2015年12月30日
――DAPはオンラインメディアに注力されておられますが、実はラジオ局もお持ちですよね。今日はカンボジアのマーケティングを行う上で、メディアの一つであるラジオについてお伺いしたいと思います。まず、カンボジアのラジオ業界について教えていただけますか
ソイ・ソピーア(以下、ソイ) はい。1993年から政府が報道することの自由を認め、1995年にはその具体的なルールが発表されまして、これによりラジオはもちろんのこと新聞や雑誌などメディア業界は大いに成長しました。特にラジオ局を開設したい人が増えて、ラジオ周波数も足りなくなってしまいました。DAPの場合、ラジオ局は2010年にスタートしましたが、その時点では既に空いている周波数が無く、視聴者がチューニングし難い周波数を割り当てされてしまいました。例えばFM90.0からFM91.0の間に、FM90.25、90.50、90.75が設けられたのです。結果として、全国で200以上ものラジオ局ができたわけですが、広告主は分散化し、ラジオ局は収益を上げにくいビジネスとなってしまいました。ラジオ業界は大きくても、オーナー達は運営が大変というわけです。
――そんなに多くのラジオ局があるなんて驚きですが、ラジオはどんな人がよく聞いているのでしょうか
ソイ ラジオのターゲットは若い人たちです。若い人たちでも暇な人が多いのでラジオをよく聞いています。ラジオ業界全体としても7,8割はエンターテイメント性の高い番組を放送していると思います。例えば聴取者に電話ごしにカラオケで歌を歌ってもらったり、クイズ番組など聴取者にも参加して楽しめるような番組ですね。このような状態ですから、広告主も若者たちをターゲットにした広告が多くなります。かつては歴史を伝える等の文化的なコンセプトで番組を作成するラジオ局が複数ありましたが、若者たちは興味を示さず不人気となり、そのお陰で広告も集まりませんでした。彼らはやむを得ずコンセプトを変更していきました。教育的なコンセプトで番組を作成するラジオ局は現在もありますが、運営主体がNGO団体であるなど初めから収益を考えていませんね。
――民営のメディアは大衆に迎合しなければ存続できないということですね。ところで、DAPのラジオ番組の場合はどんなプログラムがありますか
ソイ 私たちDAPは24時間放送しているラジオ局です。かつてはニュースがコンセプトでしたが、現在は仏教的な番組に変更しています。放送枠の95%近くを1年間限定という条件で、ある有名な寺院が買い占めたからです。実は私たちも周波数も変えて生まれ変わるための準備が必要な時期でしたので丁度良かったと思っています。残った枠では引き続き時事ニュース等を放送しています。来年は別の周波数で新しいラジオ局として生まれ変わり、楽しい番組やニュースを放送する予定です。
――どんな会社がラジオに広告を出したら良いとお考えですか
ソイ 聴取者が若い人たちですから、現在、ラジオに広告を出している企業は、美容室や小売業、自動車学校などですね。しかし、私はラジオであればどんな会社でも良いと思っています。それだけラジオの場合、聴取者の層が幅広く、地域的にも国内全土に広がっていますから。テレビやインターネットを見ている人は都市部が中心ですが、ラジオは8ドルの携帯からでも聞くことができます。農作業をしている人たちもかけ流しして聞いているくらいです。そういう意味では他のメディアと違って圧倒的なものがあります。ラジオ局の間でも競争が激しいので、どんな広告主でも歓迎されるでしょう。
――なるほど。逆に言えば、地方の農村の方をターゲットにしたビジネスをされている方にとってはラジオが唯一のメディアと言っても過言ではないということなのでしょうね。
ソイ はい。広告主の方々にアドバイスするならば、ラジオに広告を出すことは非常に大事だ、ということですね。ご承知のとおり、カンボジアは約8割は農民なのですから。そして、そのほとんどはテレビやインターネットではなくラジオを聞いているのです。にもかかわらず、他のメディアよりも広告費が安い。費用対効果が大きいと言えるのです。(取材日/2015年10月)