カンボジアに進出する日系企業のための
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Chea Sophara国土整備・都市化・建設相 インタビュー
(2017/11発刊7号より)

チア・ソパーラ―大臣写真

チア・ソパーラ大臣が語る

歴史からの再興を遂げた
カンボジアの可能性

観光業と国民の住宅への需要により、建設業は発展を遂げる

―――カンボジアの都市開発、その発展について、現状を詳しく教えてください。

 まず、カンボジアビジネスパートナーズの雑誌に取り上げて頂き、ありがとうございます。

 カンボジアの建設分野は非常に発展しており、カンボジア経済を支える重要な分野として高いポテンシャルを秘めています。建設分野の発展により、カンボジア国民のGDPも向上しています。これもひとえに、これまで平和を築いてきたカンボジア政府の成果だと感じています。

 今後も建設業が成長していくために、考慮すべき点が2点あります。それは観光業とカンボジア国民の住宅に対する需要です。

 カンボジアは2016年、海外から500万人の観光客を迎えています。観光客の増加に伴い、ホテルなどの観光施設の建設も進んでいます。今後も観光業を発展させ観光客を誘致することで、カンボジアの建設状況が更に発展していくと考えられます。

 また、カンボジア国民から住宅に対するニーズが1年間で5万件も寄せられています。現在、国民の需要に応える形で、ボレイの建設投資も増加しています。しかし、その5万件のニーズもカンボジア全土の栄えている地域に集中しています。つまり、まだカンボジアには開発可能な土地が大いにあるということを指しており、開発の可能性は非常に大きいです。

 これら2つの要素でカンボジアの建設業は発展していくと思います。

外国人投資家に向けたビジネス環境の整備や規則の向上を行う

―――カンボジアの建設業界には外国人投資家の存在が重要になっていると思います。政府として、また建設省として、カンボジアのビジネス環境をどうアピールしているのでしょうか?

 2017年、カンボジアの建設業における外国投資は、中国が最大、その次に韓国、日本が並んでいます。日本は2015年上半期では4位だったものの、投資額を増やしています。

 経営者にとって長期間における利益や会社の経営を考えることが必要だと思いますが、まず平和な国でなければ長期間の利益は得られません。カンボジアは自然災害の無い国で安全という保証もできます。

 そして政府の取り組みとして、外国人投資家にとってビジネスがし易い環境を作るべく、国としての基礎、ビジネス環境の整備や規則の向上を行っています。

 例えば、カンボジアに参入した企業や団体に対し、各関係者、協会が協力する環境が作られています。

 また、カンボジアの建設物は、カンボジア国民だけでなく、外国にいる外国人でさえも不動産購入ができる規則となっています。外国人は土地所有者になることはできませんが、カンボジア資本51%、外国資本49%の株主構成を満たしている合弁会社であれば、可能です。更に、カンボジアで約31万ドル以上の投資を行うと、カンボジア国籍取得の要件の一つである、「連続する7年の居住」が不要となります。

 カンボジア政府、そして政府が作りあげる環境と規則を信頼して欲しいと思っています。

都市計画のプランニングを現在作成中

―――カンボジアは現在、都市開発や投資に対する規制がありません。海外資本による開発も多く、国として都市計画のプランニングを求める声もありますが、政府としてどのように考えていますか?

 基本的なプランニングを現在、作成中です。ポテンシャルの高い地域を優先的に、プノンペン以外にも街づくりのプランニングを行っています。これは建設省だけでなく日本の運輸省からの協力も得て行っています。

 明確なプランの発表はもうそろそろだと思われます。シェムリアップ、シアヌークビル、プノンペンといった地域の100サンカットのプランニングは既に終了しています。

 ただカンボジアでは既に、建設の際に、全体の5~7%のグリーンエリアを作るという規則、カンボジアのデザインを残す規則があります。開発の際も、国の規則に基づき、各カンボジアならではのスタイルを残してほしいと思っています。

開発に伴う問題を100%クリアにする

―――発展にはそこに住む国民との問題が伴いますが、大臣の活動は国民から評価されていますね。カンボジア国民、政府にとってWin-Winになるように活動されていると思いますが、どう取り組んでいるのでしょうか?

