2014年12月26日
――カンボジア労働法の概要についてですが、タイやベトナムなど比べてみて特徴はなんでしょうか。
ソー・キナール(以下、ソー) カンボジア労働法は他の国と比べて大きく異ならないとわたしは考えています。労働法以外についても同様です。というのも、国際法などを十分に研究した上で作られていますから。
カンボジア労働法は1997年に国会に承認されましたが、かつてはカンボジアでは最低賃金について記載がありませんでした。2014年現在では政府が縫製工場の最低賃金について月額$100、試用期間は$95と設定しており、雇用主は従業員に1日8時間、週に48時間労働させることが許可され、それ以上は残業代を支払うこととされています。丸1日 の休みが1週間に1度、そして有給休暇については年間で18日、他の公休日は政府より年間27日と公表されています。そして一月平均22日の稼働日として定められている。
また、産休については3ヶ月(90日)で、給料の50%を支給することになっているが、満額を支給する会社もあります。政府としては産休についての保障はないですが、社会保障機関であるNSSFが、勤務時間内の事故について保障をしています。これは、雇用者は政府に対して毎月$2支払わなければなりませんが、勤務時間内に事故に遭った場合は政府から全ての病院費用を負担してもらえます。また政府の提携病院であればキャッシュレスで対応してもらえます。
8人以上従業員がいる場合、業種関わらず登録が必要ですが、従業員数が8人に満たない場合でも任意での登録が可能です。NSSFの登録は特に縫製業に対してという印象が強いのですが、全ての業種が対象です。
――外国人雇用者の割合、労働許可証について教えてください。
ソー 会社を立ち上げたら、労働省への登録を済ませて、外国人とカンボジア人の雇用割合について。
法律上では、外国人はカンボジア人に対して10%の割合、つまり外国人1人の雇用に対して、10人のカンボジア人を雇用しなければならないとされていますが、実際は外国人割合が高くても、諸費用を支払えば申請できます。
立ち上げたばかりの会社の多くは、社長、秘書、経理含めて日本人が2,3人ということがあると思いますが、法律では外国人の割合が10%と記述があっても、さほど厳格ではないので、申請すれば労働省も認めるのです。というのもカンボジアは、エキスパートが少なく、まだまだ外国からの投資が多く必要であるという事情が考慮されているからです。
この手続きには、多少前後しますが1ヶ月から1.5ヶ月くらいの期間を要します。外国人従業員は、労働許可証が必要で、外国人もまた、先に説明したNSSFに登録する必要があります。さらに全ての従業員、退職者や新入社員の情報も事細かに労働省へ申告する必要があります。このような申告は、他国では聞かないかもしれませんが、法律上では義務となっていますので、必要性をアドバイスしますが、実際は2、3ヶ月ごとや6ヶ月ごとにやっている会社が多いと思います。この手続きの実行性が乏しい事を政府も理解しているようなので許容されているのでしょう。他にもカンボジアでは給与満額の5%の退職金を払う必要があるとされていますが、早期退職者には15日分の給与を払うこととされています。
――多くのカンボジアの会社は雇用契約書がない場合が多いですよね。
ソー 法律では契約書が有効とされていますが、カンボジアでは多くが口頭契約であり、書面での契約書についてはあまり見られません。例をあげると、家族経営の会社などは契約書はなく、ただ双方で合意した金額を支払うのみです。
他にも大事なこととして、労働組合を作る可能性がありますが、それを規則で阻止しようとするのはよくありません。デモやストライキが最近は多くおきていますが、これはカンボジアの経営者にとっての関心のひとつですね。労働組合は、従業員8人以上でつくることが可能です。(後編へ続く)(取材日/2014年7月)