2017年1月2日
(前回の続き)
――カンボジア人材のマネジメントに苦労している企業は多いと聞きますが、原因は何だとお考えですか
ケビン・ブリテン(以下、ブリテン) コミュニケーションの失敗だと思います。これは膨大な数の勘違いやトラブルに繋がり、究極的にはビジネスの失敗に繋がります。カンボジアでの10年間と、多くの人材を輩出してきた個人的なカンボジア人との経験でいえば、彼らは発展や新しいアイディア、トレーニングに対して非常にオープンで、学ぶことと成長することが好きで、明日を今日より良くしようと思っています。家族を支えたいと思い、仕事をより良くすることでいかに人生をより良くできるかと考えています。つまり、カンボジア人人材に対し、私は非常にポジティブに考えています。
私の経験では、彼らは新しいことやアイディアを学ぶことに興味があって喜んで学ぶし、また迅速に適応します。会社をよく運営するために、自分がいる場所のルールや手続きには一般的にきちんと従います。ですから、私自身は問題がありませんね。
カンボジア人は、日本人がおかしいくらい働くと思っていますよ。カンボジア人はワーク・ライフ・バランスを非常に重視しているので、日本人マネージャーが会社のオペレーションに苦慮するのは、そこを理解していないからかもしれません。ワーク・ライフ・バランスというのは、解決策が見つかるような問題ではありません。人生のファクターなのですから。
――カンボジアにおける 言語人材の能力について、どう見ていますか
ケビン・ブリテン(以下、ブリテン) 私の意見では、ベトナム人やタイ人よりもカンボジア人の英語理解能力はずっと高いです。日系企業がこちらでもがいているのはなぜかというと、派遣されてくる日本人の英語力が十分高くないからです。日本語を話せるカンボジア人を探すかわりに、日系企業はおそらく、英語を話せる日本人を派遣するべきですね。
以前、マネージャーレベルの日本人がここへ来ました。毎日仕事が大変そうで、しかもあまりレベルの高くない、英語能力も高くないカンボジア人を雇っていました。マネージャーその人自身の英語能力も素晴らしいとは言い難く、コミュニケーションに失敗していました。働き方のメソッドや行動の仕方、どうやって求めるものを得に行くかなどは、コミュニケーションに失敗していたら教えることはできません。カンボジアで日本語を非常によく理解できる人材の市場はとても小さいですから、直近の解決方法は、こちらが英語を理解することです。日本語コースを作ったり日本語学校を作ったりするのもいいですが、それは中長期的解決策です。いま解決策が必要ならば、こちらが英語を理解すべきでしょう。
――平均賃金について教えてください
ブリテン 弊社の調査(2015年-2016年)によると、3~5年の経験があるミドルマネージャークラスだと、1500ドルから2000ドルです。マネージャー初経験者の場合には800~1500ドル、スーパーバイザーレベルでは500~600ドル、業界で少し経験のある人材では300~500ドルです。以上は全て英語人材を前提としています。英語があまり話せない場合、卒業したてで経験がほとんど無い人材は180~190ドルで、受付人材は160~200ドルです。ショップのセールス人材は150~160ドル、マニュアルのブルーカラーは140~150ドルです。
ちなみに、縫製産業や飲食産業は金額が低い方のレンジで、金融業や日用品販売などは高いほうのレンジです。国際的にもホスピタリティ産業、は金融サービスや建設業界等に比べて給与が低い傾向にあります。
私が思うに、日本人はこの平均賃金を知らず、縫製業の最低賃金から賃金計算をしているのではないでしょうか。ワーカーが150ドルの稼ぎであればマネージャーの賃金は300ドル、そしてその上司は月に1000ドルを稼いでいますよ。(取材日2016年7月)
(次回へ続く)