2018年3月2日
――カンボジアにおける会計制度や税制度の現状について、教えてください。また、その中で注目している新たな動きがあれば、教えてください。
マック・ブラタナ(以下、ブラタナ) 直近の街路照明税について改正がありました。街路照明税はカンボジア特有の税金です。酒、ビール及びタバコを販売する生産者・輸入者・ディストリビューターもしくは卸売業者は、VATを除くこれらの商品の売上総額に対して3%の街路照明税を毎月納める必要があります。
今回、2017年10月9日に公布された新省令では課税標準が変更されました。生産者及び輸入者が、卸売業者へ上記3種類の商品を販売する場合、従来通りVATを除く売上総額が課税標準となりますが、ディストリビューターもしくは卸売業者から消費者へ販売する場合、VATを除く売上総額の20%が課税対象となりました。
従って、生産者と輸入者の場合は特に変更はありませんが、ディストリビューターもしくは卸売業者は従来よりも街路照明税の負担が軽くなったと言えます。
――会計・税務に関して、カンボジアで活動する企業が直面する問題は何ですか。
ドゥク・ダリン(ダリン) 最近、支店形態での設立が増えてきました。外資系企業がカンボジアで支店を設立した場合法人格は本店と同様ですが、カンボジアにおいて独立した財務諸表を作成し、支店で費用が発生する場合、カンボジア支店の銀行口座から振込もしくは現金を引出して支払う必要があります。本社が、カンボジア支店に代わってサプライヤーへ支払を行った場合、請求書の宛名がカンボジア支店名となっていても、支払を行った記録がないとして税務調査時に損金不算入と指摘される可能性があるため、留意頂ければと思います。
――今後進出してくる日本企業が注意すべき、認識すべき点を教えてください。
ブラタナ 現在、税務登録申請のために、事業所として登録する不動産の不動産税納付証憑書類を提出するように要求されます。ただし、実務上は不動産オーナーが納税義務を履行していないケースが多々見られ問題になっておりました。なお、当該証憑書類が入手できない場合、企業は物件所有者に代わり、不動産税が未納付であるという確認書を作成の上、提出すれば、登録手続を進めることが可能です。ただし、不動産税の未納に対する調査は年々厳しくなっており、確認書を税務局が受領した場合は、不動産オーナーへ査察に入る可能性が高いです。これが原因となり、賃貸契約の一方的解除等の問題も発生しているため、事前に不動産税を適切に納付しているかどうかを適切に確認する必要があります。
――カンボジアの会計制度や税制度に合わせた、貴社ならではのサービスがあれば教えてください。
ダリン 会計・税務支援は、証憑に基づき財務諸表を作成し、税法に基づき税務申告書を作成するサービスとなるため、差別化を図ることが難しいサービスであると言えます。弊社では法令を常にアップデートし、ミスを低減するため、常にダブルチェックを行うことを義務付けています。また重要な点に関してはトリプルチェックを社内で施しているため、当たり前のことを当たり前にすることが弊社の強みになっていると思います。
――貴社の強みを教えて下さい。
ブラタナ 弊社の強みは主に二つあり、一つは設立以来7年で培われた豊富なノウハウがあること、もう一つは経験豊富なカンボジア人マネージャーが事務所を管理していることです。設立以来、様々な企業の進出からその後の会計税務までを支援してきました。そのため、単に依頼された業務を支援するのみではなく、起こりやすい問題やリスクを事前に先回りしてお伝えすることが可能です。さらに会計税務の経験が豊富なマネージャー、設立や労務に関して日本語で説明を行うことが出来るマネージャーが在籍しており、カンボジア人自身が主体となって事務所をマネジメントしております。そのため、直接確認を行った法令情報、過去の経験に基づき、適切なアドバイスを提供させて頂くことが可能です。(取材日/2017年10月)