(NBC)が8月初旬に発表した「2025年上半期報告および下半期施策方針」によれば、同国の経済は2025年上半期に前年比5.9%の成長を遂げた。製造業の輸出拡大、民間消費の回復、インフラ投資の拡大が主な要因である。
製造業、観光、農業の3分野が好調であり、とりわけ米国への輸出は25%増加した。為替レートも安定しており、リエルは前年同期比で1.6%上昇、平均為替レートは1ドル=4,011リエルであった。外貨準備高は248億ドルに達し、輸入の7.5か月分に相当する水準を維持している。
銀行・金融部門においては、資産が7.3%増加し、貸出残高は2.9%増の618億ドルに達したが、与信成長は依然として低水準であり、建設・不動産分野の回復の遅れが影響している。また、不良債権比率(NPL)は2024年末の7.4%から8.3%へと上昇した。
それでも、銀行は依然として十分な資本・流動性を保っており、預金取り扱い機関の自己資本比率は22.8%、非預金機関では31.6%に達し、いずれも法定最低基準(15%)を大きく上回っている。流動性比率も185%と健全な水準を維持している。
インフレ率は上半期に3.5%となり、主に食品価格とコアインフレの上昇が寄与した。燃料関連品目はむしろ下落傾向にあった。
なお、上半期の高成長については、米国関税引き上げの不確実性に伴う「駆け込み輸出」が影響した一時的要因である可能性が高い。複数の米国バイヤーが上半期中に発注を前倒しした結果、輸出が急増したと報告されており、経済の実質的な底力というより、外的要因による数字の押し上げが含まれているとの見方がある。
経済学者ダリン・ドゥク氏は、「カンボジアは依然として安定成長路線にあるが、外的ショックに対する備えとして、構造改革とグリーン・デジタル成長の推進が不可欠である」と述べた。特に、米国の19%関税優遇措置を活用した繊維輸出の競争優位、輸出多様化、インフラ投資、ビジネス環境改革の重要性を強調した。
カンボジア米国商工会議所(AmCham)副会頭であり、カンボジア・インベストメント・マネジメントのCEOであるアンソニー・ガリアーノ氏も「第1四半期の5.9%成長は世界経済の逆風下では称賛に値する」と評価したものの、「関税の不確実性により、米国バイヤーが前倒しで発注した結果であり、下半期には反動で輸出が鈍化する可能性がある」と警鐘を鳴らした。
NBCもまた、「2025年下半期には保護主義の高まりや地政学的緊張の影響により、輸出・観光・外国直接投資に対するリスクが増大する可能性がある」とし、経済成長の減速が見込まれると警戒感を示している。
こうした背景を受けて、NBCは引き続き金融の安定を確保するため、慎重かつ柔軟な金融政策運営を継続するとともに、銀行監督強化、信用供与の促進、債務再編支援などを通じて景気下支えを図るとしている。
加えて、決済システムの近代化、預金保護制度の整備、グリーンファイナンス政策(グリーンファイナンスロードマップ)の策定などを進め、持続的かつ包括的な経済発展の基盤構築にも注力している。