2014年7月19日
日本で建築デザイン事務所を12年間、カンボジアには2013年秋に進出しました。業務内容は、建築インテリア、ランドスケープ(公園などの開発)のデザインやプランニング、日本では地域活性化のためのデザインをパッケージで提供しています。カンボジアでも、単に建築デザインを行うのではなく、建築から周りのことを結びつけて地域全体が活性化するようなプランニングを行っています。
日本人の好みとカンボジア人の好みは違います。日系のローカル向け飲食店で、内装が結構ラフに仕上げている。そのラフな仕上げというは、日本人からすればカフェっぽい感じでカジュアルと捉えますが、カンボジア人は汚くて未完成だと捉えます。ある程度進んでいる国の人と、そうでない国の人の感覚の違いは大きいです。一度完成して綺麗なところを経験した後にカジュアルな方に感覚が向くのですが、カンボジア人には崩しの感覚がまだわからないのです。
そういったことを理解しているか否かでは、大きな違いがあります。店作りの場合はターゲット(カンボジア人、外国人など)を理解し、雰囲気を考えてデザインしなければなりません。
日本で設計した図面をローカルの工務店が請負うことがありますが、図面が日本のやり方で書かれているとローカルの工務店に見積りをお願いすれば、材料が無いから輸入したり、工法が違うなどで逆に割高になってしまいます。日本で図面を書いてきたら、あとは現地で建てるだけ、という訳にはいきません。設計の段階から現地を理解していないとできないのです。
カンボジアにはカンボジアスタイルがあり、日本と材料も違いますし、考え方や風土、進め方なども違います。例えば、日本だったら家を建てるなら南向きとなりますが、カンボジアだと年中暑いからそこにはこだわらないといった具合です。日本にいると、あまり事情がわからないですよね。
どの程度の価格だとどうなるかとか、その辺などもカンボジアのことを理解したプロと組むべきですよね。ローカルや外資、日系のゼネコンなど色々な会社があるので、実績を見るなどして見極めも必要です。コストパフォーマンスやある程度のクオリティを求める場合に韓国のゼネコンが選ばれているケースが多くなります。それ以上のクオリティや安心を求めるならば日系となりますが、コストは高くなります。コストを下げるのなら当然ローカル系です。
カンボジアの業者にデザインを依頼すると、なかには日本と同等のクオリティでデザインをする建築家もいますが、デザイン費が安くそれだけでやってはいけないため、殆どの場合はデザインと工事を一緒に受けることで仕事にしています。本当に良いデザイナーは結構います。殆どは日本やヨーロッパに留学されていた方で、海外とカンボジアの双方の事情が分かるので、そういう方たちにデザインしてもらうのも一つかもしれません。
カンボジアはフランス領だったところですし、古い建物には良いものもあります。カンボジア人はデザインセンスが良いですから、バカにしていると逆に恥かきますよ。カンボジア人は日本の品質をとても尊敬しているんですが、それに恥じないものを見せないと、すぐに恥ずかしい思いをしますよ、というのは強く言いたいですね。
建築デザインで言えば、デザインの組み立て方を教育されておらず、知識や情報もあまり持っていないので、何となくデザインするのがデザインだと思ってるんです。でも、デザインには理由があり、組み立て方や考え方があることを教えてあげると、吸収するのはとても早いです。日本のデザイナーは直ぐに抜かれてしまうのではないかと思うくらい、デザインの想像力がありますね。デッサンなんかさせても、習ったわけではないのにとても上手なのは、生まれ持ってるものがあるのかもしれません。
今のカンボジアの感覚で空間デザインをすると少し危険だと思います。クオリティやデザイン、間取りなどが1、2年という早いスピードで変わってしまうかもしれません。少し先を見据える設計を心がけています。(取材日/2014年1月)