2018年1月11日
(前回の続き)
――カンボジアにおける会計・税務・法務業界への展望をどうお考えですか。また同業界の発展には、何が求められると考えますか。
澤柳 匠(以下、澤柳) カンボジアでは、税務に関するコンプライアンス意識は高まってきている一方で、会計に関するコンプライアンス意識は低いままです。2016年にNAC(National Accounting Council)が行なった調査では、回答を行ったカンボジア企業の実に半分以上が会計基準に則って会計処理を行っていない実態が浮き彫りとなりました。
しかし、今後適切な会計処理、適切な財務諸表の作成に関して、もっと注目が集まることは確かです。例えば、2016年12月に交付されたLaw on Financial Management (LoFM)や2017年7月に経済財務省から交付されたプラカス(Prakas No. 638 MEF.Prk)によると、適切な財務諸表を作成することがMinimum Taxの免税を受ける1つの要件となりました。
これらは「制度会計」と呼ばれ、法律や会計方針に基づいて適切に財務諸表などを作成し、利害関係者へ情報を提供することが目的です。制度会計をまずはしっかりやりましょう、という動きがカンボジアでのこれまでの流れで、これからも続いていきます。
もう一方で、「管理会計」の重要性も日に日に増してきています。管理会計とは、企業経営における意思決定のために行われる会計であり、厳格なルールはないものの、経営の舵取りには必要な情報です。これまで企業にとって制度会計のみが会計でした。それは、人的資源やマネジメントシステムなどの問題から企業が制度会計を行うだけで精一杯であり、政府や株主(本社)からも制度会計を強く求められてきたからでした。
しかし制度会計をしっかり行える企業が増えてくれば、必然と管理会計にも注目がいきます。会計や税務を企業の意思決定のツールとして捉え、積極的にそれらの情報を使っていくことができるようになります。そして、そのような企業経営のサポートができる会計事務所がより企業に求められてくるでしょう。
――その中で貴社はどのような役割を担っていきたいですか?
澤柳 会計をより多くの経営者や駐在員の皆様に理解してもらうために、セミナーや講演会、研修などを実施していきます。
当社はすでに一部の企業様向けにカンボジアで管理会計に特化したセミナーを実施しています。例えば、直近では経営者や駐在員が見るべき決算書のポイントを解説したり、儲けを出すための決算書分析などを実施しました。セミナーの数を重ねるごとに、どんな会計や税務に関するお悩みがあるのかが見えてきました。
当社として最終的には、現地で活躍されている皆さんに数字に強くなってもらい、会計を「見る」から「使う」経営者になってほしいと思います。
――最後に読者に対してメッセージをお願いします。
澤柳 カンボジアでビジネスをすることにワクワクしましょう。全ての結果はあなたの行動がもたらし、その行動はあなたの意識から生まれます。(取材日:2017年8月)