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  • 経済
  • 2025年6月24日
  • カンボジアニュース

カンボジア、タイからの燃料輸入を全面停止:代替供給網で対応へ[経済]

カンボジア政府は6月22日午前0時をもって、タイからのすべての石油および液化ガスの輸入を停止した。フン・マネット首相は、シェムリアップで開催されたカンボジア青年連盟(UYFC)の中央委員会会議の閉会式において、「今夜0時から、タイからの燃料とガスの輸入を停止する」と発表し、「カンボジア国内の需要に応じた供給は他国からの調達で十分対応できる」と強調した。

この措置は、タイの一部政治勢力が国境紛争を背景に石油供給停止を示唆したことに対する明確な対抗措置とみられる。フン・マネット首相は、「1か月間石油を止めればカンボジア経済は崩壊するなどという脅しは無意味である」と述べ、外交的圧力への強い警戒心を示した。

今回のカンボジアの「自発的な燃料輸入停止」は、伝統的な経済制裁の形とは異なり、「相手国に先手を打たれた体裁を取らせないための外交的パフォーマンス」という側面が極めて強い。一般に経済制裁は、資源を「与える側」が制限することで相手国に圧力をかける手段であり、ロシアの天然ガスに依存する欧州に対する供給制限などが代表例だ。

鉱工・エネルギー省も同日、「カンボジアは国内供給に十分な燃料備蓄を保有しており、供給混乱や価格高騰の懸念はない」と声明を出した。現地の燃料供給業者は既に他国からの代替調達に動いており、消費者や企業への影響は最小限にとどまると説明されている。

燃料輸入の代替先としては、シンガポールが有力視されている。同国はアジア地域における石油精製・再輸出の主要ハブであり、米系メジャー(エクソンモービル、シェブロンなど)の供給拠点が集中している。アメリカ商工会議所会頭のケーシー・バーネット氏は、「カンボジアの燃料消費量は日量約7.6万バレルと少なく、国内精製は経済的に成立しない。シンガポールからの供給が現実的な選択肢である」と述べた。

燃料供給網の再構築は短期的な物流課題を伴うものの、分散化によって外交交渉上の交渉力を高めるとの指摘もある。今後、エネルギーをめぐるカンボジアの輸入先は、ASEAN内外を含むより多様なルートへと移行していくことが予想される。

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