司法制度以外、何の土台もない所から始まったことを考えると、カンボジアの法整備はそれなりに改善したと思います。各事業分野の活性化の度合いによるばらつきはありますが、例えば金融関連の法整備は目覚ましく発展したと思います。 世界銀行やIMF(国際通貨基金)、ADB(アジア開発銀行)等の技術的指導の成果もありました。私たちの顧客である国際的な銀行家も、その整備状況の改善に驚くことがあります。外国人はさまざまなメディアの影響からカンボジアは無法地帯であろうという誤った情報を持ったまま来ることがありますが、私は顧客にこの国で法律を無視することはできませんとお伝えしています」。

 カンボジアの法律の多くは、実質的には外国人法律専門家の手によって作成されている。日本も1999年から継続して、政府開発援助(ODA)の一環である「技術協力」という形で、実際に裁判官・弁護士・司法書士などの日本人法律専門家を国際協力機構(JICA)を通じて派遣し、カンボジアの民法・民事訴訟法をはじめとする民事関連法令の起草・成立の支援を行っている。先進国の支援もあって法律そのものはしっかりと作られているわけだ。
 多くの現地専門家が口を揃えて語る諸問題の根源は、法律の「整備状況」よりもむしろその「運用状況」だ。カンボジアだけでなくラオスでも活躍するJBLメコンの薮本雄登氏は「例えば不動産登記や商標権に関する法律はきちんと存在しています。ですが、その法律が現実には適切に運用されていない、というのが実態です」。と語っている。

会計事務所

 カンボジアには、KPMGやPwC等の国際的な会計事務所のほか、日系会計事務所等が存在し、税務申告、記帳代行、登記関係業務等のサービスを提供している。JETROプノンペンのコーディネーターを兼務しているKPMGのマネージャー、田村陽一氏は「カンボジアでは源泉徴収税やフリンジベネフィットタックス、ミニマムタックスといった日本では一般的でない税金がかかります。信頼できる専門家のサポートがなければ、税金の仕組みを理解し税務リスクを十分に低減するのは簡単ではないでしょう」と述べている。会計事務所の中には、日本語が話せるスタッフが定期的に顧客を訪問し、記帳代行やトレーニングを行うといったきめ細かなサービスを用意しているところもある。

税務について

 特に多くの進出企業が直面するのは、法律と会計が交差する「税務」に関する諸問題だ。税法を運用する「税務署」の実態こそが諸問題の根源、とも言える状況のようだ。4大国際会計事務所の一つであるKPMGのシニアパートナー、マイケル・ゴードン氏は「重要なのは、投資家はカンボジアがまだ発展途上にあると意識することです。全ての分野の手続きやシステムが十分には整備されておらず、税法の運用にも同じことが言えます。現在の税金の仕組みや税法は、1960年代から70年代に作られた初歩的な税法を基にしています。細かい定義や説明がない部分も多く、租税裁判所もない。租税に関する決め事は基本的に税務総局に決定権があるような状況です。この十年間、税務総局の法解釈に起因する問題は頻繁に起きています。日本のような先進国の投資環境は法令やルールがしっかりしていますが、カンボジアには一切ないと考えてほしい。ビジネス上のリスクをしっかりと把握し、適切に対処しながら投資をすることが重要です」と語った。


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