 常に大臣として、国民が抱える問題を解決しなければいけないと思っています。

 話題になったホワイトビルディングも多くの問題を抱えていました。建物は非常に古く、衛生面や安全性が欠けていました。電気も合法的に整備されていなかったため、火事が発生することも度々ありました。そのため、住居者の皆さんを安全な場所に移したい、子供たちが安心して勉強できる環境にしたいと考えました。しかし、場所を移動するには莫大な費用や負担がかかります。資金力がある企業からの支援を受けたいと思い、公衆に知らせることにしました。 

 開発を進める際、開発に伴う問題を先に解決し100%クリアにしてから、実行に移るという方法をこれまで取っています。そのためには、開発承認前にその土地に関する調査を行うことが必要です。その土地でどのような問題が生じているのか、開発しても周りの建物に影響を及ぼさないか等、安心が得られるまで調べます。

 そして、デベロッパーと政府の間だけで解決するのではなく、現場の国民とも話し合うことが重要です。また開発が決まった場合は、開発の安全性を国民に証明し安心を与えることが必要です。

 大小なりとも起こり得る影響を考慮しなければいけません。開発だけ考えていると、数年後には必ず問題が出てきます。

 何も特別な方法ではありません。ただこれらのステップを実行するかしないかだけだと思います。

カンボジアの平和には日本のサポートが大きく寄与

―――大臣は日本の企業や政府と協力関係にありますが、日本との関係について教えてください。

 これは長いお話です。

 私自身、昔から日本に興味がありました。両国間の歴史を調べようとしましたが、カンボジアには資料が残されておらず日本との歴史をはっきり知ることはできませんでした。しかし、昔から日本に関する数々の物語がカンボジアでは受け継がれています。物語は実際の歴史の一部を表すものだと考え、益々日本に興味を抱くようになりました。

 そして私と日本との関係を深めてくれたキーパーソンとして、ライターの小山内美江子さんという方がいます。彼女とは、1989年からの長い付き合いです。かつて各地方の貧しい子供たちのところに一緒に行ったことも何度かあり、カンボジア支援に熱心だった彼女がライターとして日本や世界にカンボジアの現実を伝えてくれたことで、その後、多くの寄付がカンボジアに寄せられました。

 こうした経緯から、当時プノンペン市長だった私は、日本大使館を設立したいと考えました。しかし当時、土地管理も雑多で土地のライセンスを持たない土地所有者が多く、土地を巡った争いも繰り広げられていました。そこで私は国民とともに問題に取り組み、各土地に門を設け、安全な土地の確保に努めました。そして日本大使館の設立が可能となったのです。着工式にも呼ばれ、リボンカットを行ったことを覚えています。小山内さんのお陰で、日本大使館の設立にも至り、日本と私の関係も強固なものになりました。

 私は日本に、「ありがとう」という感謝の気持ちを伝えたいです。カンボジアが平和になったのは、日本のサポートが大きいです。1991年10月23日のカンボジア和平パリ協定から始まり、カンボジアは日本からのサポートを多く受けてきました。きずな橋とかもめ橋に代表されるようなインフラ整備や、地雷撤去活動支援も行ってくれています。そのお陰で国造りが進み、国民に安全安心が提供されるようになりました。かつて雨が降ったら1か月ほど水が引かなかったプノンペンも、JICAのプロジェクトにより下水問題が以前に比べ大幅に改善しました。また日本による水道プロジェクトで清潔で安全な水が提供され、現在は地方にまで広がっています。

 このように国としての基盤が整備されたことで、建築業も発展できています。そして建設業の発展は更なる国民の生活向上をもたらしています。カンボジア国民として感謝しています、決して忘れられません。

カンボジアは非常にポテンシャルが高い国

―――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 まず、カンボジアで利益が得られない場合は、どこの国に行っても同じだと思います。なぜなら、カンボジアは様々な発展を遂げており、ビジネスチャンスが大いにあるからです。アジア各国へのアクセスも容易で、自然災害の心配もありません。人材も開発可能な土地も豊富です。開発にかかる費用もまだ高くはありません。

 カンボジアの経済成長は著しいです。20年前の1997年を思い出すと、カンボジア全土に64の工場しかありませんでした。今は1100以上にもなり、工場労働者も800人から120万人へと増加しています。月額最低賃金も40ドルから2017年には153ドルとなり、その他の費用を含めるとだいたい200ドル程度までに上がります。

 外国への労働者も現在、120万人程度います。そして、労働先の国のルールを最も守るのはカンボジア人労働者という調査も出ています。カンボジア国民は外国人よりスピードは劣りますが、きちんと仕事をこなします。忍耐力もあります。

 その中でも大きな自慢は若い労働力です。

 現在、カンボジアでは10代の人口が全体の75%を占めています。更に教育環境が整備されておらず人材が育たなかった昔に比べ、今では教育が発展し、学校も町中にあふれています。子どもたちは外国語の読み書きはもちろんのこと、ビジネスやITスキルも身に着けています。

 そして彼らの多くが海外での勉強や仕事を経験しており、カンボジアに戻ってきた際に、大いに力を発揮してくれると思っています。ビジネスは長期で考えることが大切ですが、非常にポテンシャルが高いことが明快だと思います。

 ぜひ、カンボジアへのビジネス進出をお待ちしています。


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