カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2015年11月9日
カンボジア進出ガイド

【人材・コンサル】

084 カンボジアのHR・コンサル②(2015年10月発刊 ISSUE03より)

労働時間・最低賃金 Working hours & minimum wage

083 カンボジアのHR・コンサル①から続き
 労働法では、労働時間は1日8時間、週48時間と定めている。残業は通常賃金の50%増しで、午後10時~午前5時までや休日は100%増し。有給休暇は1か月につき1.5日(年間18日)と定めている。

 また、2015年10月、労働職業訓練省より最低賃金に関する省令が公布され、2016年の縫製業、被服業及び製靴業に従事する労働者の最低賃金は月額140ドル(試用期間中は135ドル)に決定された。2015年の128ドルから9.4%増。一昨年から昨年にかけての伸び率28.0%増と比較すると小幅な伸びとなった。政府が定める最低賃金額に自国通貨(リエル)を使用しないことは世界的に異例。この額は2015年のベトナムのハノイ・ホーチミン等都市部における月額最低賃金3,100,000ドンと並ぶ額。為替レートによってはカンボジアの方が高額になる場合もあるだろう。

 なお、JETRO海外調査部が発表した在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2014年度調査)によると、月給は作業員で113ドル、エンジニア(中堅技術者)で323ドル、中間管理職(課長クラス)で668ドルであった。

日本語人材 Japanese-speaking workers

 日本語人材の給与相場は、30歳以下、プノンペン在住者の希望月給で、日常会話レベルで360.3ドル、ビジネス会話レベルで753.1ドルだ(CDL公表数値)。日常会話レベルは一昨年に引き続き3%程度と低い伸び率で推移している一方、ビジネス会話レベルは一昨年に引き続き20%以上伸びている。比較的高給である日本語人材の中でも二極化が進行している。

 この数値は日本語と英語以外の言語が話せる客体は除外しているため、中国語やタイ語などの第三言語の能力を有する人材であれば、さらに高額になることが予想される。

 CDLの分析によれば、日本語人材の英語能力が日常会話レベルの場合とビジネス会話レベルの場合とでは、月給額に大差はなかったとしている。つまり、日本語人材の月給額を決定している主な要素は、あくまで日本語能力であると言える。日本語人材は就業未経験でも250ドル以下で採用することは極めて難しい。

 なお、前述のJETROの実態調査によると、月給は非製造業の一般職で332ドルであった。また、同じくJETROが発表するアジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較(2015年6月)によると、ローカル企業の店舗スタッフはアパレルで110~150ドル、飲食店で90~120ドルであった。このことからも、日系企業で働く人材には日本語人材が含まれるため、スタッフの平均月給はローカル企業より高くなったと考えられる。

 ローカルの日本語人材は、供給不足から英語人材と比較して賃金に倍の開きがあるといわれており、例えば、英語人材なら日常会話レベルで180ドル~、ビジネス会話レベルで300ドル~だ。日本語人材の給与の高止まり等を背景に日本語の学習熱は高まっているが、労働市場に供給されるには当分先となる。さらに言語習得スピードが遅く、就学時間の割には伸び悩む傾向があることから、歪な需給バランスはしばらく続くだろう。

 また、日本語能力検定は一級、二級といった段階制で合否を決定するが、三級合格者が二級合格者より言語能力が上というケースも散見されるのは、筆記試験のため会話能力の測定が困難だからだ。また、言語能力以上の給料を高望みする日本語人材が存在するのは、給与相場に無知というより自身の言語能力を客観的に判断できていないことに起因し、このことは言語能力の向上を阻害する要因ともなり得る。



 カンボジアの日本語教育の祖とも言うべき存在のサクラ・ヒューマン・トレーニングの大石安慧氏が実施しているビジネス日本語検定について、「試験のやり方としては、聴解や読解など全て踏まえていますが、初級・中級・上級というように試験内容を分けていません。同じ試験問題を全員が受験することで、能力の判定が公平に行えると考えています。ビジネスの現場も初級や中級などと別れているわけではありませんからね。ビジネス活動が本当にできるかどうかが大事。やはり、高得点をとった分、自信が湧きますから本人たちの自覚も違ってきます」と語り、カンボジア人の仕事と語学習得のモチベーション向上に繋がればと抱負を語った。

人材の募集方法 Approaches to recruitment

 求人方法にはラジオ、新聞、フェイスブックや求人サイトの利用、知人やスタッフからの紹介などの方法がある。 カンボジアで最大のプレビュー数を誇る求人サイト「カムHR(CAMHR)」では、求人情報の掲載だけでなく、データベースにアクセスして求職者データを閲覧することができ、求職者は直接応募することも可能。また、求人情報誌「ジョブジョブマガジン」のほか、中国語人材を求めるなら中国語の新聞で求人するなどの使い分けも可能だ。

 スタッフの募集に際し、時間的な余裕がある場合には、市内で開催される就職説明会に有料で参加することもできる。やや郊外に位置するCJCC(カンボジア日本人材開発センター)では、定期的に日本企業向けの就職説明会を開催している。CJCCとは、JICAの協力により設立され、民間セクター開発を促進するための人材育成と情報交流の拠点となっている施設だ。就職説明会に参加を希望する場合には事前にCJCCへ所定の申込手続きと参加費の支払いをする必要がある。

 また、募集や面接の作業には多大な労力と時間的コストを費やすため、人材紹介会社にアウトソースすることも有効だ。報酬は採用した人材の月給の2か月分。採用が決定して初めて課金される成果報酬制が主流で、紹介された人材が早期退職した場合は、手数料の返還や代替候補者の紹介などの保障がある。「人材紹介会社を利用するメリットとして、突発的な採用業務による平常業務の停滞防止や、不適合者の登用がもたらす人的リスクの排除などが挙げられます」とCDLの鳴海氏は語っている。
085 カンボジアのHR・コンサル③へ続く


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