カンボジア政府は、米国が発表した最大49%の報復関税措置に対し、米国との交渉に前向きな姿勢を明確にし、自国の対米関税の大幅引き下げを正式提案した。これは、米国通商代表部(USTR)のジェイミソン・グリア大使宛に、チョム・ニモル
商業大臣が署名した2025年4月4日付の公文書によって明らかになった。
書簡では、「カンボジアは米国との75年にわたる外交関係を重視し、互恵的で建設的な通商対話を望んでいる」と強調した上で、米国製品19品目にかかる自国関税の最大35%から平均5%への削減を申し出た。さらに、交渉の枠組みづくりや今後の協議継続にも合意を促している。
この対応により、単なる声明にとどまらず、譲歩内容を明文化した外交文書の送付という実行段階に進んだことが確認された。米国側の公式反応は現時点で報告されていないが、カンボジアの柔軟姿勢はASEAN諸国の中でも比較的早い段階で明示されたといえる。
米国の関税措置は、カンボジアの主要輸出産業――縫製、履物、自転車、簡易組立品など――に大きな影響を与えるとされており、これらの産業は80万人超を直接雇用し、対米輸出依存度が極めて高い。関税負担が乗じれば、米国バイヤーがバングラデシュやベトナムへ乗り換える動機となり、受注減少・雇用縮小・外貨収入の低下が現実味を帯びる。
政府は他方で、米国依存からの脱却に向け、FTA活用による市場多角化や、より付加価値の高い生産体制の構築も中長期戦略として掲げている。