2015年6月5日
――まず、ウェスタン・ファーマシーについて教えてください
チア・ビラック(以下、チア) 現在は4ヶ所に展開しており、2015年末までにさらに1ヶ所を増やす予定です。「なぜカンボジアで薬局をオープンしたのか?」とよく聞かれますが、国際水準でスタンダードな薬局をカンボジアに作りたかったんです。
カンボジアには薬局は多いですけど、国際水準ではないですし、きちんと教育された薬剤師は少ないです。きちんと法律を守れていない薬局も多いです。例えば、薬局では温度管理のためにエアコンを設置しなければいけないですが、それを設置していないところが多く、日差しが直接当たり、薬が劣化することもあります。また、薬を販売するのが薬剤師ではないお店も多い。
私達は、スタンダードな薬局を作りたいと思っています。ウェスタン・ファーマシーのビジョンは、「カンボジアの薬局をプロフェッショナルな薬局に変えること」です。そのためにも、お客様がウェスタン・ファーマシーを訪れた際に、相談にきちんと答え、薬についての適切な説明がなされ、適切な薬をお渡しできるような薬局でありたいですね。
――カンボジアにおける医薬業界の現状はどうなっていますか?
チア カンボジア国内にはおそらく3千以上の薬局があり、多くがプノンペンに集中しています。チェーン展開している薬局は数えるほどしかないですが、各チェーンはどんどん展開をしています。カンボジアの水準を高めるために、もっと多くの外資系薬局がカンボジアに入ってきて欲しいです。競争が起こることでさらに基準が上がりますから。
周辺国の状況と比べて、カンボジアの医薬業界は遅れています。しかしこれから、様々な病院が増えてくることで、医薬品・医療機器の水準も上がっていくのではないかと考えています。もっと品質の高い製品・会社がカンボジアに入ってきて欲しいですし、これから先進国で使用されているような新たな治療薬がカンボジアに入ってくると思っています。
現在の医薬業界は、徐々に良くなっているとはいえ、今は十分なサプライヤーがいません。大きな会社が存在しない理由は、カンボジアの人口が小さいからです。大企業はカンボジアよりも人口の多いミャンマーを選んで行く。私自身も日本の大手製薬会社にコンタクトしましたが、カンボジアの市場に興味を持ってもらえないのが現状です。
カンボジアでは、1つのサプライヤーが持っている商品点数がとても少ない。アメリカでは、1つのサプライヤーが1つの薬局すべての商品を提供できるほどの商品点数があります。途上国であるカンボジアでは、これからサプライヤーが商品点数を増やしていくには時間がかかるでしょう。カンボジアでは日本製の薬もあまり入ってはきていないんです。
やはり安全な薬を探すことは難しいですね。薬局としては、どこの会社がその薬を販売しているかが大事な基準となります。また、人々が薬を探す場合は、適切な環境(温度管理・日差し管理など)で薬を管理している薬局で購入したほうが良いと思います。カンボジアで手に入らない薬は多いですし、病院で手に入る薬も限られていると思います。
―― 薬剤師の教育についてお伺いできますか。
チア スタッフの教育がとても大切ですね。特に、薬剤師・薬学生を教育することはとても重要。薬学校を卒業しただけでは、十分な知識を持っているとは言えませんから。国際水準の薬局を作るためには、教育によるボトムアップが必要ではないでしょうか。学校のレベル、学生のレベルを上げる。そのために教育が必要であると考えます。
私自身も、薬剤師・薬学生に対して毎週トレーニングコースを開催し、教育を行っています。将来、カンボジアの薬局がより国際水準の薬局になっていって欲しいと思います。アメリカからカンボジアに戻ってきて3年近く経ちますが、このトレーニングを通して、薬剤師が自身の仕事に自信を持つようになってきました。治療の相談に乗ることにやりがいを持つようになってきているように感じます。(後編へ続く)(取材日/2015年3月)