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特別レポート(2017/11発刊7号より)
不燃性マーケット?カンボジア株式市場
〜開設から5年、全く活性化の兆しを見せないカンボジア証券市場。 周辺ASEAN諸国の証券市場の軌跡と合わせて辿る新興株式マーケットの可能性 〜(2/4)

2012年4月に産声をあげたカンボジア証券市場。その後5年半が経過した現在、上場企業数はたったの5社。株式取引が成立しない日もあるほど市場には閑古鳥が鳴いている。 2006年から2007年にかけて大いに盛り上がった隣国ベトナム証券市場の「2匹目のドジョウ」にはなれなかったカンボジア市場。その要因は何か、そして今後活性化する可能性は?

カンボジア株式市場第1号の値動き

 カンボジア証券取引所(CSX)の第1号銘柄となったプノンペン上水道公社(PPWSA)の上場は2012年4月。同年2月末にはPPWSAの新規株式上場(IPO)に関する株価決定前の機関投資家向け説明会(いわゆるロードショー)が開催され、300人を超える満員御礼となった。3月に行なわれたブックビルディング(上場する株価の仮条件の上限・下限の範囲を投資家に提示し、買いたい株価と株数を投資家に入札してもらい需要を把握した上で株価決定を行なうプロセス)では、仮条件価格のほぼ上限となる1株6,300クメールリエル(カンボジア現地通貨、KHR)で公開株価が決定された。ブックビルディング入札では市場に放出される株式数に比べ圧倒的に需要が多く、割当株式は抽選方式で行なわれ、多くの投資家は希望株数の1、2割程しか割り当てられなかったという。小規模市場とはいえ第1号IPO銘柄であり、それなり盛り上がりを見せていたことが伺える。

 第1号銘柄となったPPWSAはカンボジア経済財政省が保有する国営企業であった。1895年に設立されたPPWSAは1970年代後半のいわゆるポルポト政権時代に壊滅的なダメージを負いながらも操業を継続。諸外国からの援助も受けながら1995年には再び黒字化し、その後も堅調な成長を続け、2012年CSX上場銘柄第1号となる栄誉を得る。IPO時の直近業績(2011年12月期第3四半期累計)は、売上が約2,100万ドル(約17億円)、純利益が約560万ドル(約4.6億円)。小規模ながら業績は好調であり、管轄区域のプノンペンは今後更なる人口流入が見込め、成長の見通しは明るいと言えた。

 2012年4月18日午前9時9分、PPWSA株式が上場され取引がスタートする。取引は午前中のみ、売り買い注文を集計し午前中に2回株価を決める「板寄せ方式」と言われる方法で株価が決定された。初日終値は値幅上限設定150%いっぱいの9,350KHR。金曜日となった4月20日の終値は10,200KHR。上場後2日で公開価格6,300KHRの1.62倍にまで跳ね上がり、1日の売買取引高も100万ドル(当時レートで約8千万円)前後と、好調なスタートを切ったかに見えた。

 しかし盛り上がりを見せたのはそこまでだった。週明けの4月24日に株価は1万KHRを割って9,700KHR。その翌日には初値の9,350KHRを割り込み、株価はずるずると下がり続け、公開株価を下回るまで下落するのに長くはかからなかった。1日の取引量も格段に落ち、しだいに国内外の投資家の興味はCSXから離れて行った。

カンボジアのIPOはお祭りにならない

 そして5年の歳月が流れ、2017年10月現在、CSXに上場している企業は5社。隣国ラオスは6社、ミャンマーでは4社。3カ国合わせても15社と、開設後5年で41社上場していたベトナム市場にはるか及ばない。

 CSXではPPWSAの第1号上場の後、2年以上の空白を経て、2014年6月に台湾系縫製会社グランド・ツインズ・インターナショナル(GTI)が上場。更にまた1年空いて2015年12月に首都プノンペンを流れるサップ川沿いでコンテナ港を運営する国営企業プノンペン自治港(PPAP)、そのまた1年後の2016年5月に日系企業の工場が多く入居していることで知られる現地華僑系のプノンペン経済特区(PPSEZ)、そして今年2017年6月にカンボジア唯一の海洋コンテナターミナルであるシアヌークビル港を運営する国営企業シアヌークビル港湾公社(PAS)、と1年に1社という超スローペースで上場が続いている。

 第2号の上場銘柄が外資企業であったことなど、国内外に開かれた証券取引市場であることを証左するいくつかのアピールポイントはあるにしても、国営電気通信公社テレコム・カンボジアなどの大手企業の上場が風聞のみ取り沙汰されるも一向に実現しなかったことや、上場計画を公表した企業の公開遅延が相次いだなど、投資家心理を冷やし続ける事態が続いている。ましてや1年に1社の上場ペースでは、その他にも魅力的な投資機会のあるカンボジアにおいて投資家の心を引き止めておくことは難しい。

 事実、PPWSA後の上場企業4社のどれもが、公開直後ですら株価が大きく跳ねることはなかった。年に一度のIPOがある度に「カンボジアのIPOはお祭りにならない」という事実が積み重ねられ、それがますます投資家の興味を失わせ、カンボジアIPOに投資・投機資金が集まらず、また事実としてIPOがお祭りにならない、という負のサイクルにはまっているのがCSXの現状といえる。



 昨今その存在意義そのものが厳しく問われている日本の農協は、戦前から戦後、そして高度経済成長時代、日本の農業発展に大きく貢献した農業組織でした。GDPの3割を占めるカンボジア農業の現況は、まさに農協を必要としていた当時の日本の農業の姿と重なります。
 JCGroupは2008年創業以来の主要事業であるカンボジア農業に日本の知見・ノウハウを導入、「古き良き日本型農協」の機能をカンボジアに実現させ「Made by JC(Japan & Cambodia)」によるカンボジア農業の産業化に貢献することを目指しています。
http://jcgroup.asia/

  髙 虎男
Ko Honam

早稲田大学政経学部経済学科を卒業後、日本の大手監査法人、戦略コンサルティング兼ベンチャーキャピタル(一部上場企業 執行役員)を経て、2008年カンボジアにて「JCグループ」を創業。日本公認会計士・米国ワシントン州公認会計士。


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