2015年1月20日
フリーペーパーは2か月に1回発行しています。現在、中華系の他誌は、それほどプロフェッショナルではなく、情報もオリジナルではありません。それと違い弊社媒体では、内容は全てオリジナルの生活情報という特徴を出しています。この雑誌でしか読めない記事を出すという考え方でないと、競争には勝てないと思っています。特にカンボジアでは、提携関係でもない現地の新聞やソーシャルメディアからの情報を勝手に引っ張ってきて雑誌に掲載しているので、オリジナルではありません。新聞社も脅威に思っていないし、引用先を出す分には宣伝にもなっているということもあり、そもそも著作権に関して深く考えていない点があるようです。
1回の発行は7000部ですが、在カンボジアの中国人はとても多いので少ないくらいです。内訳はプノンペン6000部、シェムリアップ700部、シハヌークビル300部です。バスで送って、パートナーの方に渡しています。プノンペンのマーケットが大きいので、内容や広告についてもプノンペンが中心です。シェムリアップに住む中国人は少ないのですが、旅行者向けに配布し、シハヌークビルは、工業団地や中華系スーパーマーケットに置いています。フリーペーパーは99%カンボジアに住む中国人向けになります。現在、中国に住んでいる中国人で、カンボジアに投資や旅行で興味がある方に向けてWEBサイトも作っていますが、50%以上は中国、香港、シンガポール等の中華圏からのアクセスです。
もともと私は日本にいたときに一番感動したことは、駅前でティッシュを無料で配布していたことです。中国ではあり得ないことです。フリーのビジネスモデルは日本では成熟していて、社会人の時はR25を良く読んでいました。ホットペッパーとか美少女図鑑といったフリーペーパーを研究するようになり、いつか中国でやれたらいいなと思っていました。中国本土にもフリーペーパーはありますが、日本のように成熟はしていません。クオリティーもそこまで重視していないような気がします。
たまたま縁あってカンボジアに来たのですが、カンボジアには欧米系や日系のしっかりしたフリーペーパーがあるのに、中華系は一段落落ちている状況だったので、中華系向けのメディアを立ち上げようと決めました。
中国大使館からの資料ですと、マルチビザを持っている中国国籍の方は20万人います。これは、台湾や香港などを入れない数字です。確実なデータがある訳ではありませんが、カンボジア国籍の中国人、つまり華僑も80万人いると言われているので、足すと100万人になるわけです。カンボジアの直接投資額は中国が断トツ1位です。2013年までのトータルでは93億ドル。発電所など、2014年も大きなプロジェクトが進行中ですし、今後もカンボジアに投資していく主要国は中国でしょう。
実際に住んでみると、中国語の看板が多いことに気がつきます。イオンのテナントも、ターゲットとしているのは、カンボジアの富裕層や中華系になるそうです。
カンボジアの中華系向けの紙媒体は、新聞(5紙)と雑誌です。
日系企業がカンボジアの中華系マーケットに向けて広告・宣伝する場合には、新聞か雑誌が有効だと思います。現在、新聞は5紙もありますし、雑誌は本誌を入れて2誌です。中国人が情報を得るならば、新聞や雑誌、ソーシャルメディアになります。中華系でも口コミは最強のマーケティングですが、そもそも認知してもらわなければ始まりません。まず認識させること。知ってもらえば営業もしやすいです。フェイスブックは殆ど使っていません。ここで使っていても中国に帰れば使えませんし、友達も使っていなければ意味ありません。
新聞はだいたい中華系の財閥がバックについていますが、それらの会社の宣伝が主たる目的のような気がします。また、カンボジアに住む中国人はテレビをあまり見ません。新聞の良いところは毎日発刊されるので、よりタイムリーな広告が出せるという点ですが、一方で広告が多いので、一面広告などでない限り、目立たちません。広告はレイアウトやデザインをあまり気にしていない印象を受けます。一方、雑誌は更新サイクルが長いので、タイムリーな広告を出せませんが、より詳しくて深い情報を掲載できますし、広告もデザインをきちんと考えて掲載出せる点が良いと思います。
私たちの媒体の広告主は、飲食店や日常的に使う交通、インターネット、銀行、洋服店や車屋など、ライフスタイルにまつわる会社になります。中華系にアピールした方が良い業種は一番にレストランをあげたいです。カンボジアにはまだ日本人が少ないですし、価格的にはカンボジア人にアピールしようとしても中間層以上になります。しかし、中華系の方であれば、みなさんそれなりの収入がある方ばかりになります。
在住している中国人の多くは、中国でカンボジア語を専攻し、カンボジアでも勉強を続けたあとに、カンボジアで就職します。中国に帰国しても就職先がないためです。だいたい初任給は700ドルくらいで、住居や食事は会社が提供した上での金額です。住居を用意するのは中華系企業の習慣になります。現地採用の月給は平均1000ドルくらい。GMクラスで1200ドル、駐在員は相当高いと思います。中華系の方はそれなりに給料が高いです。
嬉しい話ですが、反響が良かったんです。今まで無かった媒体だったので、同じ中国人として誇りに思うという理由で、先日は中華系ラジオに呼んでいただきました。また一般の中国人の方から感謝のメールをいただきました。
中国製って品質的にあまりイメージが良くないですが、私は中国人でも良いものを作れますよと言いたいんです。やればできるんです。
私たちの頑張っている姿を見て、広告を出してくださる企業からは、「ここまでやれると思っていなかった」という感想を数社から頂きました。また、私たちの取り組みをみて、私も起業してみたいので相談してくれないか、という問い合わせが来るようになりました。頑張って続けていこうと思っています。
日本製商品や日系企業に対する印象は、カンボジアにいる中華系に限らず世界中の人々が品質が高いと思っているし、尊敬しています。ただし、政治的なこともあるので、カンボジア国内でも反日の中国人もいますが、ごく僅かです。普通に日本製の電気製品を使い、和食レストランに行きます。サービス系の日系企業は、中華系にもっとアピールすべきでしょう。
一方で、中華系企業は、日本人マーケットは殆ど気にしていません。マーケットが小さいからです。中華系企業が日系のフリーペーパーに広告を出すかと言えば、出さないでしょう。日本人がもっと多ければ喜んで広告を出すでしょうが、費用対効果を考えると割が悪いのです。
欧米人はシンプルでクールな感じ。一目で見ても何の広告かわからなくて、考えさせる広告ですよね。中華系は日本の広告より文章が多く、ひたすら説明したがる(笑)。中華系新聞を見たら分かりますが、漢字ばかりです。広告を出す側が、広告を見る側のことを考えていないのが理由のようです。見る側からすれば、まずは絵から入って、次に大きな文字を読む。一方的に漢字ばっかり並んでいたら嫌だということが分っていない人が広告を作ってしまうのでしょう。なので、私たちのフリーペーパーは、広告主に説明をして、日系の広告とあまり変わらないようなデザインになっています。欧米系のような抽象的な広告は分かりにくいためです。
色使いは、まずは赤。赤は目立つし、中国ではラッキーな色です。色んなものに赤は使われています。中華系レストランに行けば如実ですね。看板から従業員の制服まで。中国人には、シンプルな色が良いと思います。
カンボジアでは、日本人をターゲットにするより中国人をターゲットにした方が良いと思います。高いクオリティーを買ってくれると思いますし、アピールしない手はないです。何をやるにしても無視できないマーケットだと思います。(取材日/2014年9月)