2014年12月26日
まず私の経歴をお話いたしますと、この会社を起こす前、フランス語の大学講師とジャーナリストをしていました。フランス語講師を経て1998年に新聞記者になり、その後、フランス語のラジオ局Radio France Internationalの共同代表になりました。その前に働いていた新聞社も、CambodgeSoirというフランスのものです。ラジオ局では2013年まで働き、トメイトメイ・ドットコムを始めたのです。トメイトメイ・ドットコムは2012年に設立し、現在、10人の社員と6名のフリーランス記者が働いています。1日に30記事ほどを配信しています。
ラジオ局で働いていた時に、ニュースの視点は私のものではないという気持ちがありました。その視点は、フランス政府のものであると感じていたのです。また、それまで私はずっと雇われる立場だったので、これではよくないと思い、私と同じ志を持つ他のジャーナリストたちと起業しました。
私達が会社を運営する一番の目的は、自分たちでメディアの会社を持つということです。私達は利益を重要視していませんウェブメディアの会社というものは、そこまで大きな利益を生みません。なぜなら、カンボジアのマーケットが小さいからです。しかし、カンボジア人によるメディアを運営することで、私達は自分たちの視点や考え方を発信することができるのです。
私はカンボジアの一般的なジャーナリストよりも、自由な立場にあります。前職の時も、自分の興味のある話題を取り上げてきました。しかし、それはやはり”フランス的”なコンセプトという枠組みの中での話になってしまうのです。
それに対し、私達のウェブメディア、トメイトメイ・ドットコムは“ 私達”のチームによって形成されました。だからこそ、欧米的な視点ではなく、”私達”独自のコンセプトから物事を発信できるのです。要約すれば、“私達”の視点からカンボジアのことを報道する。そのために私達はこの会社を始めたのです。
“私達”のコンセプトとは、つまり、カンボジア人のコンセプトです。それをカンボジアの人々に届けます。Radio France Internationalは、フランス人のコンセプトです。Voice of Americaというラジオがありますが、これはVoice of American People、つまりアメリカ人の声という意味なのです。純粋なカンボジア人のコンセプトではありません。プノンペンポストやカンボジアデイリーも経営者や編集長、チーフなどが外国人だということです。そのような組織では、カンボジア人のアイディア、コンセプトを元に報道を行うということは困難です。外国人がカンボジア人と同じ視点で、事象を捉え報道するということができるとは思えません。
カンボジア人のコンセプトから報道を行っているメディアはいくつか存在します。私達のようなオンラインメディアもいくつか見受けられます。しかし、その中のどれだけが私達のような自由な立場、独立の立場で情報を発信しているかは分かりません。
トメイトメイ・ドットコムは独立的で中立的であると自信を持っていうことが出来ます。代表である私だけでなく、弊社のジャーナリストは報道に対してとても自由な立場にあります。彼らは自分たちのコンセプトを元に動いていますし、個人の裁量でどんな報道も取り扱うことができます。会社や編集長からの制限やプレッシャーは全くありません。もちろんプロですから、自由だからといって、すべてが許されるわけではありません。自由な考え方を持って、プロフェッショナルの仕事をする。それが私達のスタイルです。
また、間違った情報やデマなどは取り扱いません。報道に関する裏付け、ダブルチェックは厳しく行います。ニュースは正確なものでなくてはなりません。また、政治的な偏りも問題外です。しかし政府に対して、肯定的なもの、否定的なものなど、何らかのポジショニングをしているメディアがほとんどで、中立的なメディアというものは数えるほどしかありません。NGO寄りの報道や、政府寄りの報道ではなく、徹底的に中立な立場で報道を行います。
私がいくら中立的な立場を保っていると言っても、それを信じてもらえないことは少なくありません。外から見ただけでは、どちらの陣営とつながっている、いないというのは判別が難しいものですから。私は、ジャーナリストをやっていることもあり、どちら側の陣営にも多くの知合いがいます。だから、私個人を見た場合には、どちら側に寄っているかは、とても判断が難しくなります。本当のところを知るのは、かなり難しいことだと思います。メディアが真に中立かどうかを見極めるためには、そのニュースを見ればいいんです。個人ではなく、実際に公開されたニュースを見てください。個人というものは徹底的に中立ではありえません。だからこそ、Webにあらわれるニュースを見ていただくことが、そのメディアのコンセプトを理解する良い方法になるのです。(後編へ続く)(取材日/2014年7月)