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特別レポート(2019/06発刊10号より)
観光の視点から考える対日本マーケット戦略(2/3)
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カンボジア人旅行者の増加と地方都市の観光開発

 カンボジア人による国内旅行に関しては、2002年には約175万人だったが、2017年度には約1009万人(約5.7倍)と激増している。また、海外旅行者は2010年には約50万人だったが、2018年度には約195万人と4倍近くに急増している。

 これは、カンボジアの最低賃金の引き上げが影響しており、2012年度の最低賃金は61$だったものが、翌年には80$、2015年には128$、2019年度は182$と、3年で約2倍、7年で約3倍に上昇した結果、中間所得層の増加し、旅行が楽しめるようになってきたからである。

 観光開発と言う視点では、カンボジア人旅行者の増加を受けて、カンボジア人向けレジャー施設やエコツーリズム、キャンプサイト、ビーチリゾートやホテルなどがカンボジア全土に続々とオープンしている。

 また、近年シアヌークビルでは急激な乱開発が進み、その多くは中国人によるカジノと宿泊施設だが、同地域には、離島ではアリラヴィラ(ルッセイ島)やシックスセンス(クラベイ島)、またカルダモン国立公園内にはシンタマニワイルドなど、世界的に人気の高い高級ホテルもオープンし始めており、観光開発は観光客の国籍やニーズに合わせ、3つ(カンボジア人向け、中国人向け、それ以外の外国人向け)に大別されるようになってきている。

脱アンコールワット依存の取り組み

 観光省では政策の一つとして、脱アンコールワット依存を掲げた観光開発に取り組んでいる。プレアシアヌーク州やコッコン州では「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟し、美しい海を活かした南国リゾートとして、ラタナキリ州やモンドルキリ州では豊富な自然と少数民族の生活が体験できるエコツーリズム都市として観光開発を行っている。

 また、クラチェ州やカンポット州、バッタンバン州では歴史ある建築物を活かし、ユネスコ世界遺産登録に向けた活動を行っているが、すでに世界遺産として認定されているプレアヴィヒア州のプレアヴィヒア寺院(2008年7月)、コンポントム州のサンボープレイクック寺院(2017年7月)などもあり、アンコールワット以外のエリアへの観光客も少しずつ増加している。

 しかし、地方都市への観光はカンボジア人旅行者が主となっており、他の地方都市に訪問する外国人は実情5%にも満たない。問題点として、観光客向け宿泊施設や飲食施設のクオリティ、衛生問題など、まだまだ観光インフラが整っていないことが挙げられているが、これら問題に関しても、観光人材の育成、そこに住む住人たちへの啓もう活動とともに徐々に改善されてきている。



  西村清志郎
Nishimura Seishiro

カンボジア在住歴15年、旅行会社、出版社、宿泊施設運営などずっと観光業に携わっており、現在はJICAシニアボランティアとしてカンボジア観光省プロモーション&マーケティング部アドバイザーとして配属されている。主な業務はカンボジアへの日本人観光客、視察、学生ツアーなど誘致、広報活動などとなっている。高知県出身、45歳。


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