フィリピン移民局(BI)は、カンボジアで代理母としてリクルートされたフィリピン人女性20人のうち7人が無事に帰国したと発表した。彼女たちは観光ビザで渡航し、オンラインでのリクルートを通じて代理母になることを約束されていたが、実際には人身売買とみられる違法な目的に利用されていた。被害者の年齢は20~30歳で、いずれもカンボジアで身元不明の依頼者のために代理出産を行うよう勧誘されていたとされる。
フィリピンのジョエル・アンソニー・ビアド(Joel Anthony Viado)移民局長は、最近の調査でこうした手口が明らかになったとし、特にインターネットを利用して女性たちがリクルートされていたことに警戒を促した。また、ビアド局長は「代理母としての勧誘には重大な法的リスクが伴う」と述べ、フィリピン人女性に対し、こうした誘いには注意するよう呼びかけた。
カンボジア内務省国務長官兼国家人身売買防止委員会(NCCT)の常任副委員長であるチョウ・ブン・エン(Chou Bun Eng)氏は、残る13人の女性が違法な代理出産に関与したとして、「カンボジアの人身売買・性搾取防止法に基づき起訴される可能性がある」と述べた。帰国した7人の女性たちは代理母としての手続きを開始していなかったため起訴されなかったが、13人の女性たちは「出産後に子供を売る計画があった」として違法行為に問われている。
この事件は、フィリピン大使館の代表や通訳が同席した取り調べのもとで進められており、女性たちがどのようにしてリクルートされ、カンボジアへ送られたのかも明らかになりつつある。特に、採用者の身元や国籍が不明で、仮名を使ってリクルートが行われたことが判明している。
カンボジアでは代理母ビジネスが禁止されており、今回のケースは規制が強化された他国での代理母ビジネスがカンボジアで違法に展開されている実態を浮き彫りにした。チョウ副委員長は「カンボジア国内の住民がこうした代理母ビジネスに関与している証拠は発見されていない」と述べ、違法行為の抑止に向けた対策を引き続き強化する考えを示している。
カンボジアでは、商業的代理出産が2016年に禁止されて以来、違法な代理母ビジネスに対する摘発が続いており、直近では、今年9月、カンダール州のアパートで、フィリピン人20人、ベトナム人4人の女性24人(うち13人は妊娠中)が逮捕され、違法な代理出産に関与した疑いで起訴されたばかりだ。
人身売買目的で出産された乳児は、通常は買い手に引き渡され、違法な養子縁組や児童労働、性産業といった搾取の対象になるほか、乳児の臓器は特に小児患者への移植において高い需要があるため、臓器売買の可能性も否定できない。
カンボジアは、その地理的位置や規制の整備段階の影響もあり、国際的犯罪組織の拠点として悪用されるケースが指摘されている。特に、近年では人身売買、詐欺、違法な代理母ビジネス、オンライン詐欺などの犯罪活動が確認されており、これらの活動が国内外での悪影響をもたらしている。