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2018年6月25日
カンボジア進出ガイド

【建築・内装】

238 カンボジアの建設・内装②(2018年5月発刊 ISSUE08より)

低所得者向け住宅開発 Housing development for low-income people

 建設省は、低中所得者向けの低価格住宅の開発を優先するよう投資家に呼びかけている。ホワイトビルディングの再開発で知られる日系不動産開発会社アラカワは、大学生、新婚夫婦、低所得世帯をターゲットに、都内中心部に7000万ドルという低コストでコンドミニアムを建設する。また、公共住宅プロジェクトも始動しており、クメールタイムズ紙によると、政府から請負うワールドブリッジ・インターナショナル・グループのシーア・リッティ会長は、「FS調査はほぼ完了しており、プロジェクトの開始は今年10月か11月で、完了は2年以内だ」と述べており、土地の価格高騰を引き起こす懸念からプロジェクトの正確な位置を明らかにしていないが、住宅価格は2万5000ドル~3万ドルで、住宅ローンが利用できるようになるという。

 C&Pのミース氏は、「過去数年間、ハイエンドクラスの開発が多く、そのため過剰供給が発生し、十分な買い手がいません。そのため現在、デベロッパーは開発物件をローエンドクラスや、買い手を引き付けることができるコンセプトに変更しています」と語り、安価で素晴らしい開発コンセプトであれば、顧客は十分に確保できるという。また、同氏は、「カンボジア市場は依然として強い購買力がありますが、立地が良い、デザインが良い、手頃な価格、ビジネスや投資において魅力的等、買い手を惹き付ける物件は少ないです」と語り、まだまだ投資余地は残っている。

 競争に勝つためにデベロッパーも抑えた価格を提示しているが、ボレイの一部のデベロッパーが顧客に対し、頭金なしで30年間の長期住宅ローンを提供しているケースもある。カンボジア不動産協会(CVEA)とカンボジア住宅開発協会(HDAC)は、ボレイの一部のデベロッパーが顧客に対し、頭金なしで30年間の長期住宅ローンを提供していることに対し、懸念を表明している。

様々な開発プロジェクト Various development projects

 首都プノンペンでは、133階建てツインの超高層ビルで構成される泰文隆ツインタワー(Thai Boon Rong Twin Towers)の初期建設作業が3月から始まった。ナガワールドとシアヌーク通りを挟んで反対側に位置する5ヘクタールの土地で建設される。また、現地コングリマット企業のロイヤルグループも、ホテルカンボジアーナを解体し、高さ600メートル(133階に相当)の超高層ビルを立てるプロジェクトの承認を政府に求めている。

 さらに、現地企業のOKTロイヤルワンは、中国企業Huasi Groupとパートナシップを締結し、62階建ての商業ビルをTV3カンボジアの跡地に1億5千万ドルを投じて建設され、2018年9月に着工する予定。

 シアヌークビル沿岸では、大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルは、現地会社グランド・ライオン・グループと提携し、388室の5つ星ホテルを建設すると発表。2022年1月の開業日を目指す。また、2億ドルをかけるゴールドコーストプロジェクトは、1.6ヘクタールの土地に、58階建の建物に住居物件を含む888戸の住宅を所有する計画だ。

 前述のほかにも建設省からの承認を待っている超高層ビルのプロジェクトが複数あるとされている。

労働者 Construction workers

 カンボジアの不動産・建設セクターが20万人以上のカンボジア人を雇用するなど、雇用機会創出の牽引役となっている。地方からの出稼ぎ労働者が多く雇用されており、収穫期でない時期には高報酬を求めて地方から首都へ大量流入し、収穫期になれば地方へ農業をしに戻るという。

 建設労働者の技術力について、カンボジアでは、熟練技術者も非熟練労働者も、特に学校で学ぶ慣習はなく、師匠が弟子に教えるような形で、技術を学ぶことが多い。そのため技術レベルに一貫性がなく、基準も無いと言われる。



 OJTで人材育成する企業が多いなか、自社で組織的に労働者を訓練する会社もある。2002年に創業、多くの日系企業から建設事業を一任されるローカル企業、セントラル・デベロップメント・エンジニアリングのドム・リエン氏は、「当社の従業員は、デザインや建設に関連した非常に高いスキルを持っています。これは自社でワークショップを行う等、訓練しているからです。既に資格のある人を募集することもありますが、そのような人でもエンジニアリングセンターと呼ばれる自社施設で訓練を行ってから入社します。その結果、我々はクライアントから評価を得ることができていると感じます」と語る。

 SOMAのチア氏は、「カンボジアには熟練技術者がほとんどいません。例えば5~6年かかるような大掛かりのプロジェクトだと、カンボジアの作業員では経験がない。今は向上している最中ですが、海外から人材を雇う必要があります」と語る。

 このような背景のなか、一部の企業や外国人投資家が自国の技術者や労働者をプロジェクトに連れてきている。カンボジアの橋や高層ビルを建設する中国企業は、十分な労働者が確保できないという理由により、中国から多くの中国人を連れて働かせている。


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