カンボジアに進出する日系企業のための
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TOP INTERVIEW
トップが語る、カンボジアビジネス(2015/4発刊2号より)
リスクを乗り越えるための予防策を練り、ローカルを理解することでリターンが得られるのです(2/2)

カンボジア特有の法務・税務を熟し、10年以上の実務経験と実績を持つスタッフがそろう、法務・税務事務所「VDB Loi」。カンボジアをはじめ、ベトナム、ラオス、インドネシア、そしてミヤンマーで、常にお客様のビジネスに優位となる、質の高いアドバイスや実務を提供している。創業者でありパートナーのジーン・ロイ氏は、まだまだ発展途上のインドシナ地域に、法務・税務の骨格を形成するため、その情熱を注いでいる。

カンボジアでの税務・法律について

インドシナ地域の税務・法律のスペシャリストとして、刻々と変わる業界を取り巻く環境に迅速に対応。的確な判断で顧客をサポート。

 カンボジアの税務システムは、私が2002年に初めて来たときに比べたらずいぶん進みました。当時は数えるほどの基本的な法律しかなかったので、大変興味深かったですね。しかし特にここ2年ほどは法整備も明確になり、政府も徴収の意向を明確にし、民間への周知もされるようになってきました。すごく良い変化だと思います。法律が整備され、きちんと民衆にまで行きわたるまで時間はかかります。ようやくここまで来たという感じでしょうか。

 さらにローカル向けと投資企業向けでは全く別な管理体制があると考えていいと思います。別な制度で統治されているので、街中のヌードルショップとコンプライアンスを順守する必要がある投資企業の税務体系や税金額も分けられていると考えてよいでしょう。よく税金を払ったことがない、という話も聞きますが見えていないだけで何らかの税金は支払っているはずですよ。

 近年カンボジアでは投資案件が増えてきているので、競争も高まってきました。私個人的には競争があったほうが発展すると思いますので大歓迎です。私が2002年に最初来た時は法律事務所が2、3社、ローカルが数社でした。現在は国際法律事務所だけで20数社、ローカルを入れるとかなりの数になると思います。それだけ見てもこの業界の成長が分かると思います。

 カンボジア政府が投資にオープンというのも、この10年の急速な発展の一因です。市場が開放されているという事は良いことです。カンボジアは、近隣のラオスやベトナムに比べてもかなり解放されていると感じます。近隣国は外国人の参入や投資に関しても、かなり厳しく規制している場合が多いのです。カンボジアは97年ごろから市場開放が始まりましたが、それに伴いローカル企業の成長力も高まっていきます。

他社との違い、今後の戦略

カンボジアを中心に10年以上の長きに渡りビジネスを展開してきたロイ氏が考える、今後の戦略とは。

 私どもの会社はすべて発展途上国といわれる所で事業を営んでいるわけですが、どこでも苦労したのが、優秀な人材の確保です。スキルが高い人がいなかったり、長続きしなかったりと、次から次へと難題が降りかかってきました。我が社では、スキルを高めるために、かなりの投資をします。必要な資格取得などはもちろん、海外でもう少し学びたいという場合も応援します。

 なぜなら、私はそれらの人材が戻ってきて、この会社の一部となる事を望んでいるからです。また、インフラ不足が大変だと感じています。インターネットは重要な要素なのですが、例えばミャンマーは大変でした。国際ローミングが無いことも多々ありますしね…

 先ほどから申し上げているように、我が社はこの業界でもちょっと特殊な立ち位置にあると思います。我が社は様々な得意分野に専門家がいるので、東南アジアのような場所ではかなり優位に立てると考えています。我が社は、タイやシンガポールのような国への参入は考えていません。このエリアでベストであることを目指しているからです。質の高い仕事を提供することに意義を感じていますし、お客様に良い結果をもたらすことを目指しているので、それに向けての努力は惜しみません。

日本企業へのメッセージ

事務所には日本人が常駐しており、インドシナ地域へ進出を検討している日系企業をサポートしている。進出を検討する日系企業へのロイ氏のアドバイスとは。

 カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムに関わらず、きちんと事前勉強をしっかりするべきです。もちろんリスクはありますが、そのリスクを乗り越えるための予防策を練る必要があります。リスクがあるという事は、成功した時のリターンも高くなりますから、そのための投資は惜しまないほうが良いでしょう。例えば、これらの状況がすべて制度として成熟しているような国であれば、さほど利益は望めないでしょう。シンガポールなどがそれらに当たります。

 カンボジアに来られる多くの方が誤解しているようですが、もちろんカンボジアでも税務体制は構築されており、納税の必要はあります。周辺国どこでもそうです。きちんとローカルルールを理解する必要があります。あなたの国での経験が通用すると思ってはいけません。そのための事前勉強は重要なのです。

 もし日本国外への投資を考えているのでしたらインドシナ地域はおススメです。まだまだギャップが多数ありますが、日本人の投資はどこの国でも歓迎されます。日本政府もODAで、この地域への投資は積極的です。例えばミャンマーでの日系企業の投資はかなり増えてきています。もちろん失敗することもあるでしょうが、それはタイミングだったり、体制の不備だったりもします。リスキーなマーケットかもしれませんが、その分リターンも大きいことを覚えておく必要があります。ただ、ローカルを理解する努力を惜しまなければ大丈夫だと思いますよ。日系の投資案件は事前調査もしっかりしていることが多いので、失敗することも少ないと思いますよ

VDB Loi ヴィーディービー・ロイ
Managing Partner
ジーン・ロイ Jean Loi
マレーシア出身。学生時代をニュージーランドで過ごし、そのまま現地で就職。2002年、勤務先の支社駐在のためカンボジアへ。その後ベトナム・ホーチミン市へ転勤となる。5年後に退職し、シンガポールの会計事務所に転職。1年後には独立を決意し、2012年に独立し、法務・税務事務所VDB Loiを設立。カンボジア、ベトナム、ラオス、インドネシア、ミャンマーに事務所を開設、各国を回る多忙な日々を送っている。

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