2014年1月20日
(前編からの続き)
スマートフォンの普及が一つの要因です。人々はニュースに対して、即時性を求めます。早ければ早いほど良いのです。
私が新聞社で働いている時は、前日にニュースを集め、夜中に印刷をし、翌日に配布するという流れでした。かなり長い時間がかかります。ラジオ局で働いている時には、当日にニュースを集めますが、放送されるのは急いでも夜になります。どちらもオンラインメディアに比べると遅いですよね。その点、オンラインはとても迅速です。
長年のジャーナリストの経験から、ニュースの即時性が非常に大事であるという認識がありました。ウェブメディアだと事件が起こって、直ぐに記事を書き上げれば、編集をしても3、4分でサイトにアップロードすることができます。この即時性が、私がウェブサイトを選んだ理由です。この要求は読者からのものでもあり、日本や他の国でも、同じだと思います。
もし事件がおこったら、その情報をすぐにでも、またどこにいても知りたい。新聞を翌日まで待ったり、ラジオのあるところに行って番組を調べたり、そんなに待ってはいられません。その意味ではTVも同じです。読者もニュースに飢えているんです。翌日なんか待ってはいられません。
パソコンやスマートフォン、またはインターネット自体がない田舎の方では、まだまだTVやラジオの情報に頼らざるを得えません。しかし、プノンペンやシェムリアップ、コンポンチャム、バッタンバンなどの街では、インターネットも整備され、利用者も増加、さらにスマートフォンも普及していますから、オンラインニュースへの流入は確実に起こっています。これも私がWebサイトを始めた理由の一つです。
私達は、政治家、活動家、学生やビジネスマンにフォーカスしています。共通点は少なからず知識人だということです。私達は知識人やリーダーたちを読者として考えています。ですから、私達は成功している人や大きな功績を上げた人などを対象にインタビューも行っています。ここも他のメディアとの違いです。他のメディアは好んで事故などのニュースをとりあげますから。トメイトメイ・ドットコムはある程度教育を受けた人のためのスペースなんです。
カンボジアで事故のニュースが多いことが気になるかと思うのですが、理由は、教育水準の低さにあると思います。多くの人々は、文字から情報を得るということになれていません。政治や経済のことなどです。一方で、事故の映像や画像は、とてもわかりやすく彼らの感情に響きます。嬉しいとか、悲しいとかそういう感情が、視覚的に認識できるので、とてもわかり易いんです。カンボジアでは、多くの人がまだ字を読めませんし、読めたとしても意味を理解するのはより難しいことです。
文字を読むというのは、かなりエネルギーのいる行動なのです。この感覚が、日本人に理解できるかは分かりませんが、カンボジア人が文字を読む時には、多くのエネルギーを必要とします。しかし、聞いたり、見たりする分には殆どエネルギーは使いません。教育をあまり受けていないカンボジア人は、字を読むことがストレスでもあるため、あまり好んで字を読んだりしないんです。その理由はやはり教育にあると思います。
教育された人をターゲットにしたいのであれば、文字を使った媒体を使ってマーケティングすればよく、あまり教育を受けていない人をターゲットにしたいのであれば、TVやラジオが有効であるということです。
例えば、農場や建設現場で働きたいような人を集めたいのであれば、ラジオやTVを利用するほうがトメイトメイ・ドットコムを利用するよりもよいでしょうね。逆に知識人はラジオやTVはあまり利用しないと思います。聞くにしても、海外のラジオ番組やTV番組です。
私達はテキスト、映像、さらにラジオのような音声情報も扱っています。マルチメディアなニュースサイトです。一つのニュースに対して、テキストだけでなく、映像、音声もアップロードしています。時々ジョークとして社員にも話していますが、トメイトメイ・ドットコムは読む必要がないんです。トメイトメイ・ドットコムを聞くのでもいいし、見るのでもいい。さまざまな情報の集め方に対応していまし、扱うニュースの種類も多様です。速報だけでなく、人物にフォーカスしたインタビューや、さまざまな特集、分析記事、投資情報など多岐にわたります。これがトメイトメイ・ドットコムの独自性であり、カンボジアでは他に類を見ないでしょう。
カンボジア国内のメディアの数は、周辺国にも引けをとらないと思います。しかし、質であれば圧倒的に劣るでしょう。なぜなら、カンボジアのジャーナリストは、ジャーナリストとして訓練した経験が少なく、ほとんどの人間が、ジャーナリズムを学ばずに記者として働いているためです。ただ、最近は報道に対する期待や関心が、他国同様に高まっていると思います。報道の自由もしっかりと守られています。
20年近くジャーナリストとして働いていますが、報道に関する規制はありません。もちろん、政府系の人間が作った会社では、自陣営のことを悪く書くことはできないでしょう。しかし、自分たちで会社を立ち上げ、中立を望むならば自由は保たれます。いかなる制限も受けません。私達は政治を攻撃するのではなく、批判的かつ建設的に報道を行います。
現在、野党は与党を攻撃していますが、あれでは敵は敵のままです。ただ攻撃するのではなく、建設的な話をすることができれば、敵は敵でなくなります。私達は、カンボジアのニュースウェブサイトの第一人者になりたいと思っています。トメイトメイ・ドットコムを公式の場で参照されるようなものにしたいです。知識人がトメイトメイ・ドットコムを読み、それを参照して物事を考えるようなWebサイトを目指しています。(取材日/2014年7月)